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【この人に聞きました】株式会社淡路屋 代表取締役副社長 柳本雄基さん

場所
> 神戸市
【この人に聞きました】株式会社淡路屋 代表取締役副社長 柳本雄基さん

株式会社淡路屋 代表取締役副社長 柳本雄基さん

 

駅弁で“楽しさ”を追求する自由な発想

イノベーション(技術革新)は、ゼロから生まれるのではない。それまで縁のなかった異質なモノやコトが出合った時、初めて新しい価値が誕生するという。たこ壺風の陶器に大ぶりの明石だこが入った駅弁、ひっぱりだこ飯で知られる淡路屋(神戸市)の代表取締役副社長、柳本雄基さん(42)の話を聞きながら思い浮かべたのは、経済学者シュンペーターが唱えた理論だった。

「自分が楽しくなければ、お客さんに伝わらない」と言う。例えば、ゴジラのフィギュアを眺めていた時、大だこと戦うシーンが見えてきた。これだ、面白い。一瞬のひらめきから生まれたゴジラ対ひっぱりだこ飯は、1億円以上を売り上げるヒット商品になった。

キティちゃんやさかなクンから兵庫県警、海上保安庁まで、柳本さんは奇想天外なコラボ商品を次々に送り出してきた。瀬戸内の海の幸、六甲の山の幸を楽しんでもらいたい。創業以来の志には揺らぎもないが、25年前の明石海峡大橋開通を記念して発売されたひっぱりだこ飯が看板商品に育ったのは、時代の変化を受け入れてきたからだ。コロナ禍では疫病を封じる飛沫拡散防止シールド付きの幕の内弁当が話題になり、貨物コンテナをかたどったすき焼き弁当も容器の生産が追い付かないほどだった。柔軟で自由な発想、その秘密はどこにあるのだろう。

ヒットした「ひっぱりだこ飯」のコラボ商品
飛沫拡散防止シールド付きの容器も開発

子どもの頃、パソコンを何台も分解したのは、「仕組みがどうしても知りかったから」。ワクワク、ドキドキ、少年の探求心は大人になっても変わらない。2004年に入社し、33歳で取締役。一昨年、40歳で副社長に昇格したが、コロナ禍では、1日1万食の駅弁が300食まで激減し、経営の難しさを思い知った。

淡路屋は1903(明治36)年創業の100年企業。戦争、震災、パンデミックなどの試練を乗り越えてきたのは、イノベーションを追い求めチャレンジが継承されてきたからだろう。変化を恐れない。今、その先頭に柳本さんが立っている。

文・三沢明彦

伝統と革新を併せ持つ100年企業

企業の平均寿命は30年、起業してもその6割がわずか1年で消えていくが、100年を超える長寿企業は国内に3万社以上もあるという。世界の4割を占め、国際ランキングも堂々の1位だ。こうした企業は過去の成功体験やしがらみに縛られ、チャレンジ精神とは無縁と思う人がいるかもしれないが、違う。100年企業の強みは、伝統と革新を併せ持つこと。地域や顧客重視という創業理念を見失わず、時代の変化に合わせて自ら変わる柔軟さを持ち続けているから、厳しい競争を勝ち抜いてきたと理解すべきだろう。自由な発想は、淡路屋のDNAなのである。



Writer

三沢明彦 さん

元「旅行読売」編集長

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