【愛しの冬列車】満腹旅!またまたやりました! 駅そば はしご旅(1)
横川駅にある荻野屋の天ぷらそば460円。かき揚げは季節の野菜を使い、自社工場で当日の朝に揚げる
上州・信州・甲州の駅そば5軒をはしご旅
鉄道旅の楽しみの一つといえば、〝駅そば〟だ。とくに冬場は湯気の立つできたてをかっこむと腹の底からじんわり温まり、列車の待ち時間にさえ感謝したくなる。近年、駅そばは減少傾向にあるが、頑張っている店も多い。そこで、群馬、長野、山梨を股に掛けた壮大!?な駅そばはしご旅に出てみた。
スタートは信越線の横川駅。駅弁・峠の釜めしで有名な荻野屋が1番線ホームに出店している。この日の厨房担当はベテランの前島久子さん。注文すると湯釜の「てぼ」(取手付きザル)に生そばを入れ、きっちり2分10秒茹(ゆ)でてから冷水で引き締め、湯釜で温め直して丼に盛った。「茹で置きしないで1杯ずつ生そばを茹でる。このひと手間がおいしさの秘密」と前島さんは笑う。食べて納得。そばのコシも舌触りもよく何杯でも食べられそうだ。
そばは自家製麺。そば粉は甘皮ごと製粉した“挽(ひ)きぐるみ”を使うため、香りが立ち舌触りもよい。だしはカツオ節と利尻昆布を使い、風味豊かに仕上げてある。平日限定でそば・うどんの替え玉130円がある。
小諸駅に駅そば店が復活!
かつての難所・碓氷(うすい)峠を路線バスで越えて軽井沢駅に到着。しなの鉄道に乗り、小諸駅に向かった。2021年10月に駅そばが復活したと聞いたからだ。小諸駅そば 清野商店の店主・清野隆さんは元小諸駅長という経歴の持ち主。
「2013年にホームの駅そば店が閉店してから、駅のにぎわいが薄れた気がしましたね。定年後、しなの鉄道と地域に少しでも貢献したくて開店を決意しました」
駅そばは短時間で提供するものという考えから、注文後1分30秒程度の完成を目指すという。そばは乱切りの冷凍麺で、手打ちに似た食感がある。鶏卵は浅間小町を使用。11月から常連客の要望で醤油(しょうゆ)ラーメン380円も加わった。
清野さんの話を聞きながらそばを食べていると、地元のおじさんが来店。月見そばに卵のトッピングを注文した。「〝両目〟ですか」と話しかけると「豪華でしょ」と笑って食べ始めた。駅のにぎわいは戻りつつある。初日はここまで。戸倉(とぐら)駅まで進み、戸倉上山田温泉で宿をとった。
文・写真/内田 晃
荻野屋
10時〜16時/無休/信越線横川駅改札内(1番線ホーム)と改札外
TEL:027-395-2311(荻野屋)
小諸駅そば 清野商店
7時〜15時/不定休(水曜休が多い)/しなの鉄道小諸駅改札外(待合室)
TEL:なし
※掲載時のデータです。最新のデータは各店にお問い合わせください。
(出典:「旅行読売」2023年1月号)
(WEB掲載:2023年2月5日)