花と花手水が彩る初秋の寺へ
楊谷寺の花手水。花はその時々で変わるのでSNSでチェックを
まだ紅葉には少し早いこの季節は、花の旅を楽しみたい。晩夏から秋にかけて見ごろとなるのが芙蓉だ。
花の名所として知られる上京区の妙蓮寺では、白やピンクの芙蓉が花を咲かせ、例年10月上旬頃まで境内を華やかに彩る。さらに10月の半ば頃からチラホラと咲き始めるのが御会式桜(おえしきざくら)だ。翌年4月に満開になる。それを追うように早咲きの椿、妙蓮寺椿が翌年3月まで咲き誇る。ちなみに本堂は非公開だが、書院や庭は公開しており、近年に造園当時の姿に復元した十六羅漢石庭を眺めることができる。また宝物殿では、長谷川等伯とその一門の筆による見事な襖絵が観賞できる。
コロナ禍で手水舎の柄杓(ひしゃく)が下げられた頃、空いた水盤や鉢に花が添えられ、各地にまたたく間に広まった花手水。実は長岡京市の柳谷観音楊谷寺(ようこくじ)が発祥なのだとか。「不安な現代にご利益と共に五感を通じて心に平安を」と数年前から定期的に花を入れるようになったという。こちらの読み方は「はなちょうず」。広い境内には龍・庭・恋・苔・琴手水の5つの花手水があり、季節ごとの花が歴史ある伽藍に彩りを添える。眼病平癒のご利益で知られ、弘法大師空海が眼を病んだ子ザルのために祈祷し、さらに眼病に悩む人々のために霊水にしたという「独鈷水(おこうずい)」が湧く。
東福寺の塔頭、勝林寺でも美しい花手水が見られる。毎週火・土曜の早朝、住職自ら生けているという花は、それぞれの花の個性を生かした立体的な造形が特徴的だ。ふだんは非公開の本尊・毘沙門天立像は、平安時代の仏像や良縁にご利益があるといわれる吉祥紅葉などと共に、秋の特別拝観(11月11日〜12月3日)で公開される。
宮本武蔵ゆかりの八大神社も、季節の花が手水舎を彩る。また紅葉シーズンも楽しみで、境内東に立つ「三色紅葉(もみじ)」はその名の通り、大きなカエデが緑、黄、赤のコントラストを作り出す。例年11月中旬が見頃。武蔵のブロンズ像や、武蔵が吉岡一門と決闘した一乗寺下(さが)り松の古木なども見どころ。
京都浪漫・悠久の物語「京都 花ごよみ~妙蓮寺・楊谷寺・勝林寺・八大神社~」
2023年10月9日(月) よる8時~8時53分 BS11にて放送
ちょっと“深い”京都を知るなら「京都の特等席」
(出典:「旅行読売」2023年11月号)
(Web掲載:2023年10月5日)