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【美しき天守へ】会津若松城(鶴ヶ城) 幕末の苛烈な戦を物語る、新しくなった展示と史跡

場所
> 会津若松市
【美しき天守へ】会津若松城(鶴ヶ城) 幕末の苛烈な戦を物語る、新しくなった展示と史跡

蒲生氏郷の幼名「鶴千代」に因み、鶴ヶ城と呼び慣わされる。紅葉に白漆喰壁と赤瓦の天守が映える 写真/会津若松観光ビューロー

 

戊辰戦争で1か月に及ぶ籠城戦に耐えた難攻不落の城

会津若松城(鶴ヶ城)は湯川が形成する扇状地に立つ。蒲生氏郷(がもううじさと)が1593年に天守を築き、城郭として整備した。戊辰(ぼしん)戦争では1か月に及ぶ籠城戦に耐えた難攻不落の城だった。しかし、1日2500発もの砲弾を受けて荒廃した城は、1874年に石垣を残して取り壊されてしまう。

天守が復元されたのは1965年。再建には意見が割れたが、天守の写真が現存していたことと、天守内部を郷土資料館として会津の歴史を正しく伝えることで了承された。

それから半世紀以上を経た2022年、耐震補強などの工事が行われ、天守内の展示も刷新、今年4月にリニューアルオープンした。会津若松観光ビューロー天守閣管理課の齋藤敏浩さんの案内で見て回った。

今回のリニューアルで最も変わったのは見せ方の工夫だ。顕著な例が3層の「幕末の動乱と会津」を展示したエリア。1層にあった若松城下のジオラマを移し、モニターと音声で戊辰戦争を解説するとともに、ジオラマに会津軍の動きや官軍の砲弾を受ける様子などを投影して重層的に表現。こうしたデジタル技術を使った展示が随所に見られる。

最上階の展望台からは磐梯山などの山々と整然とした会津の街並みを一望できる。

会津若松城のジオラマに映像を投影するなどして戊辰戦争を解説した天守の展示
30メートル以上の高さから会津若松市街をぐるりと眺望できる天守の展望台

「ラジオ電波塔の先、飯盛山(いいもりやま)中腹が白虎(びゃっこ)隊士自刃(じじん)の地です」と、齋藤さんが北東の方角を指差す。ここに来る前に飯盛山へ、年若い白虎隊士が自刃した地を訪れた。白虎隊士の像が指し示す先に鶴ヶ城があると記されていた。双方向から見るといっそう、臨場感が伝わってくる。

本丸の東側、大書院や表御座所などがあった辺りは芝生広場になっており、一角には、茶道の千家ゆかりの茶室麟閣(りんかく)が移築復元されている。抹茶をいただきながら紅葉を愛(め)で、雅(みやび)な気分に浸る。

会津にかくまわれた千利休の子、少庵が、氏郷のために建てた茶室麟閣。抹茶(菓子付き)は600円 ※掲載時のデータです
飯盛山の白虎隊士自刃の地には隊士の像が立ち、激戦の会津若松城を望む

本丸で唯一現存するのが、小天守にあたる御三階。現在は七日町(なぬかまち)の阿弥陀寺に本丸御殿の表玄関を付けて移築されている。七日町通りには明治〜大正時代の蔵や洋館などが立ち並び、郷土料理や伝統工芸の絵ろうそく、会津塗の店などが軒を連ねる。レトロな街歩きを楽しむにはうってつけだ。

文/田辺英彦

■モデルコース(移動時間 約1時間30分)

会津若松駅
↓ バス5分+徒歩10分
❶飯盛山・白虎隊士自刃の地
↓ 徒歩10分+バス20分+徒歩7分
❷会津若松城
↓ 徒歩5分+バス10分
❸阿弥陀寺
↓ 徒歩15分
❹白木屋漆器店
↓ バス12分
会津若松駅

会津若松城の御城印

城下町グルメ

料理旅館 田事(たごと)◉めっぱめし

江戸時代から続く旅籠(はたご)で、めっぱめし(わっぱ飯)が味わえる。11月頃まではきのこ( 写真、1485円)が旬。しらす、鮭、ぜんまいから選べるミニめっぱめしに、こづゆや棒だら煮などの郷土料理とみそ田楽がセットの会津もてなし膳は2090円。

■11時30分〜13時45分、17時30分〜20時30分/不定休/会津若松市城北町5-15/会津若松駅から徒歩20分/TEL:0242-24-7500

※掲載時のデータです。


会津若松城

【築城】1384(至徳元)年/葦名直盛
    1592(文禄元)年/蒲生氏郷
【種類】平山城
【天守】五重五階地下一階(外観復元)
【遺構】石垣、堀など
【入城】天守は8時30分〜16時30分/無休/410円(茶室麟閣との共通520円)
【御城印】あり(300円)。鶴ヶ城観光案内所で販売
【交通】磐越西線・只見線会津若松駅からまちなか周遊バス20分〜30分、鶴ヶ城入口下車徒歩3分 
【住所】会津若松市追手町1-1 TEL:0242-27-4005(若松城管理事務所)
※掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2023年11月号)
(Web掲載:2023年10月23日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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