【美しき天守へ】戦国武将が天下取りを夢見た360度の天守の眺望 犬山城×岐阜城(1)
正面から見た犬山城。右が付櫓で天守への侵入を防ぐための施設
戦国時代に築かれ、多くの合戦の舞台となった犬山城
犬山遊園駅から歩いて15分ほど。木曽川のほとりの小高い山の上にそそり立っているのが、犬山城である。鉄門(くろがねもん)をくぐり、正面から国宝に指定された天守を眺める。織田信長の叔父信康が築城。初期望楼型で国宝5天守の中では最も古い。
天守最上階には、周囲にバルコニーのように廻縁(まわりえん)があり、高欄(こうらん<手すり>)も付いている。廻縁に立つと、眼下には濃尾平野とゆったりと流れる木曽川、あまりの雄大さに思わずうなった。廻縁を一周すれば360度見渡せる。天候が良ければ、岐阜城も名古屋城も見えるそうだ。
「犬山城は戦国時代に築かれ、多くの合戦の舞台となりました。天守は敵を監視するための物見台の役割を果たしていたので、眺めが良いのは当然なんです」
犬山市観光協会の後藤真司さんはこう話す。
犬山城は、尾張(愛知県)と美濃(岐阜県)の国境、扇状地である濃尾平野の扇の要にあって、中山道にも木曽街道にも通じている。見晴らしが良いのはもちろん、木曽川の南の断崖の上に立つので、川が天然の堀の役目を果たすなど、軍事的な価値が高かった。
1565年、尾張統一の足がかりに織田信長が攻略し、1584年の小牧・長久手(ながくて)の戦いでは豊臣秀吉が入城。約10キロ南の小牧山城に陣取る徳川家康とにらみ合った。関ヶ原の前哨戦では、東軍が占拠するなど、戦国武将たちが奪い合った。
1階には2か所の石落とし、2階にはすぐに応戦できるよう武具を中央に配した武具の間を配し、敵を横から討つ付櫓が二つもあり、軍事拠点として機能していたのが分かる。
戦国武将たちは、どんな思いでこの絶景を眺めたろう。そう思うと、木造天守の柱や高欄、城のたたずまいも、ひとしお美しく感じる。
文/高崎真規子
写真/宮川 透
戦国武将が天下取りを夢見た360度の天守の眺望 犬山城×岐阜城(2)へ続く(11月15日公開予定)
モデルコース(移動時間 約2時間15分)
犬山遊園駅
↓徒歩8分
❶日本庭園 有楽苑
↓徒歩10分
❷国宝 犬山城
↓徒歩5分
❸城とまちミュージアム
↓徒歩20分
犬山駅
↓電車38分
名鉄岐阜駅
↓電車12分+ロープウェイ4分+徒歩8分
❹岐阜城
↓徒歩8分+ロープウェイ4分+電車15分
岐阜駅
城下町グルメ
松野屋 ◉菜めし・でんがく
明治の末期創業のでんがく専門店。メニューは豆腐、さといも、豚肉とネギの田楽と菜めしのみ。八丁味噌を付けてから香ばしく焼き、山椒(さんしょう)や唐辛子をつけて食べる。写真はでんがく定食1400円。
■11時~14時30分/木曜休/犬山市犬山北首塚28-1/名鉄犬山線犬山口駅から徒歩15分/TEL:0568-61-2417
※掲載時のデータです。
犬山城データ
国宝 犬山城 <100名城>
築城:1537(天文6)年完成/織田信康
種類:平山城
天守:三重四階地下二階(現存)
遺構:天守(国宝)
入城: 9時~16時30分/12月29日〜31日休/550円(有楽苑とのセット券1450円)
御城印:あり(300円)。犬山城前観光案内所で販売
交通:名鉄犬山線犬山遊園駅から徒歩15分
住所:愛知県犬山市犬山北古券65-2
TEL:0568・61・1711(犬山駅観光案内所)
※掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2023年11月号)
(Web掲載:2023年11月14日)