【美しき天守へ】白鷺に例えられる奇跡の城 姫路城(2)
備前丸から見上げると、大天守と小天守が連なる連立式天守であることがわかる(写真/姫路市)
優美さの中にある戦時の城の姿を垣間見る
【美しき天守へ】白鷺に例えられる奇跡の城 姫路城(1)から続く
大天守へ続く坂を上ると、戦時の城というのがよくわかる。塀には鉄砲狭間(さま)の〇△□の形の穴が開き、門の裏に武士たちが待機する武者だまりがある。菱の門に続いて、い・ろ・は・に・ほノ門、水の門一~六と12の門をくぐらなければならず、それぞれに迎撃の仕掛けがあり、また門によって曲輪(くるわ)が細かく区切られていて攻めにくいことは瞭然だ。大天守に入っても窓際に石落としの穴、壁に武具掛けが備えられている。
急階段で最上階の6階に上ると、開け放たれた窓から涼風が吹き込む。南側の窓からは、眼下に備前丸や三の丸の広場、大手前通りの先に駅と町並みが広がる。昔日はそのまま姫路の城下だった眺めだ。播磨(はりま)のこの地は、東西を結ぶ山陽道と、北の但馬(たじま)へ向かう但馬街道が交わる交通の要衝でもある。但馬街道の一部、城の北東の旧野里街道には、わずかだが古い町家と城下町の雰囲気が残る。
姫路城の原型は室町時代に美作(みまさか)国守護の赤松貞範(さだのり)が築いた砦(とりで)で、戦国時代に黒田氏、羽柴秀吉の領地となり、関ヶ原の戦いで東軍が勝利した直後の国替えで入った徳川方の池田輝政(てるまさ)が規模を拡張した。築城を始めた1601年は大坂の陣の前で、徳川・豊臣氏は緊張関係にあり、名古屋城や熊本城など同時期に造られた名城は多い。姫路城は毛利氏ら西の外様(とざま)大名に睨(にら)みをきかせる目的もあって、現在の姿になったのだ。
城内は天守以外も見どころが多い。石垣は羽柴時代、池田時代、その後の本多時代のものがあり、石臼(いしうす)や石棺(せっかん)などの転用石も見られる。
西の丸には2代将軍徳川秀忠の子、千姫(せんひめ)ゆかりの化粧櫓と侍女たちが暮らした多聞(たもん)櫓(百間<ひゃっけん>廊下)が残る。千姫は豊臣秀頼に嫁いだ後、大坂の陣の際に救出されて姫路城主の本多氏の長子と再婚した。
古い建物の隅々に歴史ドラマがそのまま息づいている。
文/福﨑圭介 写真/島内治彦ほか
モデルコース(移動時間 約1時間10分)
姫路駅
↓ バス5分
❶姫路城大手門
↓ 徒歩5分
❷入城口
↓ 徒歩10分
❸姫路城大天守
↓ 徒歩15分
❹西の丸・百間廊下
↓ 徒歩15分
入城口
↓ 徒歩15分
❺好古園
↓ バス5分
姫路駅
姫路城 立ち寄りたい日本庭園
1992年に市政100周年を記念して造られた大小九つの池泉回遊式庭園。城主・本多忠政が造営した西御屋敷、武家屋敷跡の屋敷割と地割を生かした設計で、レストラン、茶室もある。11月中旬~12月上旬の紅葉期は夜間ライトアップを行う。
■入園9時~16時30分/12月29・30日休/310円/姫路駅からループバス5分、大手門前下車徒歩5分/TEL079-289-4120
※掲載時のデータです。
築城:1346(正平元)年完成/赤松貞範、1601~09(慶長6~14)年/池田輝政
種類:平山城
天守:五重六階地下一階(現存)
遺構:大天守、小天守、渡櫓、門、堀、石垣ほか
入城: 9時~16時/12月29・30日休/1000円(好古園との共通券1050円)、シルバー観光ガイド1人2000円
御城印:あり(300円)。入城口横の売店で販売
【交通】姫路城大手門へは山陽新幹線姫路駅から徒歩20分、またはループバス5分の大手門前下車すぐ
【住所】姫路市本町68 TEL:079-285-1146(姫路城管理事務所)
※掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2023年11月号)
(Web掲載:2023年11月17日)