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【美しき天守へ】白鷺に例えられる奇跡の城 姫路城(1)

場所
> 姫路市
【美しき天守へ】白鷺に例えられる奇跡の城 姫路城(1)

天守を幾重にも櫓や堀が囲み、戦闘を意識した造りの姫路城。世界遺産登録30周年の今年は、特別公開やライトアップイベントなどの記念事業を行っている。西の丸の土塀越しに撮影(写真/島内治彦)

 

築400年超の国宝の現存天守は世界遺産登録30周年

日本で初めて世界遺産に登録されて30周年を迎えた今年(※)、各種の記念事業を行っている姫路城を訪ねた。姫路駅を出ると、大手前通りの正面に白亜の天守がそびえ立つ。復元された天守ではない。400年以上前に造られた、国宝の現存天守だ。日本の都市の多くが江戸期の城下町を下敷きにして発展してきたが、駅の真正面に城がある町は数少ない。

駅前からバスに乗り、大手前通りを走ると、5分で大手門前に着く。姫路城は姫山に築かれた城を中心に、内堀、中堀、外堀の3重の水堀を渦巻き状に巡らし、内堀~中堀の間の中曲輪(なかぐるわ)に武士、中堀~外堀の間の外曲輪に町人らが暮らした。現在の姫路駅は外堀跡の少し外側に位置しており、駅前から城まではすっぽりと昔の城内に含まれる。中堀は埋め立てで国道に姿を変えたが、堀の一部や当時の町割、町名が残っている。

(※1993年、姫路城は、法隆寺地域の仏教建造物、白神山地、屋久島と共に日本で初めてユネスコの世界遺産に登録された)

内堀から城を眺める観光和船は11月26日までの金・土・日曜、祝日に運航。1500円。問い合わせはTEL:079-2803371(写真/島内治彦) ※掲載時のデータです

内堀を渡って大手門をくぐると、三の丸広場の先に名城が全貌を現した。五重六階の大天守と、三重三階・四階の小天守を囲んで、高い石垣と塀、櫓(やぐら)が立ち並ぶ。 壁や窓、瓦の間にも漆喰を塗りこめた白漆喰総塗籠(しろしっくいそうぬりごめ)造りの城は別名「白鷺(はくろ)城」。約15メートルの石垣と31.5メートルの大天守が立ち、姫山を含めた高さは海抜92メートルに及ぶ。壮観だ。

三の丸広場から眺める天守
池田家の揚羽蝶など歴代城主の家紋が入った瓦。瓦の間に目地漆喰が塗られている(写真/島内治彦)

2015年終了の「平成の大修理」で取り戻したまばゆい姿は記憶に新しい。直後は入城口の外から大天守まで続く長い行列ができたそうだが、今は落ち着き、塗り直した漆喰の色もなじんでいる。全体が文化財という城は類を見ない。その貴重な遺構を保存してきた関係者のたゆみない注力に頭が下がる思いがした。

失われる危機もあった。最初は明治維新後、陸軍の兵営地となり建物は荒廃。市民らの請願により陸軍の働きかけで「明治の大修理」が実現し、昔日の姿を取り戻した。最大の危機は戦時中、軍事施設が多かった姫路は空襲を受けたが、燃え落ちる町の中で、城は偶然にも残った。天守を直撃した焼夷(しょうい)弾が不発だったり、深夜の空爆で米軍パイロットが堀を池と見間違えたり、幸運が重なったそうだが、見方によればこれは奇跡だ。

1945年の姫路空襲で破壊された町の中、姫路城は焼けずに残った(写真/兵庫県立歴史博物館)

その後、「昭和の大修理」「平成の大修理」を経て、その姿を今に残している。

文/福﨑圭介 写真/島内治彦ほか

 

【美しき天守へ】白鷺に例えられる奇跡の城 姫路城(2)へ続く(11/17公開予定)

 

モデルコース(移動時間 約1時間10分)

姫路駅
↓ バス5分
❶姫路城大手門
↓ 徒歩5分
❷入城口
↓ 徒歩10分
❸姫路城大天守
↓ 徒歩15分
❹西の丸・百間廊下
↓ 徒歩15分
入城口
↓ 徒歩15分
❺好古園
↓ バス5分
姫路駅

 

城下町グルメ

柊(ひいらぎ)キュエル姫路店  ◉アナゴ料理

瀬戸内海産のアナゴ料理の店。焼穴子重1980円は、契約農家から仕入れた米を炊いたご飯の上に、秘伝のたれを付けて焼いた香ばしいアナゴが載る。アナゴの卸売・加工業者が親会社で、素材の新鮮さが自慢だ。

■11時~14時、17時~21時/元日休/姫路市西駅前町1-4 キュエル姫路4階/山陽新幹線姫路駅からすぐ/TEL:079-287-8848

※掲載時のデータです。


姫路城

築城:1346(正平元)年完成/赤松貞範、1601~09(慶長6~14)年/池田輝政
種類:平山城
天守:五重六階地下一階(現存)
遺構:大天守、小天守、渡櫓、門、堀、石垣ほか
入城: 9時~16時/12月29・30日休/1000円(好古園との共通券1050円)、シルバー観光ガイド1人2000円
御城印:あり(300円)。入城口横の売店で販売
【交通】姫路城大手門へは山陽新幹線姫路駅から徒歩20分、またはループバス5分の大手門前下車すぐ
【住所】姫路市本町68 TEL:079-285-1146(姫路城管理事務所)

※掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2023年11月号)
(Web掲載:2023年11月16日)


Writer

福崎圭介 さん

新潟県生まれ。広告制作や書籍編集などを経て月刊「旅行読売」編集部へ。編集部では、連載「旅する喫茶店」「駅舎のある風景」などを担当。旅先で喫茶店をチェックする習性があり、泊まりは湯治場風情の残る源泉かけ流しの温泉宿が好み。最近はリノベーションや地域再生に興味がある。趣味は映画・海外ドラマ鑑賞。

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