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インド・ダージリン ヒマラヤ山脈の茶園をSLが走る天空の街(1) 

場所
インド・ダージリン ヒマラヤ山脈の茶園をSLが走る天空の街(1) 

タイガー・ヒルの展望台からヒマラヤ山脈とダージリンの街並みを遠望

 

ダージリンで3つの「T」がお待ちしています

「ダージリンで三つの『T』がお待ちしています」

インドのガイドから手紙をもらい、「T」が何なのか思いを巡らせながら、首都ニューデリー行きの直行便に乗った。

成田空港からニューデリーのインディラ・ガンディー国際空港まで約9時間30分、さらにダージリンの最寄りのバグドグラ空港まで国内線で約2時間。途中、搭乗する飛行機と同じくらいの高度の雲間にヒマラヤ山脈の白い稜線が見え、思わず歓声を上げた。中国との国境が近いせいか、バグドグラ空港は軍用機や軍人の姿が多い。手紙をくれたネパール人ガイドのキショールさんと落ち合い、車で北へ向かう。

空港を出ると道の両側に緑の茶園が広がった。隣のアッサム州はアッサム・ティーの産地で、ここ西ベンガル州の低地にも茶園がたくさんある。

剪定作業に忙しい茶摘みを終えた茶園
標高2000メートルを超える天空の街、ダージリン

「コクが強いアッサム・ティーはチャイ(ミルクティー)にぴったり。高地で栽培するダージリン・ティーは香りがいいのでストレートがおいしいですよ」とキショールさんが教えてくれた。

車は徐々に高度を上げ、3時間ほどでダージリンの街に到着した。

標高8500メートルのカンチュンジュンガの雄大な眺め

翌朝、街の中心部から南下し、さらに高所の標高2590メートルのタイガー・ヒルの展望台へ上った。目にしたい風景があった。天候など条件がそろえば、標高世界第3位の8586メートルのカンチェンジュンガの雄大な眺めに出合えるという。ガイドによると、ダージリン観光の三つの「T」の一つが、ここタイガー・ヒルだ。

ベストシーズンは10月〜11月で、山肌に日の光が当たる早朝がいい。乾季でも冬は霧が出やすく、雨季の夏は雲が出やすい。展望台に立った12月下旬のこの日、犬歯のような険しい白い山並みが空にくっきりとそそり立って見えた。下方には緑の丘陵にミニチュアのようなダージリンの街並み――「天空の街」とでも呼びたくなる絵画的な景観だ。近くにいたイギリス人旅行者が「1週間滞在しているけど、カンチェンジュンガを見たのは今日が初めて。君たちラッキーだよ」と笑った。

残る二つの「T」は何か。既述したダージリンを象徴する紅茶(ティー)と、これから乗車する鉄道(トレイン)である。街の中心部のダージリン駅に戻り、予約していたダージリン・ヒマラヤ鉄道のチケットを窓口で受け取って、出発までの間、蒸気機関車を撮影した。

ダージリン駅で出発を待つミニSL(ジョイライド)。右上の建物はイギリス植民地時代の影響が色濃く残る
一般道の自動車や人と並走するミニSLは路面電車のよう
ヒマラヤ動物園で出会った少女

この古い登山鉄道はイギリス植民地時代の遺産だ。酷暑のカルカッタ(現コルカタ)で暮らすイギリス人たちは、冷涼な気候と景観に優れたダージリンを避暑地として開発。避暑客や、中国から取り入れ栽培に成功した茶の輸送のために鉄道を敷設した。

文・写真/福崎圭介

 

インド・ダージリン ヒマラヤ山脈の茶園をSLが走る天空の街(2)へ続く(11月25日公開予定)


※料金等すべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2016年7月号)
(Web掲載:2023年11月24日)


Writer

福崎圭介 さん

新潟県生まれ。広告制作や書籍編集などを経て月刊「旅行読売」編集部へ。編集部では、連載「旅する喫茶店」「駅舎のある風景」などを担当。旅先で喫茶店をチェックする習性があり、泊まりは湯治場風情の残る源泉かけ流しの温泉宿が好み。最近はリノベーションや地域再生に興味がある。趣味は映画・海外ドラマ鑑賞。

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