刺激と癒やしの桃源郷・四川 古代の智恵と 道教の聖地「都江堰・ 青城山」(とこうえん・せいじょうさん)
都江堰
成都郊外を流れる岷江の氾濫を抑えるために築かれた水利施設。農地を潤す灌漑施設としても利用された。
古来「天府之国(てんぷのくに)」と讃えられた、四川盆地西部の成都平原は、実り豊かな穀倉地帯として知られる。その恵みを支えてきたのが、2300年前に造られた古代の水利施設「都江堰」である。
春になると、雪解け水が流れ込み、洪水を繰り返していた岷江(みんこう)。その氾濫を食い止めるとともに、干ばつが深刻だった成都平原に水を引き込み、農地を潤した。
驚くのは工事の規模の大きさ。古代中国の三大水利工事といわれただけでなく、「万里の長城」とも比較されるほどだったという。
都江堰へは成都から北西へ約60㌔、バスで1時間余りだ。岷江の水を灌漑(かんがい)用の運河「灌江(かんこう)」に分水させるための「魚觜(ぎょし)」と呼ばれる水利施設をはじめ、農業用水を水路に導くための「宝瓶口(ほうへいこう)」や、工事に携わった李親子を祀る「二王廟(におうびょう)」など、見どころは実に多彩だ。
都江堰とともに世界文化遺産として登録されたのが、南西10㌔の地にそびえる「青城山」だ。こちらは道教の発祥地として知られる聖地。原生林が広がる自然豊かなところである。
主峰「老霄頂(ろうしょうちょう)」(海抜1600㍍)をはじめとする36もの峰々が連なる景勝地。「五斗米道(ごとべいどう)」と呼ばれた道教教団の創始者・張陵(ちょうりょう)が、当地に伝わる黄老学説を学んだ後、教えを広めたところとか。張陵が修行した「天師洞(てんしどう)」や「建福宮(けんふくきゅう)」「円明宮(えんめいきゅう)」といった道教の寺院「道観(どうかん)」が点在している。
幽玄さが際立つ青城山の景観とともに、名刹の深遠なるたたずまいの中で、心の平安を祈りたいものである。
回鍋肉
四川の郷土料理。豚肉と蒜苗(葉ニンニク)を炒めて、唐辛子や豆板醤で味付けしたもの。日本で食べる回鍋肉よりずっと辛い。(写真提供:四川フェス実行委員会)
リャンガオ
四川省南部の双河村を発祥地とする夏のスイーツ。玄米を原料としたもので、ゼリーのような食感が特徴的。黒蜜をつけて食べることが多い。(写真提供:四川フェス実行委員会)
四川省について
中国南西部に位置。省都は成都。三国時代の蜀の劉備が築いた歴史都市である。気候は湿潤で、「天府之国」と呼ばれるほど実り豊か。人口は、中国国内で4位の8076万人が暮らしている。九寨溝に代表される豊かな自然も魅力。
都江堰、青城山へのアクセス
成都へは成田空港、関西空港から四川航空が直行便を運航中。都江堰へは、成都のバスターミナルからバスで約1時間の都江堰市バスターミナル下車後、車で約10分。青城山へは、成都のバスターミナルからバスで約1時間30分。青城山下車すぐ。
(WEB掲載:2020年5月)