インド・ダージリン ヒマラヤ山脈の茶園をSLが走る天空の街(2)
一般道の自動車や人と並走するミニSLは路面電車のよう
1881年全線開通の登山鉄道、走る世界遺産に乗る
インド・ダージリン ヒマラヤ山脈の茶園をSLが走る天空の街(1)から続く
全線開通は1881年。現在もニュージャルパイグリ駅とダージリン駅間の88キロ、標高差2000メートルをディーゼル機関車が走り、その歴史的価値から世界遺産に登録されている。
この日乗ったのは、ダージリン駅と隣のグーム駅の間6キロを、イギリス製の蒸気機関車が片道1時間かけて折り返し運転する観光向けのジョイライド(予約指定制、往復1100ルピー=約1800円)。SLは汽笛を鳴らしながら客車2両を引き、610ミリの狭軌のレール上をゆっくりと登っていく。「トイ・トレイン(おもちゃ列車)」の愛称で呼ばれる車内は狭く、インド人観光客たちで満席。行き交う人々や街並みが車両をかすめ、路面電車の趣だ。車窓からは空を背にしたヒマラヤ山脈も遠望できる。途中、展望の良いループ状の鉄道橋「バタシアループ」で休憩した後、グーム駅に到着。なお、人気のジョイライドは年々値上がりしているので、運賃が安い普通列車を利用してもいい。
高地に広がる茶園、夏摘み茶の爽やかな香り
午後はダージリン・ティーを楽しんだ。茶園は80か所以上で、街の外に見渡すかぎりの茶園が広がる。春から秋にかけて茶摘みが見られるという。紅茶はホテルやレストラン、一部の農園で飲めるが、ガイドに案内され、茶葉専門店マユクで試飲した。
茶葉は摘み取り時期によりファーストフラッシュ(春摘み)、セカンドフラッシュ(夏摘み)、オータムナル(秋摘み)に分かれ、遅摘みほど色やコク、渋みが強い。特に良質なものは「マスカテル(マスカット)フレーバー」と呼ばれる独特のフルーティーな香りがするという。一番茶の芯芽を集めたホワイトティーと呼ばれる最高級品もある。
「ポットにセカンドフラッシュの茶葉と湯を入れ、3分〜4分しっかり蒸らした後、ティーカップに最後の一滴まで注ぎます。ブラックティー(ストレート)で香りを楽しんで」とキショールさんがすすめる。
口にすると、爽やかな香りが鼻を抜け、ふくよかな風味と、かすかな渋みが広がる。世界三大紅茶の一つとされる雑味のない端正な香りに、旅の疲れもほぐれていく。この茶葉がここからヨーロッパや日本など世界へと広がっていった歴史を思うと、味わいはさらに深まるようだった。
文・写真/福崎圭介
※料金等すべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2016年7月号)
(Web掲載:2023年11月25日)