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【駅麺コラム】駅そばのいまとこれからを考える(2)

【駅麺コラム】駅そばのいまとこれからを考える(2)

上野駅の無人営業「セルフ駅そば」

店の数はそれほど減っていない

【駅麺コラム】駅そばのいまとこれからを考える(1)から続く

一方、大都市圏では、地方とは異なる課題に直面している。一つは、駅ナカ開発によるライバル店の台頭、列車の直通運転による乗り換え機会の減少、ホームドアやエレベーターの設置に伴う強制退去といった、店舗を取り巻く環境の変化だ。鉄道や駅の利便性向上が、駅そばにとっては逆風となる場合があるのだ。これに対応するべく、近年の駅そばは、ホームからコンコースなどに主戦場を移している。ホームにある駅そばは確かに減っているが、コンコースなどではむしろ増えており、実数はさほど減少していない。

もう一つは、労働力不足だ。少子高齢化の影響で外国人労働者に頼らざるを得ないのが現状で、外国人の店員と客が互いに外国語でやり取りをするシーンも珍しくなくなってきた。それでも人員を確保できればまだよい方で、営業実績は悪くないのに人手不足のために閉店に追い込まれる場合もある。

この問題を解決するかもしれない駅そばが、今年5月に上野駅(常磐線ほか・東京)に誕生した。無人営業の「セルフ駅そば」だ。調理は全自動で行うため、スタッフは常駐していない。現時点では価格面などで課題が残ると感じるが、将来的には駅そばの標準スタイルになる可能性を秘めている。このほかにも、食券購入と同時に厨房へオーダーが通る仕組みの券売機や、ボタン一つで1杯分のつゆが自動的に注がれるサーバー、麺をゆでる工程を行うロボットの導入など、スタッフの負担を軽減する機器の導入が進んでいる。

逆風が吹き荒れる業界ではあるが、それに立ち向かうエネルギーは、駅そばという文化そのものに宿っていると思う。絶滅を危惧するのは、だいぶ早計なのではないだろうか。

文・写真/鈴木弘毅

熊本駅「まるうまうどん」の火の国そば

【鈴木さんのイチオシ駅麺10選②】

◉金沢駅(北陸新幹線ほか・石川)

「加賀白山(はくさん)そば」

麺もつゆも自家製で、爽快な味わい。名物は白えびかき揚げそば

◉姫路駅(山陽線ほか・兵庫)

「えきそば」

中華麺と和風だしという意外な組み合わせが、想像以上にハマる

◉備後矢野駅(福塩(ふくえん)線・広島)

「矢野駅食堂」

三色餅をトッピングした福縁阡(ふくえんせん)そばは、見た目にも縁起がよい一杯

◉松山駅(予讃線・愛媛)

「かけはし」

じゃこ天実演販売コーナーを併設し、揚げたてをトッピングできる

◉熊本駅(九州新幹線ほか・熊本)

「まるうまうどん」

からし蓮根、馬肉、日奈久(ひなぐ)ちくわをトッピングした火の国そばが人気

※掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2023年12月号)

(Web掲載:2023年12月3日)


Writer

鈴木弘毅 さん

1973年、埼玉県生まれ。中央大在学中に旅の魅力に目覚め、独自の旅のスタイルを提唱する「旅のスピンオフライター」として活躍。駅麺、駅カフェなど「鉄道系グルメ」についての著書が多数。中でも駅そばには愛着があり、幼少期から3000軒以上を食べ歩き、「駅そば研究の第一人者」とも言われる。

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