【旅と駅弁・駅麺】米子名物「吾左衛門鮓」の魅力を探る
「吾左衛門鮓 鯖」レギュラーサイズ1本2100円。5切れにカットしたハーフサイズは1200円 ※掲載時のデータです
1本2000円以上なのに大人気!
毎年新作が登場し、入れ替わりの激しい駅弁業界だが、ロングセラーもある。その一つが、米子駅、米吾(こめご)の「吾左衛門鮓(ござえもんずし)」。「鯖」、「蟹」、「穴子」、「鯛」など数種の具材があり、レギュラーサイズ1本(約8切れ分)2000円以上の高級駅弁だが、土産や贈答品にも用いられ、シリーズで年間30万本を売り上げる。
中でも1番人気は「鯖」。ぐるりと昆布でくるんだサバの押しずしだ。その魅力を探るべく、米吾を訪ねた。
「『吾左衛門鮓』の販売は1979年。山陰の食文化を伝える新たな駅弁づくりを模索していた13代目の内田健二郎が開発しました」と、製造部参与の三上正城(まさき)さんは言う。
米吾の創業は1902年だが、江戸時代には米屋と廻船問屋を営んでおり、日本海の荒波に出る船子たちのために、日持ちがする酢めしをおにぎりにして酢で締めたサバをのせ、ワカメで巻き竹皮で包んだ弁当を持たせていたそうだ。過去の文献からそれを知った13代目はこの弁当をヒントに、4年間かけて「吾左衛門鮓」の開発に取り組んだ。
全国から材料を厳選。希少な北海道・道南産の真昆布の肉厚なものだけを選び、米は程よい粘りや弾力性のある鳥取産のすし米を使用。脂が乗ってうまみのある寒サバを1枚1枚ていねいに仕込んだ。昆布の味付けから酢の調合など、レシピは門外不出とされ、今も受け継がれている。
さらに味を極めたのが、その後導入された〝熟成解凍〟という製法だ。製造直後にマイナス60度で急速凍結した製品を、出荷する直前に7時間かけて解凍する米吾独自の特許製法で、これにより「昆布とサバ、ご飯が三位一体になり、サバは生臭さがなくなり、ご飯はまろやかになるんです」と三上さんは解説する。
帰りに米子駅で「吾左衛門鮓 鯖5貫入」を買った。肉厚のサバと昆布のうまみと酢めしのバランスが絶妙だ。山陰線は駅弁の激戦区。鳥取駅には「元祖 かに寿し」が人気のアベ鳥取堂、松江駅には「島根牛みそ玉丼」が名物の一文字家(いちもんじや)と、人気の老舗がひしめいている。各駅停車で食べ比べるのもいいだろう。
文/高崎真規子
駅弁激戦区 山陰線のおすすめ駅弁
元祖 かに寿し ◉1480円
70年を超えるロングセラーで、カニの炊き込みご飯「山陰鳥取 かにめし」と並ぶ同社の看板駅弁。カニの身をふんだんに使い、酢めし用にブレンドした酢の一部を自社で作るなど、こだわりがある。
<鳥取駅>アベ鳥取堂/TEL:0857-26-1311
※掲載時のデータです。
島根牛 みそ玉丼 ◉1410円
奥出雲の天然醸造みそと、地元酒蔵の酒を合わせた甘辛いタレで煮込んだ肉質のいい島根牛が島根産コシヒカリのご飯の上にたっぷり載る。とろとろ玉子とみそが合わさり独特の味わいに。
<松江駅>一文字家/TEL:0852-22-3755
※掲載時のデータです。
吾左衛門弁当 ◉1728円
「吾左衛門鮓 鯖」と、酢めしの上に錦糸卵、紅ズワイガニの身をのせた「かに寿し」、栗、ニンジン、シイタケが入った「大山おこわ弁当」など、米吾の人気駅弁が一度に味わえる。
<米子駅>米吾/0859-26-1511
※掲載時のデータです。
米子駅、岡山駅の売店や米子空港、鳥取空港のほか、東京や大阪の百貨店やスーパーなどでも販売。オンラインショップで取り寄せもできる。
TEL:0859-26-1511
(出典:「旅行読売」2023年12月号)
(Web掲載:2023年12月15日)