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【旅する喫茶店】トゥルネラパージュ(浜松)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 静岡県
> 浜松市
【旅する喫茶店】トゥルネラパージュ(浜松)

スピーカーの前のリスニングエリアは会話禁止。会話を楽しみたいなら上のホールのテーブル席で。雨の日はジャズ以外のロックやポップスもリクエストできる

 

コーヒーとジャズとキートンの夜

冬風が吹く浜松駅前の大通りから路地に入り、ビルの扉を開けると、風音を消す音量のジャズが鳴り響いた。今夜の目的地、トゥルネラパージュはフランス語で「ページをめくる」の意。1日の終わりにリフレッシュしてほしいという思いがある。

一人掛けソファが並ぶ「リスニングエリア」で温かいコーヒーを飲む。ソファの先の〝舞台〞には、ドイツ・アヴァンギャルド社製の赤白のホーンスピーカーを左右に従え、銀色の巨大ウーハーが鎮座し、迫力のある音を吹き抜けの空間に響かせる。照明に輝く姿はアート作品のよう。上のスクリーンにはバスター・キートンの喜劇映画が映し出されている。

「キートンの無声映画は展開が素直で、数分という長さもちょうどいいんです」と話す副店長の榑松(くれまつ)愛子さんは「ジャジーな空間でこだわりのコーヒーを味わってほしい」と続ける。店は2005年、榑松さんの高校時代の友人で店長の矢野裕理さんが開いた。アメリカの大学を卒業した矢野さんは、映画関係の仕事をしていて限界を感じ帰郷。「音楽のまち浜松」で、好きだったコーヒーの店を開いた。ジャズレコード5000枚は知り合いから譲ってもらった。

店主の感覚が生んだ旧来のジャズ喫茶とは異なる空間。リクエストした曲があの音質で聞こえた時に幸福を感じたのは、数分で終わってしまうとわかっていたからかもしれない。

文・写真/福﨑圭介

レンガ造り風のビル1階の扉の先に音楽に満ちた空間が広がる
壁に名盤ジャケットが並ぶ。定期的にテーマを変えて入れ替える
ブラジル930円とバスクチーズケーキ600円。各種コーヒーのうちブラジルは豆の買い付けから焙煎まで自社で行い、スタッフがハンドドリップでいれる。ポットでいれるのは「ゆっくりしていってい ただきたいから」

トゥルネラパージュ

静岡県浜松市中央区板屋町628 Y3ビル1 階
TEL:053-455-7100
営業:13時~L.O.19時(金・土曜は~L.O.21時)/月・火曜休、年末年始不定休
交通:東海道新幹線浜松駅北口から徒歩6分

※掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年3月号)
(Web掲載:2024年4月2日)


Writer

福崎圭介 さん

新潟県生まれ。広告制作や書籍編集などを経て月刊「旅行読売」編集部へ。編集部では、連載「旅する喫茶店」「駅舎のある風景」などを担当。旅先で喫茶店をチェックする習性があり、泊まりは湯治場風情の残る源泉かけ流しの温泉宿が好み。最近はリノベーションや地域再生に興味がある。趣味は映画・海外ドラマ鑑賞。

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