ユーミンの歌に誘われ観音崎へ(2)【ひとり旅】
ホテルの目の前にある浦賀水道には、頻繁に外国の貨物船が通る
外国の貨物船が行き交う海を眺める
ホテルのすぐ裏側の海沿いには、走水(はしりみず)観音崎ボードウォークと呼ばれる木製の遊歩道が延びている。湯上がりに散策するのにはちょうどいい。さえぎるものがない大海原。その向こうには、横浜ベイブリッジとアクアラインだろうか。東京湾の目の前にいるんだなあと実感する。
三浦半島と房総半島の間に挟まれた浦賀水道は、東京湾と外洋を結ぶ海上交通の要衝。普段見慣れない外国籍の大型貨物船や客船がひっきりなしに通る。なんだか、ユーミンが描く歌の情景のように、エキゾチックで都会的だ。ぼんやり眺めていると、昔聴いたユーミンのいろいろな曲が頭の中を流れる。
80年代後半、フリーライターになった頃、自宅でいつもユーミンをかけていた。女性たちの結婚観、仕事観、人生観が大きく変わりつつある中で、ユーミンの歌詞に出てくる女性は、葛藤しながらも、自分らしく生きようと必死でがんばっているように映った。そんな女性像に憧れ、自分も輝きたいと、怖いもの知らずで突っ走っていた若かりし頃の気持ちがふっとよみがえる。
〝あれからもう40年、ちゃんと生きてこられたのかな〟
心の中で自問する。還暦を過ぎ、小さい字も見えにくくなった。少し気弱になっていたのかもしれない。すると20 代の自分に〝まだ人生終わってないよ〟と、肩をたたかれた気がした。
きらきらと光る海を、そのまましばらく眺めていた。
翌朝目覚めると、ベランダの向こうは空と海。なんとすてきな1日だったろう。旅に元気をもらったようだ。すぐバスに乗らず、海沿いのよこすか海岸通り(国道16号)を少し歩くことにした。15分ほど行くと、釣り船の船宿が軒を連ねる。リゾートとはまた違った風景が新鮮だ。その先に船が何艘(そう)も係留されている漁港が見える。走水漁港だろう。
そして、漁港の横に、古びた歩道橋が見えた。この歩道橋が「よそゆき顔で」の歌詞に出てくる〝観音崎の歩道橋〟のモデルとされている。インターネットには、ユーミンがロケハンに来たなんて話もあり、ファンの聖地になっているらしいが、真偽は不明だ。
帰りのバスは横須賀駅行き。そのまま終点まで乗って、スカジャンの店が立ち並ぶドブ板通りを歩いてみるのもいい。
文/高崎真規子 写真/三川ゆき江
🔳モデルコース
馬堀海岸駅
↓(バス15分+徒歩15分)
観音埼灯台
↓(徒歩20分)
横須賀美術館
↓(徒歩すぐ)
ラビスタ観音崎テラス泊
↓(徒歩すぐ)
走水観音崎ボードウォーク
↓(バス40分)
横須賀駅
味わいたい地元の地魚料理
北浜寿司観音崎店
ランチの看板メニューは、走水や鴨居など地元の漁港から仕入れた旬の地魚を使った「おまかせにぎり」2200円(ネタは季節により異なる)。一本釣りの黄金アジ、自家茄での地ダコをはじめ、ヒラスズキ、キンメダイ、イワシ、イカと地の旬のネタが並ぶ。
■11時30分~13時30分、17時~20時30分/水曜休(火曜、木曜が休みの場合あり)/京急本線馬堀海岸駅からバス15分、観音崎下車徒歩15分/TEL046-844-2383
ひとり旅プランは1泊2食3万1150円~(繁忙期を除く)
住所:横須賀市走水2-1157-2
交通:京急本線馬堀海岸駅からバス10分、ラビスタ観音崎テラス・横須賀美術館前下車すぐ/横浜横須賀道路馬堀海岸ICから3キロ
問い合わせ:TEL046-841-2355
営業:9時~16時10分(土・日曜、祝日は8時30分~16時40分。季節により異なる)/無休(天候などにより臨時休あり)/参観寄付金300円
交通:京急本線馬堀海岸駅からバス15分、観音崎下車徒歩15分
問い合わせ:TEL046-841-0311
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年5月号)
(Web掲載:2024年6月14日)