富士山からの清冽な伏流水が湧き出す「水の都」を歩く 三島駅から(1)【駅から歩こう1万歩】
源兵衛川の広瀬橋付近。川歩きと森林浴を一度に楽しめる
富士山の噴火で流出した溶岩の末端部から湧出する三島湧水群
こんこんとあふれる湧き水は、とても清々しい。富士山の伏流水を求めて、静岡県三島市を訪ねた。
「ようこそ三島へ」と迎えてくれたのは、ボランティアガイド「三島市ふるさとガイドの会」の三浦陽子さん。予約をしておけば無料で市内をガイドしてくれる。
三島駅周辺に点在する三島湧水群は、1万年以上も前の富士山の噴火で流出した溶岩の末端部から湧き出ているといい、ほぼ平坦なルートで気軽に見て回れる。象徴的なスポットが源兵衛(げんべえ)川だ。全長約1.5キロの灌漑(かんがい)用水路で、三島駅前の楽寿園から湧き出す水が源流となり、南に位置する中郷(なかざと)温水池へと注ぎ込む。
楽寿園は明治中期に小松宮彰仁(こまつのみやあきひと)親王の別邸として造営され、現在は三島市立の公園となっている。敷地内の小浜池には富士山の雪解け水が湧き出し、夏場には水で満たされる。訪れた時は水がたまっておらず溶岩の痕跡が見え、富士山が活火山であることを物語っていた。池のほとりに立つ楽寿館は京風建築の数寄屋造りで、ふすま絵や天井絵が美しい。
楽寿園の向かいには白滝公園があり、桜川が流れている。ここも湧き水スポットだ。木漏れ日がキラキラと差し込む下で、子どもたちが水遊びをしていた。「ここは真夏でも涼しいんですよ」と三浦さんが教えてくれた。
気に入ったのは、白滝公園から三嶋大社へと向かう「水上(みずかみ)通り」だ。車道と民家の間に橋がいくつも架かり、川が生活に溶け込んでいる。
伊豆国一の宮である三嶋大社は、福徳の神として信仰を集めている。旧東海道に面し、下田街道の起点でもあり、私も旅の安全を祈願した。客殿の近くにある「生玉水(いくたまのみず)」は井戸から湧水を引いているという。名物の縁起餅「福太郎」を味わいながら、しばし足を休めた。
文/星 裕水 写真/阪口 克
富士山からの清冽な伏流水が湧き出す「水の都」を歩く 三島駅から(2)【駅から歩こう1万歩】へ続く(6/28公開)
【モデルコース】
●徒歩距離/約7.1キロ
●徒歩時間/約2時間
三島駅
👟(100メートル)
楽寿園
👟(700メートル)
三嶋大社
👟(1000メートル)
三島梅花藻の里
👟(900メートル)
中郷温水池
👟(900メートル)
水の苑緑地
👟(500メートル)
うなぎ 桜家
👟(1100メートル)
境川・清住緑地
👟(1900メートル)
三島駅
楽寿園
約7万8000平方メートルと広大な公園。園内の景観と庭園は、国の天然記念物および名勝に指定されている。どうぶつ広場やのりもの広場もある。写真は楽寿館。
■9時~16時30分(11月~3月は〜16時)/月曜(祝日の場合は翌日)休、年末年始休/入園料300円/東海道新幹線三島駅から徒歩3分/TEL055-975-2570
公式サイトはこちら
三嶋大社
源頼朝が源氏再興を祈願し、それ以降崇敬を集めた。本殿・幣殿・拝殿が連なる複合社殿は国指定重要文化財。■8時30分~16時30分(土・日曜、祝日は~17時、宝物館は9時~16時) /境内自由(宝物館は500円)/東海道新幹線三島駅から徒歩15分、または伊豆箱根鉄道三島田町駅から徒歩7分/TEL055-975-0172
公式サイトはこちら
三島駅
東海道新幹線、東海道線、伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線が乗り入れる西伊豆の玄関口。1934年に東海道線の丹那トンネルが開通し、熱海-沼津駅間の新線が開業した際、現在の位置に設置された。南口駅舎は富士山の稜線(りょうせん)と、三嶋大社の社殿の緑青(ろくしょう)色をイメージした屋根が特色。水の都らしく駅前の水道は水琴窟にもなっている。
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年6月号)
(Web掲載:2024年6月27日)