東京駅から東西南北へ1万歩(1)東は亀戸【駅から歩こう1万歩】
東京駅の赤レンガ駅舎前で気合一発! ここから1万歩の先に何が待っているのか、ワクワクが止まらない
日本橋、墨田川を越え、水の都・江戸を感じる
さあ、東京駅から東西南北への1万歩さんぽを始めよう。最初にお断りしておくが、いずれのゴールも東京駅から最短コースを通って約7キロ先の駅を選出した。しかしそれだけでは味気なく、物見遊山で楽しめるように手を加えた。歩行距離は想定より増えるがご容赦いただきたい。
東京駅から東へ歩き続けると、五街道の起点・日本橋を皮切りに、鎧橋、清洲橋、萬年橋など、数々の橋を渡ることになる。当然、その下には大小の川が流れており、縦横に水路を張り巡らした水の都・江戸の面影を感じる。物資や人を乗せた多くの船が行き交う風景を想像しながら川面を眺めるのも面白い。
岸辺に下りて、橋を見上げてみるのもおすすめだ。現在の日本橋は1911年に完成した石造2連のアーチ橋で、花崗岩(御影石)が使われている。橋の下を行き交う船乗りの視線も意識したのだろうか、側面アーチ中央の要石には獅子の顔が施されている。
平安期の武将・源義家ゆかりの兜岩が残る兜神社、安産・子育て祈願で有名な水天宮を経て、清洲橋を渡る。隅田川と小名木川の合流点近くに芭蕉稲荷神社が鎮座している。江戸期の俳聖・松尾芭蕉は1680年に日本橋から深川に移り、創作活動を行った。その住まいは芭蕉庵と呼ばれ、芭蕉稲荷神社の周辺にあったと考えられている。
隅田川を望む芭蕉像が立つ芭蕉庵史跡展望庭園で、俳句好きの女性と出会った。近くの江東区芭蕉記念館に誘われて同行すると、入り口脇で「これが芭蕉よ。あら、花が咲いている」と教えてくれた。指差す先にはバナナの木に似た背の高い植物。これを俳号にするとは、やはり芭蕉はただ者ではなかったと感心した。
小名木川沿いに戻り、大横川を経て、猿江恩賜公園に到着。江戸・明治期は貯木場で、水辺に木材が浮く光景が見られたという。最後の川となる横十間(よこじっけん)川を渡り、竪川河川敷公園から明治通りに出ると亀戸駅はもうすぐだ。歩き終えて、つくづく江戸は水都だと感じた。そして、その礎を築いた徳川家康の都市づくりの手腕にも感服した。
文/内田 晃 写真/内田 晃、齋藤雄輝ほか
東京駅から東西南北へ1万歩(2)西は新宿【駅から歩こう1万歩】へ続く(6/30公開)
【モデルコース】
●徒歩距離/約7.9キロ
●徒歩時間/約2時間40分
東京駅(八重洲中央口)
(900メートル)
日本橋
(1000メートル)
水天宮
(800メートル)
清洲橋
(600メートル)
小名木川
(100メートル)
芭蕉稲荷神社
(2500メートル)
猿江恩賜公園
(1800メートル)
佐野みそ 亀戸本店
(200メートル)
亀戸駅
立ち寄りたい沿線のスポット
みそ専門店で、常時70種以上をそろえる。店内の「イートイン味苑(あじえん)」では月替りで6種のみそ汁を用意し、具材の有無を選び、2種までブレンドできる。おかずみそと一緒に味わうご飯は、焼おむすびと茶碗盛りから選べる。セット900円〜。
■10時〜18時30分(食事は11時〜15時、土・日曜、祝日は〜16時)/無休/総武線亀戸駅から徒歩3分/TEL03-3685-6111
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年6月号)
(Web掲載:2024年6月29日)