絶景の「水庭」のオーベルジュに泊まる 那須 無垢の音【オンリーワンの宿】
木漏れ日の中に広がる緑と水面のコントラストが美しい「水庭」。奥の築山からは全景を一望できる 写真/那須 無垢の音
那須の自然を五感で感じる「水庭」
人気の避暑地として多くの人でにぎわう那須高原の森に2024年4月、アートと自然が調和したオーベルジュ「那須 無垢の音」(むくのね)がオープンした。
3万5000平方メートルを超える広大な敷地に、無垢の木材が贅沢(ぜいたく)に使われた1棟貸しのスイートヴィラ14棟が点在し、テラスへ続く大きな窓からは四季折々の那須の風景を眺める。
「無垢の音」のシンボル「水庭」は、建築家・石上純也さんが手がけたアートビオトープ(※)だ。かつて水田だった土地に、160の人工池と318本のコナラやブナの木々、自然石を配置し、新しいランドスケープを作り上げた。
※アート(芸術)+ビオトープ(生命の暮らす場所)を組み合わせた言葉。
「緻密(ちみつ)な計算を基に設計した庭です。この景観を作るために、全ての池を地下パイプでつなぎ、渓流の水を巡らせました」と石上さんは話す。
本来、多数の小さな池と落葉広葉樹の林が織りなす「水庭」の環境は、自然界ではありえない。それなのに、どこか懐かしい里山の情景を感じるのはなぜだろう。
「昔の人は深い森を開拓し水田にしました。今、池に水を引き込む水門はその時のもの。木や石、苔(こけ)も元からこの地にある素材を使っています」
そう話す石上さんがモザイクのように丹念に配した樹木や石は、月日を重ねることで、ゆっくりと那須の自然と同化していくのだろう。
前身の「アートビオトープ」は2017年に開業し、「水庭」が19年にクールジャパンアワードを受賞。建築家の坂茂(ばんしげる)さんが設計したスイートヴィラとともに人気の宿泊施設だったが、23年一度クローズし、24年リニューアルオープンした。
林間の道を歩くと、頬をなでる風が心地良い。枝に止まる小鳥や水際で跳ねるカエルを見つけ、思わず歓声を上げる。アートビオトープと呼ばれていた理由がわかる気がする。
散策後の夕食は那須高原の四季の食材を生かしたフレンチコース。翌日の朝食は高原野菜のサラダや新鮮なミルクを、レストランの大きな窓の向こうに広がる豊かな自然とともに楽しめる。チェックアウトの11時まで、那須高原にゆっくりと流れる時間を堪能したい。
7月には、朝食のみのカジュアルツインタイプでより手軽な価格の「B&B」がオープンする予定。
文・写真/阪口 克ほか
立ち寄りたい観光施設
N's YARD(エヌズ ヤード)
現代美術アーティストの奈良美智(よしとも)さんの個人美術館で、絵画や立体作品、個人コレクションのレコード、オブジェなどを展示する。館内にはカフェやオリジナルグッズを販売するショップもある。
■10時〜16時30分/火・水曜休/1500円/東北線黒磯駅からバス15分、青木別荘前下車徒歩7分/東北道那須ICから9キロ/那須塩原市青木28-3/TEL0287-73-5711
那須 無垢の音
TEL:0287-73-8122
宿泊料金:1泊2食6万500円~
客室数:14棟
住所:那須町高久乙道上2294-3
交通:東北新幹線那須塩原駅から送迎30分(要予約)/東北道那須ICから10キロ
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年6月号)
(Web掲載:2024年7月22日)