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新型やくもで山陰へ 民芸三昧と庭園巡り(1)~山陰線ほか~【フリーきっぷであの駅へ】

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新型やくもで山陰へ 民芸三昧と庭園巡り(1)~山陰線ほか~【フリーきっぷであの駅へ】

デザインと乗り心地の両方で新境地を開いた新型やくも。岡山駅と出雲市駅を約3時間で結び、全席指定

 

山陰のんびりパスで5510円お得!大阪発2泊3日

出雲を称(たた)えた枕詞「八雲立つ」。その神秘的な響きを冠した特急やくもは、岡山駅から出雲神話の国への直行列車として国鉄時代から親しまれている。今春、新型車両が誕生したというので初乗りの旅に出た。

岡山駅のホームに現れた真新しい車両は、宍道湖(しんじこ)の夕日などに例えられる通り、輝くようなブロンズ色。レールの上を滑るように進む、なめらかな動きも優美だ。

乗り心地には、もっと驚いた。カーブにさしかかった時、遠心力で体に負荷のかかるような嫌な感覚がないのだ。乗り物酔いしやすい私にとって、これほど疲労感の少ない鉄道旅はなかなかない。JRのサイトによると、新開発の振り子方式を採用したことで乗り物酔い評価指数が最大23%改善されたとか。車内で食べる駅弁の味までおいしく感じられた。

やくも限定グッズのどら焼きとコーヒー

今回は「山陰のんびりパス」というデジタルきっぷも初体験。4500円で3日間も広範囲を周遊できるのは大きい。さらに沿線施設の特典も付いている。その一つ、庭と抹茶が割引料金で楽しめる松江の明々(めいめい)庵に立ち寄った。

明々庵は、松江城の近くにある「不昧(ふまい)公好み」の茶室。不昧公は大名茶人として知られた殿様で、松江に茶の湯の文化を広めた。「その影響で松江の人は1日2回、箸間(はしま<お茶の時間>)を愉(たの)しむ習慣がある」と、支配人の森山俊男さん。

不昧公の影響を受けた庭は「出雲流」とされ、平庭の枯山水に飛び石を配し、露地として散策できるところが特徴だ。森山さんは、「高い剪定(せんてい)技術も不可欠です。中央の松は盆栽仕立てで、小ぶりに見えて樹齢は100年以上」と話す。

  

【明々庵】

「不昧公」の名で知られる松江藩7代松平治郷(はるさと)ゆかりの茶室。茶室を囲む庭園はもちろん、抹茶(410円)や不昧公好みの銘菓が楽しめる。
■8時30分〜18時10分(抹茶9時50分〜16時30分)※季節により異なる/無休/410円/山陰線松江駅からバス11分、塩見縄手下車徒歩6分/TEL:0852-21-9863
※公式サイトはこちら

島根は器も魅力的。不昧公好みの茶碗(わん)から日用品や瓦、柳宗悦(むねよし)の民芸運動に共鳴し生まれたものもある。

松江から2駅の玉造温泉駅前にある湯町窯は、柳やバーナード・リーチらが度々訪れた窯元だ。リーチが伝えた英国古陶の装飾、器の付け根から生えているように作るハンドル付け、地の土・釉薬(ゆうやく)を生かす大切さなど「作陶の技と心」を受け継いでいるという。ぽってりと丸みのある器が多く、見ていると心も円くなる。

  

【湯町窯】

1922年開窯。来待(きまち)石の釉薬と白化粧土で作り出す飴(あめ)色・黄色のスリップウェアで知られ、代表作のエッグベーカーはたまごが絶妙な半熟に、また濃厚な味わいに焼けると評判。ほか、海鼠(なまこ)釉を使った器も魅力的。
■8時〜17時(土・日曜、祝日は9時〜)/年末年始休/山陰線玉造温泉駅からすぐ/TEL:0852-62-0726
※詳しくはこちら

絶品!この駅弁

  

かに寿し [出雲市駅]◉1585円
甘酢味のベニズワイガニむき身と錦糸玉子などをのせたちらしずし。出雲市駅に隣接した土産物売り場で販売。

使ったのはこのきっぷ

  

山陰のんびりパス ◉4500円

携帯端末を使うデジタルチケット。鳥取県〜島根県の自由周遊区間のJR線(普通列車・普通車自由席)が3日間乗り降り自由。別に特急券を買えば、特急列車や観光列車も利用できる。観光施設4か所の特典付き。発売は利用日の1か月前から当日まで。
■期間:2025年4月2日までの全日(発売は3月31日まで)
■利用方法:携帯端末に「tabiwa by WESTER」のアプリをダウンロードし、インターネットでチケット購入。利用初日に同アプリで利用開始の操作を行い、オンライン状態のチケット画面を駅員に見せて使う。自動改札は利用不可
■特典①石見銀山龍源寺間歩(大田市)=入場50円引き ②明々庵(松江市)=入館+抹茶セット320円引き+明々庵オリジナル缶バッジ進呈 ③とっとり花回廊(南部町)=園内ショップの土産10%割引 ④中国庭園 燕趙園(湯梨浜町)=オリジナルポストカード進呈 
■問い合わせ:WESTERサービス総合ダイヤルTEL:0570-00-8999

  

●モデルコースは2024年5月15日現在の時刻表を基に作成しました。掲載している路線名は主なものです。
●「~円お得」は、モデルコースを通常の鉄道運賃・料金で回った場合と、お得きっぷを使った場合との差額です。
●施設の営業時間は、最終入館やラストオーダーがある場合は、その時間を記しています。

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年7月号)
(Web掲載:2024年8月23日)


Writer

はるのいづみ さん

「どこにあるん?」日本のへそ兵庫県西脇市生まれ。旅ライターとしては難儀な乗り物酔い体質。もっぱら近場を掘り下げ取材し、歴史文化、民俗風習などを通して無名の先人たちの姿を追う。イラストマップ製作、機関紙・冊子編集、広告デザインなども行う。

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