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新型やくもで山陰へ 民芸三昧と庭園巡り(2)~山陰線ほか~【フリーきっぷであの駅へ】

場所
新型やくもで山陰へ 民芸三昧と庭園巡り(2)~山陰線ほか~【フリーきっぷであの駅へ】

オレンジ、黄、白、シルバーなどいろんな車両がガタゴトと海岸線を走る山陰線(三保三隅-折居駅間、写真/松尾 諭)

 

鈍行列車に乗って日本海沿いを出雲から益田へ

新型やくもで山陰へ 民芸三昧と庭園巡り(1)~山陰線ほか~【フリーきっぷであの駅へ】から続く

西出雲駅近くの出雲民藝館でリーチの手ほどきを受けた出西(しゅっさい)窯の作品にも出合った。「型」を使った直線的なデザインでまた違った魅力がある。赤瓦と同じ釉薬で作る石見(いわみ)の水がめ、河井寛次郎が絶賛した黒瓦の技法を使った大津の火鉢など、時間を忘れて見入っていると、列車に乗り遅れそうになった。

【出雲民藝館】

出雲の豪農、山本家の米蔵などを改修し1974年開館。江戸末期〜昭和初期のものを中心に、陶磁器、藍(あい)染め、木綿絣(がすり)、木工品などを展示している。売店では近代の民芸品を販売。
■10時〜16時30分/火曜(祝日の場合は翌平日)休、年末年始休/山陰線西出雲駅から徒歩11分/TEL:0853-22-6397
※公式サイトはこちら

 

次の目的地は石州宮内窯。各駅停車で1時間半、敬川(うやがわ)駅で降りると容赦ない海風の洗礼を受けてよろめいた。私と違って石見焼は風雨や塩分にめっぽう強く、水がめや瓦が有名。宮内窯ではすり鉢や蓋壺(ふたつぼ)などのキッチンウェアも評判だ。「毎日使ってほしいから、手になじむ使いやすいものを」。そんな作り手の思いが飽きのこないデザインにも表れている。

駅前で石州名物敬川饅頭(まんじゅう)の店に寄り、各駅停車でさらに西へ。車窓から山陰らしい赤瓦の家並みと日本海を眺めながら益田駅へ向かった。

石州瓦の赤屋根の向こうに青い海。夏の山陰線といえばこの景色!

【石州宮内窯】

石見地方で1970年から続く窯元。耐水性の高い地元の土を生かした作品は、はんど(水がめ)から、目片口、スパイスボールなどのキッチンウェアまで。伝統工芸士が指導する陶芸体験も人気(要予約)。
■8時〜17時/不定休/山陰線敬川駅から徒歩14分/TEL:0855-53-0304
※公式サイトはこちら

 

3日目は朝から雪舟の庭を巡る。ここ益田市には室町時代の画聖の代表作が二つもあるのだ。駅からバスで10分の医光寺には、鶴池に亀島を浮かべた吉祥の庭がある。裏山の斜面がすぐ前に迫っているのでツツジの刈り込みやシダレザクラの枝との距離が近く、自然の中に抱かれて一体となったような感覚に。

【医光寺】

臨済宗東福寺派。元は1363年創建の天台宗寺院崇観寺の塔頭(たっちゅう)で、1478年頃に崇観寺5代住職として入山した雪舟が山水庭(国史跡および名勝)を残す。
■8時30分〜17時30分(冬季は〜17時)/1月〜2月休/500円/山陰線益田駅からバス10分、医光寺前下車すぐ/TEL:0856-22-1668
※詳しくはこちら

 

医光寺から徒歩9分の萬福寺には、須弥山(しゅみせん)世界を表した芝生と石組みがゆったりと広がり対照的。自然と肩の力も抜けて、深く静かに呼吸も整う。今から545年前、雪舟はこの庭にいた。60歳の頃だという。

【萬福寺】

平安時代創建の時宗道場。1374年、国人領主の益田氏が現在地へ移し菩提(ぼだい)寺に定めた。国史跡および名勝の雪舟庭園、国重要文化財の鎌倉様式本堂、鎌倉期「二河白道(にがびゃくどう)図」などが伝わる。
■8時30分〜17時/無休/500円/山陰線益田駅からバス8分、折戸下車徒歩6分/TEL:0856-22-0302
※公式サイトはこちら

 

帰りは出雲市駅からあめつちに乗車。限定カップの煎(せん)茶やコーヒーを味わい、宍道湖や大山(だいせん)を眺め、山陰最古の駅舎「御来屋(みくりや)駅」などで一時停車。車内で山陰の工芸品を見たり、おみくじや記念スタンプも楽しめ、鳥取駅までの4時間があっという間だった。 

出雲大社を模した北口玄関に風格が漂う出雲市駅
  

【あめつち】

[出雲市―鳥取駅]指定席グリーン券1990円(乗車券込みは4630円)。山陰の自然や歴史文化を五感で楽しむための観光列車。出雲市-鳥取駅区間のほか、この春から米子-出雲横田駅、鳥取-城崎温泉駅も運行がスタート。週末を中心に各線区を1日1往復する。

  
  

使ったのはこのきっぷ

山陰のんびりパス ◉4500円

携帯端末を使うデジタルチケット。鳥取県〜島根県の自由周遊区間のJR線(普通列車・普通車自由席)が3日間乗り降り自由。別に特急券を買えば、特急列車や観光列車も利用できる。観光施設4か所の特典付き。発売は利用日の1か月前から当日まで。
■期間:2025年4月2日までの全日(発売は3月31日まで)
■利用方法:携帯端末に「tabiwa by WESTER」のアプリをダウンロードし、インターネットでチケット購入。利用初日に同アプリで利用開始の操作を行い、オンライン状態のチケット画面を駅員に見せて使う。自動改札は利用不可
■特典①石見銀山龍源寺間歩(大田市)=入場50円引き ②明々庵(松江市)=入館+抹茶セット320円引き+明々庵オリジナル缶バッジ進呈 ③とっとり花回廊(南部町)=園内ショップの土産10%割引 ④中国庭園 燕趙園(湯梨浜町)=オリジナルポストカード進呈 
■問い合わせ:WESTERサービス総合ダイヤルTEL:0570-00-8999

 

文・写真/はるのいづみ


●モデルコースは2024年5月15日現在の時刻表を基に作成しました。掲載している路線名は主なものです。
●「~円お得」は、モデルコースを通常の鉄道運賃・料金で回った場合と、お得きっぷを使った場合との差額です。
●施設の営業時間は、最終入館やラストオーダーがある場合は、その時間を記しています。

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年7月号)
(Web掲載:2024年8月24日


Writer

はるのいづみ さん

「どこにあるん?」日本のへそ兵庫県西脇市生まれ。旅ライターとしては難儀な乗り物酔い体質。もっぱら近場を掘り下げ取材し、歴史文化、民俗風習などを通して無名の先人たちの姿を追う。イラストマップ製作、機関紙・冊子編集、広告デザインなども行う。

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