馬と生きる北の大地へ 日高・十勝を鉄道とバスで巡る(1)【フリーきっぷであの駅へ】
旧広尾駅はジェイ・アール北海道バスと十勝バスのバス停として利用されている。黄色いスイセンが青空に映える
日勝半島物語きっぷで4840円お得!札幌発2泊3日
北海道の日高・十勝地方は歴史的に馬との結びつきが深い地域だ。開拓期の労働力として苦労を共にした農耕馬は、後に「ばんえい競馬」に発展。明治時代に御料牧場(宮内庁直轄の牧場)が置かれた日高地方は、日本一の馬産地へと成長。ここで生まれた名馬は枚挙にいとまがない。
日高・十勝に根付く馬の文化に触れるなら、JR線とバスでこのエリアを周遊する「日勝(にっしょう)半島物語きっぷ」が便利だ。まずは札幌駅から苫小牧駅まで千歳線に乗り、苫小牧駅前からは高速バス「特急とまも号」で、一気に優駿の里・静内を目指そう。
苫小牧駅前から乗車したバスは、日高自動車道をひた走る。鵡川(むかわ)ICを通過すると、道路の両側に緑豊かな牧場が広がり始めた。道路のすぐそばでのんびりと草を食(は)む馬や、春に生まれたとおぼしき子馬が母馬の後をついて歩く姿が見える。行き交う車の中に「競走馬輸送中」と書かれたトラックを見かけ、日高にやって来たという実感が湧いてきた。
日高厚賀(あつが)ICを出て、右手に広がる太平洋を眺めていると、国道沿いに線路が見えてきた。かつて苫小牧―様似(さまに)駅間を結んでいたJR日高線の廃線跡だ。
日高線は2015年の高波被害により鵡川―様似駅間が不通となり、21年に同区間が廃止された。海岸すれすれに線路が敷かれていた跡もあり、当時はオーシャンビューの鉄道旅が楽しめたことだろう。廃線は寂しいが、太平洋と廃線跡を眺めながらの移動はバス旅ならではの楽しみとも言える。
新冠(にいかっぷ)の牧場風景を後に太平洋沿岸を進むと、この日の宿がある静内(新ひだか町)の街が見えてきた。競走馬のせり市も開かれる静内は、馬産地・日高の中心地だ。町内の小学校では乗馬や馬産業に親しむ授業があり、静内農業高校では全国の高校で唯一、競走馬の生産が行われている。町営施設「ライディングヒルズ静内」で旅行者も気軽に馬と触れ合えると聞き、体験乗馬にチャレンジ。馬の温かい背中に揺られるひとときは、旅の思い出となった。
文/佐々木美和 写真/川村 勲
馬と生きる北の大地へ 日高・十勝を鉄道とバスで巡る(2)【フリーきっぷであの駅へ】へ続く(8/12公開)
立ち寄りたい施設やお店
馬との触れ合いや乗馬による情操教育などを目的とする社会教育施設。体験乗馬や厩舎(きゅうしゃ)見学なども可能。
■10時〜16時30分(乗馬受付は〜16時)/月曜(祝日の場合は翌日)休、年末年始休/体験乗馬660円/観光情報センターぽっぽからタクシーで約5分/TEL0146-42-1131
苫小牧名物「ホッキカレー」や1500円のコスパに驚く「マルトマ丼」が人気の行列店。バスの乗り換え時間に立ち寄るのもいい。
■5時〜14時/日曜、祝日休/千歳線苫小牧駅からタクシー8分/TEL0144-36-2023
使ったのはこのきっぷ
日勝半島物語きっぷ ◉9600円
日高・十勝エリアをJR線とバスで周遊できる。札幌―苫小牧は千歳線、札幌―帯広は千歳線・石勝(せきしょう)線経由。新得―新夕張で乗降の場合は特急利用可。帯広―広尾は十勝バス、広尾―静内はジェイ・アール北海道バスに片方向のみ乗降フリー。えりも・静内―苫小牧は高速バス「特急とまも号」を利用できる。4日間有効。
■期間:11月24日まで(発売は11月21日まで)
■問い合わせ:JR北海道電話案内センターTEL011-222-7111
■バスに関する問い合わせ:ジェイ・アール北海道バス様似営業所TEL0146-36-3432、十勝バス本社TEL0155-37-6500
●モデルコースは2024年5月15日現在の時刻表を基に作成しました。掲載している路線名は主なものです。
●「~円お得」は、モデルコースを通常の鉄道運賃・料金で回った場合と、お得きっぷを使った場合との差額です。
●施設の営業時間は、最終入館やラストオーダーがある場合は、その時間を記しています。
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年7月号)
(Web掲載:2024年8月11日)