たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【世界の絶景遺産】ロンドン塔 中世からの英国王家の歴史を伝える宮殿・要塞(イギリス)

場所
【世界の絶景遺産】ロンドン塔 中世からの英国王家の歴史を伝える宮殿・要塞(イギリス)

テムズ川越しに眺めるロンドン塔の「ホワイト・タワー」

 

ロンドンを守るための要塞が始まり

ロンドン・アイ近くの船着場からテムズ川の水上バスに乗ると、左手に美しい城塞が見えてくる。イギリスの華麗な歴史と悲劇を伝える場所として名高い、ロンドン塔である。

ロンドン塔の歴史は11世紀にさかのぼる。ウィリアム1世がイングランドを征服しノルマン朝を開くと、この地にロンドンを守るための要塞、高さ27メートルの「ホワイト・タワー」を建設したのが始まりだ。

歴代国王は「ホワイト・タワー」を宮殿として使用した。周辺には武器庫や宝物庫、天文台、造幣局、動物園なども建設された。そのため、ロンドン塔は、たんなる要塞や宮殿にとどまらない、多様な役割を持つようになっていく。

13世紀頃からは監獄、処刑場としても使われるようになり、王族や王妃といった要人の悲劇の場となった。こうした歴史的経緯から、ロンドン塔には血塗られたイメージもある。

現在のロンドン塔は、二重の城壁と空堀に囲まれた複合建築物である。面積は約7万平方メートル。空堀を渡り、分厚い城壁を抜けて入城すると、中世ヨーロッパのような景観が広がる。

城内は、おもに最内郭、内郭、外郭の3区画で構成されていて、最内郭にそびえたつのが「ホワイト・タワー」である。2階には王族の結婚式も行われたというセント・ジョン礼拝堂があり、ノルマン様式の内装が荘厳だ。

石灰岩の切り石を積み上げて造られた「ホワイト・タワー」。かつては外壁に白漆喰が塗られていたと伝わる
石造りで重厚なロンドン塔の城壁
中世にタイムスリップしたようなロンドン塔の内部

世界最大級のダイヤモンドを展示する「ジュエル・ハウス」

「ホワイト・タワー」を囲う内郭は現在、博物館などになっている。なかでも「ジュエル・ハウス」に展示されている宝物は、ロンドン塔の最大の見どころだ。2868個のダイヤモンドが散りばめられた「国王冠」。また、世界最大の530カラットのダイヤモンド「偉大なアフリカの星」も名高い。ただし、肝心の宝物の前は「動く歩道」になっていて、立ち止まることはできず、写真撮影も不可である。

ロンドン塔はカラスでも有名である。「カラスがいなくなるとロンドン塔が崩れ、ロンドン塔を失うとイギリスが滅びる」という予言があり、ロンドン塔では、ワタリガラスが飼育されている。6羽の飼育が義務づけられていて、実際にはそれより少し多い数が飼育されているようである。

ロンドン塔は監獄のイメージが強いが、中世ヨーロッパの要塞建築を現在に伝える歴史的建造物として貴重だ。夏目漱石は留学時代に訪れ、「倫敦塔の歴史は英国の歴史を煎じ詰めたものである」(『倫敦塔』)と評した。収蔵されている宝物も超一級品で、ロンドンを訪れたら、ぜひ立ち寄りたい歴史遺産だろう。

文・写真/鎌倉 淳

「ホワイト・タワー」の2階にあるセント・ジョン礼拝堂
ロンドン塔の宮殿の王座も見学できる

【旅のインフォメーション】

ロンドン塔は、イギリスの首都ロンドンにある。ロンドンへは羽田から日本航空、全日空、英国航空の直行便があり、片道14時間程度。市中心部からやや東にあり、ロンドン市内の地下鉄サークルラインとディストリクトラインのタワーヒル駅からすぐ。

(Web公開:2024年8月28日)


Writer

鎌倉淳 さん

1969年、東京都生まれ。旅行総合研究所タビリス代表。放送局記者を経て、世界の観光エリアや航空・鉄道に関する取材を続けている。著書に「死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡」(洋泉社)など

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています