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太平洋を見晴らす絶景の駅舎と芸術の秋の五浦海岸を訪ねる 常磐線・水郡線(2)【鉄道ひとり旅】

場所
> 大津町、日立市、水戸市、大子町
太平洋を見晴らす絶景の駅舎と芸術の秋の五浦海岸を訪ねる 常磐線・水郡線(2)【鉄道ひとり旅】

岡倉天心が「観瀾(かんらん)亭」と名付けた六角堂。ベンガラ色が海辺に映える。「たびよみリポーター」の大原陽子さんは「ほかにはない六角形のユニークな建物。津波で流されて大変でしたが、すぐに再建されて本当によかったですね」とじっくり見入っていた

 

海から山へ 茨城の秋を味わう

太平洋を見晴らす絶景の駅舎と芸術の秋の五浦海岸を訪ねる 常磐線・水郡線(1)【鉄道ひとり旅】から続く

隣接地には、天心が実際に生活した場としては国内で唯一現存する天心邸や、天心が思索にふけった六角堂、往年の姿を残す長屋門などの「天心遺跡」が残る。海辺の岩壁に立つ六角堂は、2011年の東日本大震災の津波で流されたが、一般から寄付金を募り、翌年には創建当時の姿で再建された。

五浦海岸は「日本の渚100選」とともに、「日本の音風景100選」にも名を連ねている。大海を渡ってきた波が岩礁や断崖にたたきつけられる音が、絶え間なく響き渡る。六角堂に一人たたずみ、天心は波と対話していたのかもしれない。

大原さんは「美しい海で何時間でもぼーっと眺めていたくなりました。海辺のアトリエは違う世界が見えてきて創作がはかどりそうですね」と、天心たちの活動に思いをはせていた。

創作活動の拠点にもなった天心邸。古い料亭を買い取り、自ら設計し地元の大工に施工させたという
五浦岬公園から見渡した五浦海岸の遠景。中央の海辺に立つのが六角堂
六角堂からの帰りの散策路で、五浦海岸の景色を眺める大原さん。「海岸の風景も波の音もとても美しくて、心が癒されました」
帰りも大津港駅から常磐線に乗る。「駅舎の雰囲気がよいので、待ち時間も退屈しません」と大原さん

五浦の海を満喫したら、翌日は山の絶景を観賞したい。茨城の秋といえば、大子(だいご)町の袋田の滝の紅葉が代表格だろう。

その前に、水戸市の千波湖(せんばこ)畔にある茨城県近代美術館に寄り道したい。ここにも、水戸市出身の横山大観をはじめとする天心門下生たちの作品が収められており、随時、所蔵作品展「日本の近代美術と茨城の作家たち」(次回は11月1日~12月21日)が開かれている。近くにある偕楽園のもみじ谷は紅葉の名所としても知られる。

菱田春草「五浦ノ月」(茨城県近代美術館所蔵)
建築家・吉村順三が設計した茨城県近代美術館

水郡線は1時間に1~2本というローカル線。車窓には田園や里山ののどかな風景が広がる。今年は全線開通して90周年にあたり、12月にかけて沿線の自治体や駅で様々なイベントが催される。

袋田の滝は日本三名瀑の一つとされ、高さ120メートル、幅73メートル。11月中旬〜下旬には周辺のカエデ、モミジ、クヌギ、ナラなどが赤や黄に色付く。2か所の観瀑台が設けられており、違った角度から滝と紅葉を楽しめる。時間があれば、大子町内の日帰り温泉に寄るのもいい。海と山の美景を堪能し、「よい景色をたくさん見られて目も心もリフレッシュできました」と満足そうな大原さん。充実のひとり旅になったようだ。

文/山脇幸二 写真/齋藤雄輝 ヘアメイク/依田陽子

紅葉に包まれる袋田の滝(写真/大子町)
滝を間近に見られる観瀑台(写真/大子町)
  

 


天心邸、六角堂(茨城大学五浦美術文化研究所)

■8時30分~16時30分(季節により異なる)/月曜(祝日の場合は翌日)休/400円/TEL0293-46-0766

茨城県近代美術館(水戸駅)

1947年に大洗町に開館し、56年に水戸市に移転。岡倉天心の下、五浦で活動した横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山をはじめ、茨城県にゆかりのある作家や、日本の近現代美術の作品など約4300点を所蔵・展示する。
■9時30分~16時30分/月曜(祝日の場合は翌日)休、年末年始休/360円/常磐線水戸駅から徒歩20分/TEL029-243-5111

袋田の滝(袋田駅)

久慈川の支流、滝川に流れる国の名勝。4段にわたって流れ落ちることから「四度(よど)の滝」とも呼ばれる。10月~25年1月にはライトアップイベントを開催し、滝や紅葉が鮮やかに浮かび上がる。
■8時~18時(季節により異なる)/無休/300円/水郡線袋田駅からバス10分、滝本下車徒歩10分/TEL0295-72-4036(袋田観瀑施設管理事務所)

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2024年11月号)
(Web掲載:2024年10月●●日)