全国制覇を成し遂げた達人が語る「道の駅の楽しみ方」
本格的なクライミング体験ができる「越前おおの 荒島の郷」
プロフィール
吉田泰生(よしだやすお)
福岡県在住。2006年から道の駅の全国制覇を目指し、旅の様子をブログ「全国の“道の駅”完全制覇の夢!」で発信し続ける。14年に全国制覇を達成し、その後も増えた道の駅を巡りつつ現在は1200か所以上を訪問。
全駅制覇を成し遂げた達人・吉田泰生さんに「道の駅の楽しみ方」と「最近のトレンド」、さらに「好きな道の駅5 選」を教えてもらった。道の駅がもっと楽しくなる!
道の駅は第3ステージへ
1993(平成5)年に全国103駅でスタートした道の駅は、それから30余年経過した現在(2024年7月)では1213駅に拡大し、施設やサービスも大きく進化して道の駅そのものが旅の目的地となってきた。
当初行政が全国に道の駅を展開した目的は、道路(ロードサイド)に休憩所を設けて交通事故を減らすことだった。24時間使えるトイレと休憩所、それに買い物や食事ができる施設が必要条件の、いわゆるドライブインのような形態でスタートしたが、これを第1ステージとすると、道の駅が旅の目的地となり始めた13年頃から第2ステージに入った。
国土交通省によると、現在は第3ステージであり、「道の駅」を世界ブランドにすることや、防災拠点のネットワークとして活用するなどの方向で取り組んでいるという。例えば、東南アジアでは複数の「MICHINOEKI」がすでに開業している。
道の駅では、産直市場での買い物やレストランでの食事が楽しめる。日帰り温泉を併設する道の駅も全国に約160所あり、これも道の駅の魅力の一つ。さらに近年はアトラクションや体験施設が充実している。例えば、新潟県の「ながおか花火館」には映像や音響で長岡花火を追体験できるドーム型シアターがある。福井県の「越前おおの 荒島の郷」には広場にクライミング用の人工の岩峰が作られ、クライマーたちが練習している。
道の駅を巡る旅を楽しむ
私は06年に道の駅巡りを始めて7年半ほどで全国の道の駅を制覇した。と言っても、道の駅は毎年いくつも新設されるから、それ以降は新しい道の駅を中心に回っている。おのずと全国の隅々まで出かけることになり、観光旅行では行かない場所もたくさん見てきた。
私流の道の駅巡りの楽しみ方は、まずはドライブ途中や道の駅で「絶景」に出合って写真に撮ること。北海道の最果ての岬から沖縄のやんばるの森まで日本中の色々な「絶景」に出合った。道の駅巡りを理由に、知らない土地を見て回るのも旅の醍醐味(だいごみ)だ。
道の駅スタンプを集めるのも楽しい。全国9ブロックの道の駅連絡会がそれぞれスタンプブックを販売しており(250円~500円)、各エリアすべての道の駅のスタンプを集めると、「完走証明書(認定証)」がもらえる。9ブロック分をそろえて全国道の駅連絡会事務局に送ると、さらに「スタンプラリー制覇認定証」と記念ステッカーがもらえる。
また道の駅によってはオリジナルグッズを作っているところもあり、記念きっぷ、マグネット、カードの収集も楽しい。道の駅カードは全部集めると都道府県あるいはブロックごとのコンプリートカードがもらえる。私は北海道の道の駅マグネットを集めていたことがあり、現地へ行かなければ買えない貴重な記念品として、今も家の冷蔵庫に貼っている。
道の駅のトレンド
最近、道の駅を回っていて感じるトレンドが三つある。一つ目は「泊まれる道の駅」。その代表格、米国資本の「フェアフィールド・バイ・マリオット」は、「道の駅プロジェクト」と称して隣接地にマリオットホテルを建設し、すでに全国30施設近くが稼働している。食事は道の駅の利用を想定しているため、ホテル内にレストランがないのも特徴だ。
道の駅に気軽に泊まれる施設としては「RX(ア ールブイ)パーク」も見逃せない。駐車場での車中泊を禁止している道の駅もあるが、近年は電源を備えた駐車スペース「RVパーク」を設置して積極的に受け入れる施設も増えている。「RVパーク」併設の道の駅は30か所以上ある。
二つ目は「キッズコーナーの充実」。新しい道の駅はキッズコーナーを備えるところが多く、家族連れの集客につながっている。富山県の「KOKO(ここ)くろべ」は屋外のプレイエリアが特に広く、ふわふわドームに子どもたちの歓声が響いていた。
三つ目が「地域の防災拠点」としての機能。新しい道の駅の多くが防災倉庫を設け、緊急時の備蓄、電源を備えている。現在広域的な防災拠点機能を持つ道の駅として、国交省が全国39か所の「防災道の駅」を選定している。このように宿泊機能や交流機能、防災機能が強化された道の駅は、地域にとってさらに重要な場所になっている。
道の駅の楽しみ方は人それぞれで、気に入った道の駅に何度も行くのもいいし、各地の道の駅を訪問してそれぞれの個性を楽しんでもいい。ぜひ自分なりの道の駅の楽しみ方を見つけてほしい。
文・写真/吉田泰生
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出展:「旅行読売」2024年9月号)
(Web掲載:2024年10月14日)