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【ご飯のおとも】ひととき庵 ごろっと旨辣 焼鯖

場所
> 牡鹿郡女川町
【ご飯のおとも】ひととき庵 ごろっと旨辣 焼鯖

2024年4月に発売開始。開封しなければ、製造から常温で1年保存できる

 

海の恵みに震災の経験生かす

蓋を開けるとラー油に浸(つ)かったサバが思いのほか大ぶりで期待が膨らむ。熱々のご飯にのせ、すぐさまパクリ。脂のりの良い焼きサバと、辛くて旨(うま)みのある絶妙な味付けがピタリと合って、ご飯との相性も抜群だ。

この焼きサバの瓶詰めを作っているのは水産会社・鮮冷(せんれい)。女川(おながわ)の魚市場からすぐの所に本社工場を構えている。

本社工場の目の前が海。近くに女川魚市場や道の駅おながわなどがある
本社工場は2016年に竣工。高度衛生規格FSSC22000を取得

三陸の金華山沖は親潮と黒潮が出合う潮目にあたり、世界三大漁場の一つだ。女川は魚種の豊富な「前浜もの」の恵みで栄え、牡蠣(かき)、ホタテ、銀鮭などの養殖業も盛んだ。

鮮冷は女川で長年水産業に携わる石森商店と岡清(おかせい)が2013年に設立。石森商店は鮮魚の冷蔵冷凍事業、岡清は鮮魚の販売や加工を担ってきた。両社とも11年の東日本大震災では甚大な被害を受けた。震災当時、石森商店では浸水を免れた冷凍庫にあった魚を避難所に配ったものの、避難所では調理する術がなかったため、廃棄するしかなく、歯がゆい思いをしたという。

「震災の経験から、常温で長期間保存ができ、火を使わなくてもすぐにおいしく食べることができる製品作りをしています」と品質管理室室長の内海晃一さん。日頃から手軽に魚を食べることができ、いざという時の備えにもなる商品だ。

サバは金華山沖でとれたものを中心に使用。目の前の魚市場に水揚げされるので、鮮度も折り紙付きだ。新鮮なうちに冷凍し、製造時に鮮度を保ったまま下処理しカット。香ばしく焼いて調味し、手作業で丁寧に瓶詰めされる。

香ばしく焼いて味を付けたサバを瓶詰めにする。重さを計りながら手作業で瓶に詰め、唐辛子や旨みを出すニンニクなどを合わせた「旨辣」を加え、調味液を入れる
細胞を壊さないCAS(キャス)凍結技術と、トンネルフリーザーを世界で初めて組み合わせた設備で、解凍時のドリップを少なくし、旨みを保つ。この日はホタテ貝柱を冷凍していた

サバはこれまで定番の醬油(しょうゆ)や味噌(みそ)味の煮付けのほか、カレーのシリーズではタイ風のグリーンカレーにも商品化されてきた。どれも長く保存でき、トレーのまま温めて食べることができる。「旨辣」の瓶詰めには当初、ホタテに白羽の矢が立ったが、素材の味がしっかりしていて、多くの人に好まれる焼きサバの方が、ラー油との相性が良いと判断し選ばれた。

最も苦労したのは味付けだ。「辛いだけでは飽きてしまいます。旨いと辛いを両立し、繰り返し食べたい味になるまで約1年半かかりました」と商品開発室の鈴木まやさん。キムチや食べるラー油など、辛い食べ物の試食を重ねておいしさの秘密を探ったり、ターゲット層に近いスタッフに意見を聞いたりしながら、目指す味にたどり着いたという。

ゴロッと存在感のある「旨辣」味のサバは、そうめんや冷や奴と合わせても、手軽に栄養が取れてご馳走(ちそう)感が増す。これからの季節、鍋料理の薬味にするのもおすすめだそうだ。

文/堀内志保 写真/堀内 孝

そうめんつゆにたれとともにプラス。「旨辣」味の焼きサバがそうめんとよく絡む

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ひととき庵 ごろっと旨辣 焼鯖 780円

鮮冷
女川町市場通り8
TEL:0225-25-5100
オンラインショップのほか、道の駅おながわ内「お魚いちば おかせい」(女川町)などで販売。

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年11月号)
(Web掲載:2024年10月28日)


Writer

堀内志保 さん

埼玉県生まれ。1999年から2年あまり社会人類学の調査でアフリカ大陸の沖に浮かぶマダガスカル島に滞在。『マダガスカルを知るための62章』(明石書店)では、市場と割礼祭の章を担当した。2003年から宮城県に住み、写真家の夫とともに東北各地の自然や歴史、食、温泉、手仕事などに触れ、新聞や雑誌に記事やエッセイを発表している。

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