【中井精也のゆる鉄写真館】名松線比津駅
秘境駅で見つけた、秘密の花園
3月下旬、名松(めいしょう)線の秘境駅である比津(ひつ)駅で出会ったのは、
可憐(かれん)に咲き誇るミツマタの花。
その枝が必ず三つに分かれることが
名前の由来であるミツマタの樹皮は
繊維質が強いため和紙の原料に適しており、
なんと紙幣の原料としても使われているそうです。
農家の方の話では、過疎化や後継者不足により
ミツマタの生産量は激減。
こちらでも収穫のためでなく、
名松線の乗客の目を楽しませるために
残しているそうです。
かわいい花もお札の原料と聞いたとたん、
断然ゴージャスに見えるミツマタの花。
道路からは見えず、列車からしか見えないこの場所は、
秘密の花園のように輝いていました。
文・写真/中井精也
1967年、東京生まれ。鉄道写真家。独自の視点で鉄道を撮影し、『ゆる鉄』など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。甘党。著書・写真集に「1日1鉄!」(インプレス)など。2015年講談社出版文化賞・写真賞受賞。
(出典:「旅行読売」2024年3月号)
(Web掲載:2024年11月22日)