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【紅葉の秘湯】足元から湧く湯の恵みを実感 福島・二岐温泉 大丸あすなろ荘(1)

場所
> 天栄村
【紅葉の秘湯】足元から湧く湯の恵みを実感 福島・二岐温泉 大丸あすなろ荘(1)

男性用の渓流露天風呂。目の前に渓流が流れている(写真/藤田聡)

 

現在の主人が50代目になる老舗「大丸あすなろ荘」

新白河駅からレンタカーで1時間弱。目当ての二岐(ふたまた)温泉 大丸(だいまる)あすなろ荘は、二岐山のふもとの天栄村、標高800メートルの渓谷沿いに立つ。

二岐温泉はつげ義春の漫画『二岐渓谷』の舞台にもなった秘境の温泉として知られる。中でも大丸あすなろ荘は、現在の主人で50代目になる老舗。足元から自噴する名物の岩風呂は、平安中期の政権争いに敗れた落人によって発見されたという伝説もある。はるか昔からこんこんと湧き出る湯につかり、人里離れた温泉でのんびりしたかった。

宿の駐車場から緩い坂を上ると、木々に覆われた山門が見えた。のれんをくぐり、玄関までの小径(こみち)には、裏山から植え替えた30種余りのモミジが並び、山奥の宿とは思えない風情にあふれている。玄関とフロント、ロビーが最上階の3階、客室が2階、内湯が1階にある造り。1階から建物の外に出てさらに石段を下りた中庭に、自噴泉岩風呂、女性と男性の露天風呂が点在する。

風情ある入り口の山門も紅葉に彩られる。現在は茅葺きではない(写真/藤田聡)
最上階の3階の眺めのいいロビー
広々とした10畳客室。窓際のテーブルは季節により掘りごたつになる

まずは自噴泉岩風呂のある小屋をのぞいてみた。ここは時間制で男女を入れ替えて利用する。

石垣に囲まれた岩の湯船の底はでこぼこして、数か所に大きな丸い穴があいている。聞けば、昔は川が蛇行して流れており、川床だった場所を天然の湯船として利用しているとのこと。丸い穴は、小石が水の中を転がってできた甌穴(おうけつ)だという。湯船に体を沈めると、岩盤の割れ目からしみ出る温かな湯が心地いい。これが温泉の恵みかと、湯の表面に浮かぶ小さな気泡をしみじみ眺めた。

建物を出ると、自噴泉岩風呂の湯小屋がある(写真/藤田聡)
湯船の岩の亀裂から湯が湧き出る自噴泉岩風呂

pH値が高い女性用の子宝露天風呂は、さらに森に分け入った渓流沿いにある。直径3メートルくらいの小さな湯船だが、その先には広大な自然の森が広がる。渓流の音が耳にやさしく、大自然のど真ん中にいるような爽快感に包まれる。風呂を取り囲むように茂る木々が風に揺れ、木漏(こもれ)日がキラキラ光っている。自然に癒やされるというのはこういうことだろうか……。心も体もゆるゆると解放されていくようだ。

露天風呂へ続く道がある中庭も自然豊か

広々とした客室の窓を開けると、聞こえるのは渓流の音と鳥のさえずりだけ。食事処でいただく夕食には、メインの麓山高原豚(はやまこうげんとん)をはじめ、山菜や川魚など、地の食材を中心に、10品以上もの料理が並ぶ。山の味を堪能した。

品数豊富で豪華な夕食。季節により食材は異なり、メインの麓山高原豚の陶板焼きは寒い時期は鍋料理で提供

文/高崎真規子 写真/三川ゆき江ほか

【紅葉の秘湯】足元から湧く湯の恵みを実感 福島・二岐温泉 大丸あすなろ荘(2)へ続く(11/20公開)


 

大丸あすなろ荘

🍁紅葉の見頃:10月中旬~下旬
TEL:0248-84-2311
住所:天栄村湯本字二俣5
客室:全20室
温泉:カルシウム―硫酸塩泉

1泊2食料金(1人分):
2人1室利用 平日2万2150円~・休前日2万3250円~
1人1室利用 平日2万3250円~・休前日2万4350円~(通年可)
日帰り入浴:11時~14時30分/不定休/1000円

交通:東北新幹線新白河駅から天栄村の観光協会運営バス「湯ったりヤーコン号」1時間30分(900円、要予約)、終点下車すぐ/東北道白河ICから40キロ

※料金などは掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年10月号)
(Web掲載:2024年11月19日)

 


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

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