錦秋の白濁湯に身を沈める 新潟・燕温泉 ホテル花文【紅葉の秘湯】
白い濁り湯に周囲の紅葉が映える。露天風呂は一つで基本的に女性専用だが、朝7時〜9時は男性専用になる(冬季は閉鎖)
標高約1180メートルに湧く燕温泉は妙高山の登山口
新潟県南西部に位置し、日本百名山の一つの妙高山(標高2454メートル)の東麓に広がる妙高高原温泉郷には、赤倉、新赤倉、池の平、杉野沢、妙高、関、燕の七つの湯が点在している。以前、妙高高原温泉郷を訪れたとき、新緑の美しさに目を奪われ、紅葉のシーズンもさぞかし見事だろうと思ったことがある。
標高約1180メートルに湧く燕温泉は妙高山の登山口にあたり、登山客やハイカーも訪れる。かつては冬の間、雪に閉ざされていた秘境で、現在は5軒の温泉宿が並ぶ。温泉街の入り口に立つホテル花文(はなぶん)は眺望、温泉、料理ともに定評がある湯宿。湯船に古木を使用した内湯も風情たっぷりだ。露天風呂と内湯では紅葉の名所、大田切(おおたぎり)渓谷を眺めながら湯浴みが楽しめる。渓谷ではヤマモミジやヤマカエデ、ブナ、ミズキ、ハンノキなどの木々が深い谷に赤や黄色の彩りを添える。
湯の花が舞う白い濁り湯は、全国的にも珍しい炭酸泉。源泉を加水、加温、循環せずにかけ流す。さらりとした湯は肌に優しく、神経痛、冷え性、リウマチなどに適応するという。まるで鮮やかなパッチワークのような景色と良質の温泉に、心身ともに癒やされる。
料理は地元の旬の食材を使い、これからの季節はキノコ料理が楽しみだ。また、秋といえば新そばの季節。リピーターの心をつかんでいるのが、江戸時代から作られてきた希少な妙高在来のそば粉を使った手打ちの十割そばだ。割り下から手間暇かけて作ったこだわりのつゆとともに味わう手打ちそばは、喉越しよく、香り高い。
紅葉の魅力は宿だけにとどまらない。紅葉を愛(め)でながら燕温泉にある2か所の無料野天風呂も巡ろう。温泉街から徒歩圏内に、黄金(おうごん)の湯と河原の湯(注)が湯けむりを上げている。また、黄金の湯の近くに展望台があり、山肌から約80メートルにわたり流れ落ちる惣(そう)滝が見える。
(注)河原の湯は取材時はリニューアル工事中。9月頃に再開の予定。
[黄金の湯、河原の湯]
燕温泉の名物野天風呂。黄金の湯は男女別で周囲にブナが多く、その名の通り黄葉がきれい。山の中に湧く河原の湯は混浴だが、脱衣場は男女別になっている。紅葉に包まれながら野趣あふれる造りの湯船につかれる。
■日の出~日没/冬季閉鎖/無料/えちごトキめき鉄道関山駅からバス30分、燕温泉下車徒歩10分〜15分/上信越道妙高高原ICから15キロの燕温泉街の駐車場に車を止め、徒歩10分~15分/TEL0255-86-3911(妙高高原観光案内所)
妙高高原エリアにある紅葉スポットのいもり池や苗名(なえな)滝へも足を延ばしてみたい。周囲約600メートルのいもり池の畔(ほとり)には、遊歩道が整備されていて歩きやすい。水量豊富な苗名滝は、およそ55メートルの高さから豪快に流れ落ち、地響きを感じることから「地震滝」とも呼ばれる。ホテルを拠点に、妙高高原の錦秋の息吹を満喫しよう。
文/荒井浩幸
TEL:0255-82-3136
住所:妙高市関山6087
客室:全25室
温泉:含硫黄―ナトリウム・カルシウム―炭酸水素塩・塩化物泉
■1泊2食料金(1人分)※今後、料金変更の予定。
2人1室利用 平日1万4450円~・休前日1万5550円~
1人1室利用 平日1万5550円~・休前日1万6650円~(通年可)
日帰り入浴:11時~17時/男性(内湯)600円、女性(露天風呂)700円
交通:えちごトキめき鉄道関山駅からバス30分、燕温泉下車すぐ/上信越道妙高高原ICから15キロ
※料金などは掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年10月号)
(Web掲載:2024年9月27日)