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【車窓に春風🌸お花見列車】震災を乗り越えたローカル線、変わらぬ桜の景色で前向きに「のと鉄道」七尾~穴水

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 石川県
> 穴水町、七尾市など
見頃
4月中旬
【車窓に春風🌸お花見列車】震災を乗り越えたローカル線、変わらぬ桜の景色で前向きに「のと鉄道」七尾~穴水

能登鹿島駅の前には七尾湾の景色が広がる(写真/東井豊記)

2024年4月6日に全線で運転を再開した「のと鉄道」

いつもと同じ場所で同じ桜を見る。そんな当たり前の時間が、かけがえのないものになることもある。

2024年元日に発生した能登半島地震は、能登地方に甚大な被害をもたらした。七尾駅と穴水駅を結ぶのと鉄道も、土砂崩れで線路が埋もれ、レールや施設に多数の被害が生じた。過疎化が進む地域のローカル線の先行きを案じた人も多かっただろう。だが、懸命な復旧工事の末に、4月6日に全線で運転を再開。当時、道路はまだ渋滞が続いており、住民の足として待ち望まれた鉄路の復活だった。

ちょうどその頃、桜の名所として知られる能登鹿島駅の桜が花を咲かせた。「能登さくら駅」の愛称を持ち、ホーム両側を中心に約100本のソメイヨシノが見事な桜並木を作る。24年も、運行再開を聞いて県外や地元から大勢の花見客が訪れた。

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満開の桜でにぎわう2024年4月の能登鹿島駅(写真/東井豊記)

のと鉄道の東井豊(とういとよき)さんは、駅に集まってきた人々の穏やかな笑顔が強く印象に残っているという。「当時は楽しいイベントが何もなく、地元・奥能登の皆さんも大変な生活が続いていました。桜を見ている間は、そんな日常を忘れられたのかもしれません」と振り返る。

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のと鉄道の東井さん(写真/出口由紀)

桜も運転再開を祝って開花した

地元住民らで桜の世話を続ける能登鹿島駅さくら保存会会長の堂前(どうまえ)勇次郎さんは「桜も運転再開を祝って開花した感じがした」と話す。能登鹿島駅には、旧国鉄七尾線として開業した1932年当時に植えられた老木も残っている。その樹齢でも花をつける姿に毎年感動するそうだが、昨年は「今年も咲いてくれてありがとう」という思いが一層強く込み上げた。

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能登鹿島駅さくら保存会会長の堂前さん(写真/出口由紀)

のと鉄道の坂本藍(あい)さんは、沿線に咲く桜などの花の写真を毎年撮影している。震災で失われ、変わってしまった日常。そんな中でも変わらずに花が咲く景色を見て、安心できたと話す。「花のお陰で、自分も頑張ろうと前向きになれた」と言う。地震発生当日はアテンダントとして観光列車に乗っていた坂本さん。今年も4月6日から運行する「震災語り部観光列車」に乗務し、語り部として自身の体験を伝えていく。

のと鉄道では、能登鹿島駅だけでなく、八つの駅全てに桜が植えられている。地震から1年が巡り、またいつもと同じように花開く。今年はその大切さに思いを馳(は)せながら、のと鉄道の桜を見に行きたいと思った。

文/出口由紀

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西岸(にしぎし)駅近くを走るのと鉄道(写真/坂本藍)

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西岸駅の近くの菜の花畑。沿線の各所で、地域住民が植えた四季折々の花が咲く(写真/坂本藍)

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能登中島駅のホームへ続く小道も花びらでピンク色に染まる(写真/坂本藍)

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笠師保(かさしほ)駅の桜(写真/坂本藍)


問い合わせ:のと鉄道TEL:0768-52-0900

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年4月号)
(Web掲載:2025年4月15日)


Writer

出口由紀 さん

美味しいものには目がないライター。その土地の空気の中で味わう新鮮な特産品や郷土料理は、旅ならではの醍醐味だと思っている。最近感動したのは、生でかじった北海道の白いトウモロコシと夏の日本海の岩ガキ。土地それぞれの言葉を聞くのも好きで、一期一会の出会いと会話を楽しみながら旅をする。

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