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【旅する喫茶店】可否屋 葡瑠満(弘前)

場所
> 弘前市
【旅する喫茶店】可否屋 葡瑠満(弘前)

カウンターは可否券(15 枚1万円)の利用者だけが座れる常連席。店主の宮本孝紀さんはお客さんの印象でカップを選ぶ


高級カップで妥協なき一杯を味わう

江戸期の天守が残る弘前城(弘前公園)の外濠沿いに店は立つ。玄関から奥へ進むと、右側には一枚板のカウンター。奥の棚には白磁のカップと皿が整然と並び、ネクタイ姿の店主が無駄のない動きでコーヒーを淹(い)れていく。すべてが優雅で、店全体が「そう急がず、ひと休みしては」と語りかけてくるようだ。

創業は1979年。それまで店主の宮本孝紀さんは東京で写真の勉強をしながら喫茶店を手伝っていた。その際、商売のおもしろさを知り、何より店で使用していた大倉陶園の美しいカップに惚(ほ)れ込んだ。

「父親の求めで弘前に戻るのですが、それならば、お気に入りのカップでこだわりの一杯を提供する喫茶店をやろうと決心しました」と宮本さん。

横浜市に本社のある大倉陶園は皇室や一流ホテルで使用される高級洋食器メーカーで、すべての食器がそろうまで1年半も待ったそうだ。現在、棚に並ぶカップは200客ほど。生産終了になった貴重な品も多い。

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2010 年に現在地へ移転した

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移転時にカウンターや飾り棚、照明を運び入れ、前店舗の雰囲気に付近けた。壁には宮本さんが撮影した写真を展示

コーヒーは注文を受けてから豆を挽(ひ)き、1杯ずつペーパーフィルターで抽出する。店主イチオシの「ぶれんど可否ふれんち」は豆を粗挽きにして1杯に30グラムを使う。通常の3倍の量というから何とも贅沢(ぜいたく)だ。

宮本さんとの話が弾み、最後のひと口がすっかり冷めてしまった。グイッと飲み干すとこれがまた旨(うま)い!これこそ〝本物の証〞である。

文・写真/内田晃

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「ぶれんど可否 ふれんち」800円は苦味に慣れた二口目から味の奥行きがよく分かる。濃厚でほどよい酸味の「ちぃずけえき500円」と合う

可否屋 葡瑠満(かうひいや ぶるまん)

住所:青森県弘前市下白銀町17-39
TEL:0172-35-9928
営業:10時~L.O.16時30分/毎週月曜と第2・4 火曜休
交通:奥羽線弘前駅からバス7 分、文化センター下車徒歩2 分

※記載内容は掲載時のデータです。営業時間、料金は変更になる場合があります。

(出典:「旅行読売」2024年12月号)
(Web掲載:2025年4月26日)


Writer

内田晃 さん

東京都足立区出身。自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。四国八十八ヵ所などの巡礼道、街道、路地など、歩き取材を得意とする。著書に『40代からの街道歩き《日光街道編》』『40代からの街道歩き《鎌倉街道編》』(ともに創英社/三省堂書店)がある。日本旅行記者クラブ会員

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