ブルーモーメントをゆく

夜明け前の
ブルーモーメント。
ようやく風景が見え始めると、
青い世界に浮かび上がった
千曲（ちくま）川の美しさに、
思わず息をのみました。
降りしきる牡丹雪のなか
黙々と走る列車はまるで、
松明（たいまつ）を灯しながら進む
孤独な旅人のよう。
毎日、人知れず繰り返される、
鉄道旅情にあふれた日常を、
命ある限り、写しとめていきたい。
強く、そう思いました。

文・写真／中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道写真家。独自の視点で鉄道を撮影し、『ゆる鉄』など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。甘党。著書・写真集に「1日1鉄！」（インプレス）など。2015年講談社出版文化賞・写真賞受賞。

（出典：「旅行読売」2024年8月号）
（Web掲載：2025年5月13日）