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旅よみ 俳壇 旅行読売2025年8月号

場所
旅よみ 俳壇 旅行読売2025年8月号

都電荒川線面影橋停留場付近は夜桜も美しい(写真/ピクスタ)


【特選】

花散るや面影橋を都電過ぐ
 ◉新宿区 居林まさを
<評>写生した俳句は季題とともに動かない確かな描写が新鮮である。この都電の場所は私も何回か足を運んだが、東京の昭和の香りをたくさん残している所。特に桜が散る頃は美しい景色である。面影橋という固有名詞もこの句になるとさらに風情があった。

【入賞】

漱石の墓埋(うず)めたる桜かな
 ◉大田区 豊島 仁
<評>漱石の墓は雑司ヶ谷霊園にあり、桜でも有名な墓所。この句のように花が埋めるくらい咲き誇るのである。やはり漱石が動かない。

三椏(みつまた)や雨の最中の鋏(はさみ)音
 ◉伊賀市 箱林允子
<評>花の季題は一年に数えきれないものがある。つまり俳句に大事な季題が動いてしまうからだ。この句は三椏が的確。

新緑の風新緑の沢歩き
 ◉練馬区 曽根新五郎
<評>季題の新緑を重ねて詠ったところもいかにこの新緑を強調しているかが分かる。下五も軽快さが出ていた。

春宵や時差で遅刻のファイヤーショー
 ◉杉並区 森 秀子
<評>どこかハワイ辺りの写生句か。海外に行くと何が起きるか分からない。やっと間に合ったファイヤーショーが楽しそうである。

【入選】

光さす千鳥ヶ淵に花筏(はないかだ)
 ◉さいたま市 竹内白熊
春雷や男体山を転げ落つ
 ◉足立区 山崎勝久
鶯(うぐいす)の声こだまする瑞泉寺
 ◉川崎市 柳内恵子
水牛は名前で呼ばれ島長閑(のどか)
 ◉横浜市 相沢恵美子
瀬戸の海向けて鞦韆(ぶらんこ)丘を蹴る
 ◉伊予市 福井恒博
歌謡史に残る灯台雲の峰
 ◉神奈川県中井町 笹尾雅美
ふるさとのやうに会津は花曇り
 ◉市川市 井田千明
津軽富士白く城址の桜かな
 ◉成田市 小川笙力
白南風(しろばえ)や離島の宿のカチャーシー
 ◉足立区 太田君江
風薫るカーステレオの音上げて
 ◉南魚沼市 堀口順子

【佳作】

登り切るシギリヤロックの風涼し
 ◉千葉県酒々井町 梅澤波葉
夏潮や丹後松島いろの濃き
 ◉京都市 福地秀雄
安達太良の山懐に鳥交じる
 ◉仙台市 平山北舟
菜の花の信濃暮れゆく匂ひかな
 ◉埼玉県吉見町 青木雄二
新緑の立山富山相想ひ
 ◉伊勢崎市 松島早苗
持ち帰る買い値の栗を拾いけり
 ◉行田市 根岸保
根津鳥居くぐる一閃夏燕
 ◉つくば市 有阪貴男
春からの大屋根リング発信よ
 ◉松山市 友澤恭子
修二会(しゅにえ)終え奈良路は正に光射す
 ◉仙台市 星良子
北東へ首振り地蔵花の昼
 ◉江東区 岩川富江


俳壇選者_星野先生400X400.jpg
<選者>「玉藻」主宰 星野 高士(ほしの たかし)
神奈川県出身。鎌倉虚子立子記念館館長。句集に『残響』『無尽蔵』『破魔矢』『渾沌』など。テレビ、ラジオでも活躍。

星野高士先生の総評
旅よみ俳壇と言っているので、写生句と同時に旅情のあるものもどんどん作っていただきたい。芭蕉のおくの細道もそんな旅俳句から生まれたものだ。それには日記ではなく一歩詩に近づいた作品がよい。今回もその旅と俳句が融合したものが多かったのは収穫であった。

星野高士先生のワンポイント俳句講座

「固有名詞や地名の効果的な使い方は?」
どうしても俳句は目先のもので作ることが多い。そこで、大事なのはこの問題。簡単に使ってしまいそうなので、気を付けてほしいところ。特に日本はその地名に歴史が加わっているので、俳句に適していれば大丈夫。富士山とか京都、鎌倉など挙げたらきりがない。ここでしかないという時こそ思い切り固有名詞、地名を使っていただきたいと思っている。


【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。

(出典:旅行読売2025年8月号)
(Web掲載:2025年6月30日)

※連載「旅よみ俳壇」トップページはこちら


Writer

たびよみ編集部 さん

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