旅よみ 俳壇 旅行読売2025年5月号

南国ムードが漂う沖縄の家並み(写真/ピクスタ)
【特選】
沖縄に住めと賀状の太き文字
◉三郷市 山田哲雄
<評>いまの日本は住みにくいと言われているが、沖縄は思い切りのいる場所。しかし、桜も早く咲くし、料理もおいしい。そんな賀状が来たとは楽しい作品。太き文字が強調されていて、新年らしさも出ていた。いい賀状であった。
【入賞】
リフト乗り富士の横から初日の出
◉川崎市 柳内恵子
<評>こんな豪華な初日の出は見てみたくなった。リフトと富士と初日の出は文句ない場所である。
島へ行く朧月夜(おぼろづきよ)の港かな
◉東京都新島村 曽根新五郎
<評>新島に居られる作者独特の作品であり、臨場感たっぷりである。下五の切れ字が利いている。
犬吠(いぬぼう)の海鳴り遠く寝正月
◉杉並区 森 秀子
<評>犬吠埼には虚子の句碑もあったりする俳句の聖地でもある。寝正月とはぜいたくな場面。しかし、海鳴りは聞こえているのであろう。
千年の寺一瞬の去年(こぞ)今年
◉成田市 小川笙力
<評>ともかく全部がつながっている作品。千と一、去年今年に数字に関わるところも楽しめた。
【入選】
みちのくや深雪(みゆき)の秘湯めぐる旅
◉さいたま市 竹内白熊
大木に逆さ蝙蝠(こうもり)十羽ほど
◉杉並区 白浜尚子
極寒の草津温泉顔湯かな
◉江東区 岩川富江
風船の空中散歩銀座行く
◉神奈川県中井町 笹尾雅美
仏法僧今年も来ます予約宿
◉神奈川県中井町 竹 和世
日脚伸ぶ箱根に残る石畳
◉富士市 佐野明美
宝船能登の港に現るる
◉大田区 豊島 仁
京菓子の暖簾(のれん)をくぐる春の風
◉大分市 市山幸江
数へ日の郵便受や旅雑誌
◉伊予市 福井恒博
鳶(とび)遊ぶ鎌倉山の初霞(はつかすみ)
◉新宿区 居林まさを
【佳作】
筑波山音なき夜は霧深く
◉つくば市 有阪貴男
峠一つ越ゆれば丹波雪催(ゆきもよい)
◉横浜市 今村千年
湯上がりの火照る体で雪見酒
◉埼玉県吉見町 青木雄二
屋根裏の冴えし木組や白川郷
◉川口市 鎌田純子
冬薔薇(ばら)ひとつ葉陰に旅の宿
◉江戸川区 岩井千恵子
篠笛の満つる境内淑気(しゅくき)かな
◉伊賀市 箱林允子
七草や縁起だるまの市が立つ
◉行田市 根岸保
寒天やライトアップの子規の像
◉千葉県酒々井町 梅澤波葉
薄氷(うすらい)や大沼小沼舟わたり
◉茨城県利根町 中澤則明
寒ブリに父の面影玄海路
◉北九州市 浦田壮彦
<選者>「玉藻」主宰 星野 高士(ほしの たかし)
神奈川県出身。鎌倉虚子立子記念館館長。句集に『残響』『無尽蔵』『破魔矢』『渾沌』など。テレビ、ラジオでも活躍。
星野高士先生の総評
やはり旅よみの俳句はその時の雰囲気が伝わってくる作品が面白いところ。だからと言って邪道なものはなく、皆さん有季定型。俳句の良し悪しは、その時の季題と言葉が大事。いいところを見ているのに表現がついて来なかった句があるのは少し残念。多作でいくことは改めて大事である。
星野高士先生のワンポイント俳句講座
「俳句のコツは?」
思ったことや見たことを五七五にするということから始めれば、心も人生も豊かになるのは間違いなし。段々と作っていくとそれこそ迷路に入る時もあるが、それを苦しいと思えることも大事な要素。私もほぼ毎日句会を重ねているが、いつ何ができるかわからないのが俳句の面白さ。たまには自分を壊して詠うことも大事である。俳句作りに終わりはない。また期待しています。
【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。
(出典:旅行読売2025年5月号)
(Web掲載:2025年3月28日)
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