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旅よみ 俳壇 旅行読売2025年3月号

場所
旅よみ 俳壇 旅行読売2025年3月号

松山城のまぶしい緑をバックに走る伊予鉄道の路面電車(写真/ピクスタ)

【特選】

万緑(ばんりょく)の中のトラムに乗りにけり
 ◉さいたま市 小林茜音
<評>夏の日差しを浴びて見渡す限りの木々の緑の中を走る路面電車。「トラム」がいいですね。路面電車は街の中を走りますが、「万緑」という大きな背景に生き生きとした旅の楽しさが伝わってきます。

【入賞】

窓曇る京城の夜の濁酒(だくしゅ)酌(く)む
 ◉新宿区 居林まさを
<評>新米を炊いて作る濁り酒は秋の季語です。その土地独特の情緒ある味がします。作者も遠い日の京城の夜を思い出し、また一献。

ファゴットを堀川に聴く秋の夕
 ◉相模原市 妹尾茂喜
<評>京都の堀川で聴く秋の夕べのコンサートでしょうか、低音で朗々としたファゴットの音色が、流れる水のようにいにしえの都に響く。

春疾風(はるはやて)あの人千の風になり
 ◉神奈川県中井町 竹 和世
<評>「春一番」の激しい南風に亡き人を思う。春を告げる明るさの一方で、何もかも攫(さら)われそうで心が不安定にざわつく春の風です。

秋風に湖面波立つ四万(しま)ブルー
 ◉埼玉県吉見町 青木雄二
<評>上信越道高原国立公園の奥四万湖の透明な湖面が映し出すコバルトブルーは、日本が誇る絶景とのこと。秋風が呼ぶ神秘の青。

【入選】

風花(かざばな)や立ち寄る蔵の金婚酒
 ◉つくば市 有阪貴男
晩秋の潮騒の中六角堂
 ◉江東区 岩川富江
春を待つ心臓音のアーカイブ
 ◉東京都中央区 豊澤佳弘
冬木立白馬の空の低きまま
 ◉さいたま市 竹内白熊
初時雨(しぐれ)女綱(めづな)ささゆれ濡れそぼち
 ◉横浜市 相沢恵美子
国東(くにさき)は仏の国や太刀(たち)の魚
 ◉足立区 山崎勝久
凩(こがらし)の姥捨(うばすて)山の声となり
 ◉練馬区 曽根新五郎
蘖(ひこばえ)や八幡宮の大銀杏(いちょう)
 ◉川崎市 柳内恵子
着衣して混浴可なり冬湯治
 ◉荒川区 大島章吾
上海便増えてをりしが神無月
 ◉松山市 友澤恭子

【佳作】

天高し旅人囲む誓子句碑      
 ◉伊賀市    箱林允子
かやぶきの民家に残る古電話    
 ◉桶川市    鈴木邦明
小春日の音楽堂でワーグナー    
 ◉高岡市    大川浩史
片手入れ競り落とされる河豚(ふぐ)の町 
 ◉青森市    山本覚
ツアーバスひとつ伸びして紅葉狩 
 ◉さいたま市 石井敏子
もののふの潜む鎌倉冬黄葉    
 ◉杉並区    森秀子
石蕗(つわぶき)咲いて常陸の磯の賑はへり  
 ◉成田市    小川笙力
秋の寺手すり磨きや老いの旅    
 ◉仙台市    星良子
家康公しのぶ足湯や冬浅し    
 ◉南魚沼市 堀口順子
桐下駄で結城の街をかっ歩する    
 ◉杉並区    岡崎誠


俳壇選者_対馬康子先生.jpg

<選者>「麦」会長 対馬康子(つしまやすこ)
香川県出身。「天為」最高顧問。現代俳句協会副会長。産経新聞俳壇選者。2015年文部科学大臣表彰。句集に『愛国』『純情』『竟鳴』など

対馬康子先生の総評
旅に出て俳句を作るときは、とにかく楽しむことをモットーにしています。難しいことをあれこれ考えずに、出会った風景に「こんにちは」と言いながらまず細かく書き留める。例えばその山や川がなんという名なのかは気にしませんが、それが詩として重要な働きをする地名ならば句の中に残すようにしています。

対馬康子先生のワンポイント俳句講座
「兼題とは何ですか?」
 複数の人が集まって俳句を出し合い、指導者の選を受けたり互いに選をして合評し合ったりする鍛錬の場を句会と言い、句会は俳句の基本であり醍醐味です。
 そこに提出する句は、その季節の季語が含まれていれば題材は作者の自由である「当季雑詠」のほかに、句会の日以前にあらかじめ決まっている題を「兼題」と言います。逆に当日に決めてその場で作句する題を「席題」と言います。
 「兼題」は季語で出される場合が多いですが、例えば「青」「走」「空」など漢字一字を句に詠み込んで作る題詠もあります。
 その言葉をいかに自分に引き寄せて発想するかが大切です。


【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。

(出典:旅行読売2025年3月号)
(Web掲載:2025年1月28日)

※連載「旅よみ俳壇」トップページはこちら

Writer

たびよみ編集部 さん

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