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旅よみ 俳壇 旅行読売2024年11月号

場所
旅よみ 俳壇 旅行読売2024年11月号

観光客でにぎわう鎌倉の小町通り(写真/ピクスタ)

【特選】

初蝉や小町通りをそれてすぐ
 ◉久喜市 梅田ひろし
<評>これは鎌倉の風景だということはよく伝わってきた。小町通りはインバウンドや各地の観光客で大にぎわい。しかし、少し外れるとまた違う鎌倉を味わえる。この作品もそこを見逃さずに捉えたところが妙。初蝉の勢いもあった。

【入賞】

戦時句の秘めたる想ひ解く夜長
 ◉江戸川区 一尾由紀子
<評>夜長になると本を読みたくなる。この句も戦時句のことを普段より興味深く読んだのであろう。夜長で止めたところも感じが出ていた。

那珂川へ遊行柳(ゆぎょうやなぎ)の風曲がる
 ◉川崎市 柳内恵子
<評>これは栃木の黒羽(くろばね)の辺り。芭蕉がおくの細道で一番長く居たところでも有名。まさに遊行柳が人を恋しがっていた。

戻り路(じ) は煤(すす)まみれなり富士火祭
 ◉横浜市 相沢恵美子
<評>富士吉田の火祭りは私も以前行ったが、道々に松明があり、今でも瞼に焼き付いている。本当に帰る頃の雰囲気が出ていた。

炎帝(えんてい)に打ち勝つ為ぞバーベキュー
 ◉杉並区 森 秀子
<評>炎帝はこの暑い夏を司っている神のこと。そんな時こそ、冷たいものではなく、野外でバーベキューに挑んだ。中7も利いていた。

【入選】

芸備(げいび)線ドア開く毎(ごと)蝉時雨(せみしぐれ)
 ◉伊予市 福井恒博
昆布干す浄土ヶ浜や津波の碑
 ◉仙台市 平山北舟
きざはしを宮へ宮へと汗の杖
 ◉伊賀市 藤下 恒
巴里(ぱり)祭や乾杯の酒ナポレオン
 ◉大田区 豊島 仁
夕暮のフェリー降り来る日焼の子
 ◉三郷市 山田哲雄
霊山に老鶯(ろうおう)の声透き通る
 ◉岡崎市 鈴木欣子
奥入瀬(おいらせ)の木洩(こも)れ日抜くる川蜻蛉(とんぼ)
 ◉新宿区 居林まさを
またひとつ月夜野(つきよの)町の恋蛍
 ◉練馬区 曽根新五郎
夏霧に濡るるも嬉し富士下山
 ◉成田市 小川笙力
涼しさや風を抜けをる大街道
 ◉松山市 友澤恭子

【佳作】

サロベツに佇む駅舎夏の空
 ◉さいたま市 竹内白熊
ベネチアの民家ドア開け青簾
 ◉杉並区 白浜尚子
ほうき草箱館山を紅く染め
 ◉長岡京市 西田 恵
梅雨空に旅行雑誌を手に余し
 ◉埼玉県吉見町 青木雄二
旅の空ぽんと弾けて鳳仙花
 ◉つくば市 有阪貴男
昼と夜銭形砂絵星まつり
 ◉江東区 岩川富江
金沢へ奈良の古仏夏の旅
 ◉高岡市 大川浩史
鳥帰る人影長き遺跡より
 ◉所沢市 木下富美子
籐椅子やすっぽり凭(もた)る旅の宿
 ◉市川市 島根正子
夏の日や五十年目の湖西線
 ◉京都市 松尾昌典


俳壇選者_星野先生400X400.jpg

<選者>「玉藻」主宰 星野 高士(ほしの たかし)
神奈川県出身。鎌倉虚子立子記念館館長。テレビ、ラジオでも活躍。句集に『残響』『無尽蔵』『破魔矢』『渾沌』など。

星野先生の総評
やはり旅の句は実体験が伴っているので、それなりの臨場感が伝わってきた。俳句の場合、地名や固有名詞をなるべく抑えて表現が出た方が想像力を膨らませられる。今号の皆様の作品からも楽しさと元気さをいただいた。季題(季語)が浮かんでくるものが重要だと改めて思う。


星野先生のワンポイント俳句講座
「切れ字とは何ですか?どのように使えばよいですか?」
いろんな俳句がある中でも、印象に残るものはなかなか作れない。もっとも作ろうと思ってもできないのが俳句。それは短い詩型の中で季題(季語)が字数をとるからでもある。そんな時こそ、切れ字をうまく使いたい。「や」「かな」「けり」は場面を長々連ねるのではなく、省略させて人に伝えられる。「や」はそこで時間を止めて整えてくれる。「かな」「けり」は詠嘆の意味もあるし、強調と完結も内包されている。芭蕉の「古池や」は有名だ。


【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。

(出典:旅行読売2024年11月号)
(Web掲載:2024年9月28日)

※連載「旅よみ俳壇」トップページはこちら

Writer

たびよみ編集部 さん

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