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【低山と温泉へ】低山フォトグラファーが選ぶ「絶景の低山」9選

【低山と温泉へ】低山フォトグラファーが選ぶ「絶景の低山」9選

低山から富士山を撮り続けている低山フォトグラファーの渡邉明博さんに、低山の魅力と関東のおすすめの山を聞きました。

上の写真、勝上嶽大平山(しょうじょうけんおおひらやま)<神奈川>標高159メートル
大平山は鎌倉市の最高峰で、勝上嶽を含めた鎌倉の尾根を歩く天園ハイキングコースを通称「鎌倉アルプス」とも呼ぶ。建長寺の裏山でもある勝上嶽展望台からは、藤沢の街を従えた富士山が大きく望める。鎌倉の歴史探訪を含めて歩けるのが魅力。近場の温泉は江ノ電稲村ヶ崎駅から歩ける稲村ヶ崎温泉など

気軽に登れる低山。休日、日帰りで低山へ!

冬の河口湖でワカサギ釣りをしていた時です。ふと見上げたら、雪をまとった富士山があまりにも美しくて魅了されました。それから南アルプスや北アルプスに登り、対峙(たいじ)するように富士山を望遠撮影するようになりました。

15年ほど前に転機がありました。年をとったら3000メートル級の山に登り続けるのは難しい、ならば登りやすい低山から富士山を撮ろうと思い立ち、1年半かけて高尾から大月までの全山を歩きました。高山に比べ四季の変化や空気の抜け感は少ないものの、低山からも美しい景色は撮れます。その時から日本唯一の「低山フォトグラファー」になりました。

「私の恋人は富士山」と、よく言います。関東1都8県に富士山が撮れる山は400近くあるとされ、そのうち100ほどに登りました。富士山を美しく表現するのが、私の仕事の最大の眼目。まず裾野(全身)はある程度入れたい。その上で手前に花を飾ったり、ドレス(雪)を着せたり、夏雲や星空を背景にしたり、どんなふうに装ってあげようか、天候や季節を読みながら考えるのです。

近年の低山ブームには私も驚いています。原因の一つはコロナ禍です。三密を回避する風潮がアウトドア志向を生みました。健康志向で山登りが注目されましたが、高山は山小屋に泊まる必要があり、山小屋の宿泊料高騰もあって、近場でお金をかけずに気軽に楽しめる低山にスポットが当たったのだと思います。

低山の良さは、まず下界に面しているので人の営みを身近に感じられるところ。街明かり、電車や車が走るのが眼下に見えます。また高山に比べ意外と長い間、四季の変化が感じられるのも良いところです。例えば、高山の紅葉はすぐ終わってしまいますが、低山なら10月下旬~12月上旬と比較的長い間楽しめます。そして何よりアプローチが楽です。関東の低山に登り、富士山の眺望を楽しんでください。

聞き手/福﨑圭介

弘法山<神奈川>標高235メートル

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三つの山を総称して弘法山(こうぼうやま)公園と呼び、春には園内に1400本の桜が咲く。権現山の展望台からは秦野市街と富士山が一望でき、弘法山の展望デッキからは江の島やスカイツリーが望め、低山ながら見所が満載。信仰の山でもある


ミツバ岳<神奈川>標高834メートル

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丹沢湖の北に位置し、山頂に群生するミツマタの花期(3月下旬~4月)は登山者でにぎわう。山名は、三つまたに分かれた枝の先に黄色い花を咲かせる花名から付いたと言われている。中川温泉が近い

鋸山<千葉>標高329メートル

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山頂付近に東京湾を一望できる展望台があり、晴れていれば伊豆大島まで見渡せる。東京湾越しの富士山は絶景。足元が切れ落ちた展望台「地獄のぞき」も魅力


浅間嶺<東京>標高903メートル

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浅間嶺(せんげんれい)は檜原(ひのはら)村の中央を横断する浅間尾根の途中に位置する。山頂展望台からは富士山や奥多摩の名峰大岳山(おおだけさん)が見られる。江戸時代は甲州中道と呼ばれる要路が通っていた。檜原温泉センター数馬(かずま)の湯が近い


岩殿山<山梨>標高634メートル

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大月駅に降り立つと頂上直下の鏡岩と呼ばれる露出した岩峰が見える。中腹の丸山公園は、桜の名所として市民に愛されている。山頂からは、眼下に市街地が見え、その奥に秀麗な富士山が望める。「駅からハイキング」の王道の低山


要害山<山梨>標高536メートル

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上野原市を代表する名山。要害山(ようがいさん)からコヤシロ山を経て尾続山(おつづくやま)に至る周遊コースが整備されている。春、山頂にはヤマツツジが咲き乱れる。丹沢の山並みや富士山の展望が素晴らしい。陣谷(じんや)温泉、さがみ湖温泉など相模湖周辺に日帰り温泉がある


仙元山<神奈川>標高118メートル

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仙元山(せんげんやま)はリゾート地で名高い三浦半島の葉山町に位置し、麓から山頂まで25分で登れる。山頂から葉山の街を眺め、4月と9月に富士山山頂に沈むダイヤモンド富士が相模湾越しに見られる。温泉は半島南部の「長井海の手公園 ソレイユの丘」へ


高尾山<東京>標高599メートル

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年間300万人、外国人も含めて多くのハイカーが訪れる。中腹にある髙尾山薬王院は常に参拝者が絶えないパワースポット。山頂に至るコースは多彩で、コースや季節を変えれば、そのたびに異なる山の表情に出合える

写真/渡邉明博


プロフィール写真01_0384_左右300.jpg

わたなべ・あきひろ
1957年、東京都生まれ。低山フォトグラファー。山岳写真ASA会長。低山から富士山を撮り続けている。著書に『2時間で楽しめる! 絶景の富士山展望ハイキング』(山と溪谷社)など。

(出典:旅行読売2025年6月号)
(Web掲載:2025年6月22日)


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