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【低山と温泉へ】登山ガイドに聞く 初めての低山Q&A

【低山と温泉へ】登山ガイドに聞く 初めての低山Q&A

岩櫃山の山頂からの眺め(写真/阪口 克)

低山歩きの楽しみやコツについて、日本山岳ガイド協会に所属する登山ガイド・美浦大介(ペンネーム)さんに聞きました。


Q:低山歩きの楽しみは何ですか?

 本格的な山岳登山や縦走と比較して、自宅からそう遠くない山々で、自然や絶景、温泉などに親しむことができます。
 おすすめの時期は、歩きやすい気候の3月~5月中旬と9月下旬~11月です。春は芽吹き始めた花々を愛めでることができますし、秋は紅葉を狙うのもいいでしょう。暑い盛夏と厳冬期は原則として避けましょう。

Q:注意点はありますか?

 まず自宅から2~3時間以内で行ける山を選ぶことです。疲れてもすぐに帰宅できます。また、携帯電話やスマートフォンの電波が入る山域をホームページで下調べしておくことも大事です。何かあった時に救急や家族に連絡が取りやすくなります。
 二つ目は、初心者は1人では出かけず、必ず友人や家族と出かけましょう。助け合うことができます。
 山歩きに慣れていないうちは、人が大勢歩いている山を選んで登ります。困ることがあったら、遠慮せずに助けを求めてください。意外に思われるかもしれませんが、標高599メートルの高尾山は遭難件数が日本一多い山です。低山でも深刻な事故が起きていることを忘れずに、低山歩きを楽しみましょう。

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Q:低山歩きの持ち物は?

 低山に限らず山歩きの〝三種の神器〟は「ザック(リュック)」「登山靴」「レインウェア」です。低山歩きから始めて本格的な登山を目指す方は、いずれも登山用の物を購入するとよいでしょう。
 「本格的な登山はちょっと……」という方は、登山靴だけでも入手してください。登山靴は木の根っこや舗装されていない山道を歩く時に、転倒を防ぎ、ケガから守ってくれます。また災害の時にも活躍してくれます。登山道具店で購入することになりますが、店員さんに最終的に行きたい山の名前を告げて選んでもらうのも手です。
 そのほかの持ち物は左の持ち物チェックリストを参照してください。

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Q:傘をさして歩いても良いですか?

 山道ではNGです。片手がふさがってしまい、転倒した時に体を守れません。雨天の際は、両手が使えるように、レインウェアを着用します。
 本格的な登山を目指す方は上下セパレートの物を用意してください。そうでない方は、コンビニなどで売っているビニールのレインウェアを準備してください。上下一体のポンチョ型のウェアは、風でめくれて視界をふさぐ恐れがあるので、避けるようにしましょう。

Q:ほかにあった方が良い持ち物は?

 ヘッドランプは必携です。下山に時間がかかり、山中で暗くなってしまった時に役に立ちます。山道には電灯がないことを忘れないでください。
 また、ストックがあると、バランスを取りやすく、転倒防止につながります。

Q:登山道の虫やヒル対策はありますか?

 まず服装ですが、夏でも半そでは避け、薄手の長そでシャツを着用してください。歩き始める前に市販の虫よけスプレーを塗布するのも効果的です。
 ヒルは落ち葉などに潜んでいて、人や動物が近づくと察知して靴などに張り付き、ズボンのすそから入り込み、皮膚に取り付き吸血します。ヒル対策としては、ズボンのすそを靴下の中に入れ、靴から足首まで覆う布「ゲイター」を着装します。さらに靴からズボン全体にヒルよけスプレーを噴霧しておきましょう。
 熊が心配な人は、市販の「熊鈴」をザックに付けておくと良いでしょう。

Q:触れるとかぶれる植物はありますか?

 ウルシなど触れると皮膚に炎症を起こす植物が、山野にはたくさんあります。登山ガイドは素手では植物に触りません。植物にはむやみに手で触らないことが賢明です。

Q:地図は必要ですか?

 必要です。まず準備段階で、どこに行くのか、どこを歩くのか計画を立てる際に必須です。また、山中でもできるだけ頻繁に地図を見て、自分がどこにいるのか確認するようにしましょう。
 山岳地図の定番は昭文社の「山と高原地図」シリーズで、全国の主な山地を網羅しています。大きな書店でも売っています。スマートフォンで使える電子版もあり、そちらでは自分のいる位置が地図上に表示されます。ただし、スマホの地図はバッテリー切れになると見ることができなくなります。充電用のモバイルバッテリーを用意するか、紙の地図も持ち合わせるようにしましょう。

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全国の主要な山岳をカバーする「山と高原地図」シリーズなど。スマートフォンの地図を利用する場合はバッテリー切れに注意

 高尾山や六甲山といった著名な山地であれば、ガイドブックもたくさん出版されています。それらを参考にして計画を立てましょう。
 また、トイレの位置を確認することも忘れずに。あらかじめトイレの場所がわかっていると、安心して歩けます。

文/美浦大介(ペンネーム、登山ガイド)


(出典:旅行読売2025年6月号)
(Web掲載:2025年6月27日)


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