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【ご当地スーパー】スーパーマーケット研究家が語る、ご当地スーパーの魅力とは?「不思議を求めて、ご当地スーパー」

【ご当地スーパー】スーパーマーケット研究家が語る、ご当地スーパーの魅力とは?「不思議を求めて、ご当地スーパー」

35年ほど前、「地元色」を感じた愛知県のご当地スーパーでは、「えびせん」だらけの棚が。せんべいと並んで案内板に表示されるほど

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プロフィール
菅原佳己(すがわら よしみ)

スーパーマーケット研究家。1965年生まれ、東京・上野出身。放送作家を経て専業主婦に。2012年、子育て中に書き上げたご当地スーパー本『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』が注目され、現職として活動を開始する。19年、「一般社団法人 全国ご当地スーパー協会」を設立し、「ご当地スーパーグランプリ」を主催。著書6冊、新聞や雑誌、テレビで幅広く活動している。

ご当地スーパーの現在地

昔は揚げ物が主役だったスーパーのお総菜売り場も、今では多くの野菜料理が並び、彩りも豊かになりました。その場でサラダを作ってライブ感を出したり、目の前の鉄板で卵焼きを作るなど音や香りで五感を刺激する売り場作りもトレンドです。

近年のトレンドにはもう一つ、「ご当地感」というキーワードがあります。例えば、昔も今も変わらず、総菜の売り上げNO.1メニューは「鶏の唐揚げ」ですが、各社「おいしい」だけでなく「ご当地感」も取り入れ、差別化を図っています。「地元ブランド肉『○○』を自家製塩麹(こうじ)に漬け、地元の老舗△△醤油(しょうゆ)で味付け」など、ご当地感満載の説明が書かれたPOP(ポップ)は、購買意欲を高める重要アイテム。都市部のスーパーのマネはできなくても、地元原料や地元伝統の味の価値を認め、こだわることで、ご当地スーパー人気を高めてきたのです。

セミが気になり研究家の道へ

さて、私の地元食との出合いの場は、35年前の愛知県。結婚して住んだ自宅そばのご当地スーパーでした。東京出身の私が、「せんべい売り場は海老(えび)せんだらけ。味噌(みそ)売り場は豆味噌で真っ黒」という風景を目の当たりにし、感じたのは「違和感」。のちに、その違和感の正体が「地元色」だと気づくことになります。

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種類豊富な豆味噌がいっぱい!の味噌売り場

やがて、子育てをする専業主婦から、スーパーマーケット研究家としてデビューすることになるのですが、そのきっかけとなった地元食の一つが、京都の「せみ餃子」でした。

関西地方のスーパーでは〝ド定番〟のチルド餃子。でも、わからないのが「せみ」という名前の由来。パッケージには蝉(せみ)の絵が描かれていて、「セミダブル」のセミではなく、「昆虫のセミ」なんだと確認はできました。今なら、ネット検索で即、わかるでしょうが、当時はメーカーに直接電話するしか方法がなく……。京都ことばで話す担当者が放った言葉は、「夏にセミがミンミン鳴きますやろ? うち、みんみん食品いいますねん」(※訛(なま)りはイメージです)。世の中で私だけが知る「地元色」の秘密を広く伝えたく、ご当地スーパーの本を出版したのが2012年。スーパーマーケット研究家の誕生となりました。

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関西ではおなじみの珉珉食品のせみ餃子

日常食との出合いを楽しむ

もちろん、そのずっと前から、旅好きの中には、ご当地グルメを楽しむ人たちがたくさんいました。私もその一人です。ただ、旅行先の豪華な食事や、土産店の並ぶ観光地での食べ歩きを楽しむ中で、なんとなく脳裏をよぎる「地元の人たちは、これ、食べてないよね?」との疑念。

そうです。地元の人が毎日食べる日常食と出合える場所こそが、「ご当地スーパー」です。旅行者が楽しむ地元グルメが少しよそ行きの顔だとすれば、スーパーで売られているのは素顔のまま。ときに、「え?これって本当に食べるの?」と躊躇(ちゅうちょ)するような地元食と出合うことがあります。

北海道の水ダコの産地・稚内(わっかない)のスーパーで売られていたのは、「たこささめ」なる不思議な物体。「風の谷のナウシカの王蟲(オーム)だ!」と気づくと、箸が進まなくなってしまいました。

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まるで王蟲!稚内のたこささめ

すでに茹(ゆ)でた状態で売られていて、地元の人の食べ方は「そのまま酢醤油や生姜(しょうが)醤油で」。実は水ダコの頭(実際は胴)に見える部分の内側上部両側に2個付いているエラだそうです。そう聞いて、安心して口にすると、まわりはホロホロ、ちょっぴりトロリ、中はタコらしい歯応えもあって、地元漁師が言う通り「タコ1匹を丸ごと口に入れた味」にびっくり。

47都道府県を3.5周し、買い物したスーパー1000軒、食べたご当地食4万食の研究家でも、初めての食と出合えるのが、ご当地スーパーなのです。さあ、旅先のご当地スーパーで未知なる体験をぜひ。

文・写真 菅原佳己

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(出典:「旅行読売」2025年6月号)
(Web掲載:2025年6月27日)


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