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【はじめてのひとり旅の宿】和泉屋旅館 <福島・湯岐温泉> おこもり宿で 温泉にひたる

場所
> 塙町
【はじめてのひとり旅の宿】和泉屋旅館 <福島・湯岐温泉> おこもり宿で 温泉にひたる

女性専用時間もある混浴の「鹿の湯」。大きな湯船のほうに奥の湯桝で自噴する鹿の湯源泉、小さな湯船には冬だけ加温した別源泉の「八幡の湯」をかけ流す

殿様も愛したぬる湯の名湯が神経をやさしくゆるめる

茨城県との県境に近い丘陵地に湧く湯岐温泉は、ぬる湯の名湯として知られる。前回うかがったのは夏。もちろんその時期もいいのだが、東日本大震災以降、源泉温度が2度ほど上がったそうで、むしろ冬場につかってみたいと思っていた。

佐竹藩、棚倉(たなあぐら)藩の藩主が御殿を建てて愛した湯で、2軒ある宿のうち和泉屋旅館は、その湯守の役職を拝命してきた宿である。少し大きな民家のようにも見える建物の扉を開けると、二人三脚で宿を切り盛りする20代目の大森栄正(えいしょう)さん、美保子さん夫妻が温かく迎えてくれた。

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20代目の大森栄正さんと美保子さん。藤田東湖が書き残した漢詩の前で

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湯岐のバス停から急坂を上ると見えてくる

ひとり泊専用の客室は3室。6畳間にこたつと、シモンズ社製のマットレスで寝床が準備されている。ぬる湯の効果とあいまってか、普段よりよく眠れたという声が多いそうだ。

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ひとり泊専用客室のうち2室は洗面・トイレ付き

源泉は2本あり、1本は鹿が傷を癒やしているのを発見したという室町時代の開湯伝説にまつわる貴重な自噴泉だ。まずはご主人にその源泉を見せてもらった。混浴「鹿の湯」内の湯桝の中がそれで、花崗岩(かこうがん)の割れ目からぷくぷくと湯玉を上げながら湧いているのが分かる。「かつてはここがお殿様専用の湯船だったようです」と栄正さんが説明した。

その湯がすぐそばの「鹿の湯」の大きな湯船に100%源泉かけ流しで絶え間なく注がれている。体温よりほのかに温かい約38度の湯は、冬場は永遠につかっていられると思えるほど快適。その横の小さな湯船は、加温した別源泉を注ぐ上がり湯だ。1時間ほどの長時間浴を1日5~7回繰り返すのが伝統の入浴法。むしろ湯上がりのほうがぽかぽかとして湯冷めしない。

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あとからボーリングしたもう一つの源泉が楽しめる男女別の「八幡の湯」

変わらぬ湯と変わらぬ風景

夫婦ふたりで仕入れから調理まで行う料理には、海にも近いため、メヒカリなどの旬の福島の海の幸も盛り込まれる。ひとりでも食事処の個室でとれるのはうれしい配慮だ。朝ごはんにプラス350円で選べる郡山市のブランド米「あさか舞」の釜炊きごはんの味も忘れがたい。

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ふきの煮物、小芋を丸ごと煮たものなど、酒呑み心をくすぐる料理が小皿に並ぶ

⑤5 和泉屋ステーキ.jpg
地元のはなわ牛のステーキはプラス1000円のプランで登場

⑨ 入れば 和泉屋食事処個室.jpg
食事はひとりでも広々とした個室を利用でき、人目が気にならない

江戸後期の1853年、水戸藩の学者の藤田東湖(とうこ)は療養のために約3週間ここで湯治した。滞在中に詠んだ漢詩には、「俗世間を離れた湯宿で、山里の家々から夕餉(ゆうげ)の支度(したく)の煙が立ち上るのを眺めた」などと綴(つづ)っている。現代のひとり旅にもどこか通じるような気がした。こんこんと自噴する湯も静かな環境も、今もそのままここにある。

文/野水綾乃

👜ご当地の名物和菓子

菓子司 陣野

⑩ ガイド上 陣野山ふぐ餅4.jpg

⑪ ガイド下 陣野外観.jpg

磐城塙(いわきはなわ)駅の駅前通りにある和菓子店の看板商品は、山ふぐ餅(通称こんにゃく餅)。こんにゃくの一大産地である町の名を広めようと作った銘菓で、もち米や寒天などで生み出したぷにぷにとした食感は赤ちゃんのほっぺのよう。こんにゃく餅にきなこをまぶした天領も人気。各108円。
■8時30分~18時30分(土・日曜、祝日は~17時)/不定休/水郡線磐城塙駅から徒歩3分/TEL:0247-43-1234


和泉屋旅館
TEL:0247-43-0170
住所:塙町湯岐湯岐17
【ひとり泊データ】
条件:通年可
客室:トイレ付き6畳和室など(全10室)
食事:夕・朝食=食事処の個室
<料金(税込)>
素泊まり 平日8350円~/休前日8850円~
1泊朝食 平日9350円~/休前日9850円~
1泊2食 平日1万4250円〜/休前日1万4750円〜
※2名1室利用は1泊2食1万3150円~
交通:水郡線磐城塙駅からバス30分(平日のみ運行)、湯岐下車徒歩2分/常磐道那珂ICから60キロ

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年3月号)
(Web掲載:2025年11月30日)


Writer

野水綾乃 さん

1973年、栃木県生まれ。温泉と旅のライター。現在も栃木を拠点に、県内はもちろん、全国の温泉地や食、民芸などの取材を行う。温泉ソムリエアンバサダー、温泉入浴指導員、日本旅のペンクラブ理事。

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