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【はじめてのひとり旅の宿】コラム 上手に宿を選んで、ひとり旅を楽しく!(温泉ジャーナリスト・植竹深雪)

【はじめてのひとり旅の宿】コラム 上手に宿を選んで、ひとり旅を楽しく!(温泉ジャーナリスト・植竹深雪)

イラスト/ピクスタ

ひとり旅に何を求めているかを明確に

はじめてのひとり旅は、やはり期待と不安が入り交じるものです。そんな時、選んだ宿の良し悪しが旅の印象を大きく左右します。そこで、まず大切なのは、自分がひとり旅に何を求めているかを明確にすることです。

「温泉で静かにゆっくり過ごしたい」「温泉宿に泊まって、夕食は地元の店で楽しみたい」「街歩きをとことん楽しみたい」など、自分にとっての優先事項をリストアップしてみましょう。そうすることで、秘湯風の宿なのか、温泉街にある泊食分離の宿なのか、街なかにある便利なホテルなのか、宿選びのポイントが定まります。

宿を決める前に公式サイトとSNSをしっかりチェックすることもおすすめしています。「ひとり泊プラン」を設定しているなど、ひとり客を歓迎する宿なのか判断したり、ひとり客のクチコミを参考にしたりするのも良いでしょう。

宿の規模にも注目です。初めてのひとり旅で選ぶなら、静かに過ごせて、自分のペースで気ままに楽しめる、10室以下の小さな宿がおすすめです。そういった宿は、適度なプライバシーが保たれていることが多く、過度に干渉されないためリラックスできます。貸切風呂が充実している宿も多く、人目を気にせず存分に湯あみを満喫できます。

食事付きで泊まる際、チェックしておきたいのが、食事をいただく場所です。コロナ禍以降は特に、食事もひとり旅に配慮して部屋食や個室で提供されることが多くなりました。食事もやはり人目を気にしなくて済む環境のほうがいいですよね。

また、宿のロケーションも重要です。最寄り駅から徒歩で行ける、新幹線駅から送迎があるなど、アクセスしやすいところもひとり旅初心者向きです。高速バスが便利な奥飛騨や新幹線で行きやすい長野や新潟、空港から近い熊本や鹿児島の温泉は、「アクセスしやすい秘湯」感もあり、おすすめです。

ひとり旅は自分自身と向き合う時間でもあります。初めての宿選びでは、安心感と居心地を重視しながらも、新しい発見があるような宿を選んでみてはいかがでしょうか。それがあなたのひとり旅をさらに特別なものにしてくれるはずです。

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私の心に残るひとり旅の宿

北海道東川町にある「ロッジ ヌタプカウシぺ(アイヌ語で大雪山の意)」が特に印象に残っています。登山と山菜が好きなオーナーさんが旭岳を訪れた際、たまたま源泉を発見し、今から40年ほど前、この地に開業。6月の大雪山の山開きから10月半ばくらいまでの期間限定営業の宿です。

ここを訪れたのは、まさにコロナ禍で疲れてしまった心と体を整えたいと思った時でした。ログハウスのような建物で心地よい静寂に包まれた館内は、こぢんまりとしていてひとり旅にぴったりの空間。この日は偶然にも私ひとりだけの宿泊で、温泉は完全に独占状態でした。男女どちらの湯にも自由に入らせていただき、ぜいたくなひとときを過ごしました。

温泉は、野趣あふれる野天風呂と男女別の内湯があります。源泉を3本所有し、量も豊富な硫酸塩泉の湯は、いつまでも入っていられるほど気持ちよく、心と体のコリやストレスがほぐれていくようでした。森の中の野天風呂では、日常の喧騒(けんそう)を忘れ、まるで時間が止まったような感覚に。何も考えずに温泉をじっくり堪能でき、この上ない幸せを感じました。

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ロッジ ヌタプカウシペの内湯(写真/著者提供)

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ロッジ ヌタプカウシペの外観(写真/著者提供)

こちらの湯宿でさらに感動したのは、気さくな女将(おかみ)さんの絶妙なおもてなしです。適度な距離感を保ちながらも、要所での心配りが感じられ、家庭的な雰囲気にほっとする瞬間が多々ありました。夕食には地元の食材をふんだんに使った手料理が並び、どれも心がこもった優しい味わい。心にもしみる、忘れられないお食事をいただきました。

「また必ず来たい」と思わせる魅力が詰まった温泉宿。多くのリピーターがいるのも納得です。ひとり旅のよさとは、自分だけの時間を存分に楽しむぜいたく。それを最大限に味わえる「ヌタプカウシぺ」、この湯宿で過ごしたひとときが今も忘れられずにいます。

まだまだある! おすすめのひとり旅の宿

森のスパリゾート 北海道ホテル <北海道・帯広温泉>
「モール温泉」が秀逸! ここでしか体験できない「モーリュ」(モール泉をサウナで使う)がおすすめ。おこもり美容にぴったり。帯広市西7条南19-1/TEL:0155-21-0001

栃尾又温泉 宝巌(ほうがん)堂 <新潟・栃尾又温泉>
体温ほどのぬる湯と、地元野菜を使ったこだわりの料理が魅力。静かな隠れ家で心と体を整え、心温まる時間を過ごせます。魚沼市上折立60乙/TEL:025-795-2216

ビジネスリゾートホテル休庵(きゅうあん) <大分・大分温泉>
ハイクラスなホテル仕様でコスパの良さに驚きました。客室に露天風呂があるほか、貸切風呂も自由に使えて、温泉三昧を楽しめます。大分市青崎2-3-20/TEL:097-523-0001

フォンタナの丘かもう <鹿児島・蒲生温泉>
客室のお風呂と大浴場で美人の湯をたっぷり堪能できます。夕食の無塩無糖料理のクオリティーにも感動しきりでした。姶良市蒲生町久末434 -1/TEL:0120-52-1218

文/植竹深雪


植竹さん1.jpg

うえたけ・みゆき
国内外の3600湯以上の湯につかり、1500泊以上宿泊した大の温泉好き。TBSラジオキャスター、岩手めんこいテレビの局アナ兼記者を経て、現在はフリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして活躍。温泉に関する資格も多数取得。著書に『おとなひとり温泉旅のススメ』(三笠書房)がある。

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※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2025年3月号)
(Web掲載:2025年11月21日)


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