【歩く旅】磁器生産の中心地として形成され、トンバイ塀など多彩な町並みが残る<有田>
焼き物の街ならではの風情があるトンバイ塀。塀によってさまざまな材料が使われ、これもアートだ
400年以上にわたって美を追求してきた「創造の道」
佐世保線上有田駅から西へ、有田駅方面へと続く道には、数えきれないくらいの陶磁器の工房や商店が立ち並ぶ。伝統の美があり、革新の美がある。400年以上にわたって美を追求してきた「創造の道」と言えるだろう。
今回は上有田駅を起点に4キロほどの散策を楽しんだ。まずは数々の工房や商店を見ながら西へ1キロほど歩き、陶山(すえやま)神社に向かった。道の両側には、江戸期~昭和初期の漆喰(しっくい)壁の町家や洋風建築が立ち並び、昔からの活気が感じ取れる。
息を切らして陶山神社への急な階段を上ると、磁器でできた鳥居が立つ。神社の相殿神(あいどのしん)として有田焼の創始者・李参平(りさんぺい)が祀(まつ)られている。狛犬や欄干(らんかん)も磁器製で、さすが磁器の町だ。さらに坂道を上ると、小山の上に李参平の碑があり、窯場や町家といった有田の町を一望できる。

唐草模様の鳥居が迎える陶山神社。桜の見頃は3月下旬〜4月上旬
神社を出て表通りから裏通りへ入ると、有田陶磁美術館がある。1874年築という建物自体が歴史を持つ小さな美術館だ。幕末期から明治時代の陶磁器をメインにコレクションされ、数十点が展示されている。

有田陶磁美術館は1954年に開館。建物は明治時代の石蔵を利用している
ここからトンバイ塀が点在する小径(こみち)が始まる。トンバイとは、登り窯を築く際に使う耐火レンガの廃材のこと。これを赤土で塗り固めたのがトンバイ塀だ。トンバイ塀を見つけては写真に収め、また見つけては通り過ぎる。童心に返ったようで心が弾む。小川が流れ、木々が頭上を覆う静かな小径は清々(すがすが)しい。この裏通りにも有田焼を並べた店が数軒あり、日用の焼き物を買うのにいい。
昼食は裏通りから表通りに出て、「アリタポーセリンラボ カフェ」でごどうふ定食を味わった。
アリタポーセリンラボから、緩やかな坂道を上り、泉山磁石場へ。17世紀の初めに李参平らが磁器の原料である陶石を発見し、日本の磁器産業がここから始まった。約400年にわたり良質な陶石を産出した磁石場では、今はもうほとんど採掘されていない。むき出しになった山肌が往時を彷彿(ほうふつ)とさせるが、採掘場は静かに眠っていた。

採掘跡の洞窟や削り取られた崖が独特の迫力を見せる泉山磁石場
来訪の記念に体験工房・ろくろ座に立ち寄り、絵付け体験をするのも一案。有田町内各所では2026年は3月8日まで「有田雛(ひいな)のやきものまつり」を開催し、各窯元や商店が華やかに磁器製などの雛人形を飾り、かわいらしさを競っていた。

洋館があり、和漆喰の壁があり、変化に富んだ有田内山地区の町並み
アリタポーセリンラボ カフェ
創業200年以上、モダンな有田焼を生み出す「アリタポーセリンラボ」が運営するカフェ。ランチの人気はごどうふ定食1320円。ごどうふは、にがりの代わりにデンプン粉を使用することで、ご飯のおかずにも甘味にもなる有田の郷土食だ。
■11時~17時(ランチは~14時)/火曜休/佐世保線上有田駅から徒歩10分/有田町上幸平1-11-3/TEL:0955-29-8079


有田内山地区
17世紀初頭、日本で初めて磁器生産に成功した有田は、1828年の大火によってそのほとんどを焼失。その後復興した町並みは歴史的な価値を認められ、1991年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。
文/太田正行
◉モデルコース
[ 徒歩距離◎3.8キロ ]
[ 徒歩時間◎1時間 ]
佐世保線上有田駅 START
⬇ 1キロ(15分)
🌸陶山神社
⬇ 240メートル(3分)
有田陶磁美術館
⬇ 210メートル(3分)
アリタポーセリンラボ カフェ
⬇ 100メートル(1分)
トンバイ塀のある裏通り
⬇ 1.1キロ(15分)
泉山磁石場
⬇ 1.1キロ(15分)
上有田駅 GOAL
※🌸は桜を楽しむスポット
■問い合わせ/TEL:0955-43-2121(有田観光協会)
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
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(出典:「旅行読売」2026年4月号)
(Web掲載:2026年4月17日)


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