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【クラフト蒸留所を巡る旅】三郎丸蒸留所

場所
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> 砺波市
【クラフト蒸留所を巡る旅】三郎丸蒸留所

鋳物製のポットスチル「ZEMON」。日本と英国で特許を取得

スモーキーな香りにこだわり、世界初の鋳物製蒸留器も開発

富山県西部、散居村(さんきょそん ※1)の田園風景が広がる砺波(となみ)市は、庄川(しょうがわ)水系の豊かな水に恵まれた地。江戸末期の1862年創業の若鶴酒造は、1952年からウイスキーを製造してきた。代表取締役社長CEOの稲垣貴彦さんが蒸留所の大規模改修を行い、2017年、三郎丸蒸留所として新たなスタートを切った。

三郎丸蒸留所のウイスキーの特徴は、スモーキーさにある。ヘビリーピーテッドと呼ばれる、フェノール値45〜80ppm(※2)のスコットランド産ピート(泥炭)を燃やして乾燥させた麦芽を使い、力強く複雑な香りと深い味わいを生み出す。

蒸留所見学は予約制で、ガイドとともに回る。見学コースはガラスなどで仕切られておらず、音や香りをダイレクトに感じられる。麦芽が糖化する時のやや甘い香ばしさ、発酵する麦汁がぶくぶくと泡立つ様子、発酵用の木桶(きおけ)から立ち上る乳酸菌の甘酸っぱい香りなど、五感で楽しめる。

※1 砺波平野独特の集落形態。「カイニョ」と呼ばれる屋敷林を周りに巡らせた農家が水田の中に点在する風景が広がる ※2 フェノール値の指標で、parts per million(パーツ・パー・ミリオン)の略。ウイスキーに含まれるピート由来のスモーキー成分の濃度を示す。値が高いほどスモーキーになる

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蒸留所の外観。ショップが入る若鶴大正蔵などとともに、国の登録有形文化財に登録されている

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貯蔵樽が並ぶ樽通路。富山県産のミズナラを使った樽も開発

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稲垣貴彦さん

ポットスチル(蒸留器)の「ZEMON(ゼモン)」は、銅器作りの伝統を誇る隣の高岡市にある老子(おいご)製作所と共同開発した。世界初、画期的な鋳物(いもの)製のポットスチルだ。従来のものより厚みがあり、長期間使えるという。熱効率もよく、二酸化炭素の排出量を抑えられる。銅錫(すず)合金製なのでウイスキーの味にまろやかさが出るそうだ。

3種のウイスキーを試飲させてもらった。ピートの種類によって、スモーキーさに微妙な違いがあったり、力強い味の奥に甘みが隠れていたり。香りや味の違いが少しでも感じられると楽しく、ウイスキーのことをもっと知りたくなった。

「3年は熟成させるので、どんなウイスキーになるのか予測が難しい中で仕込みます」と、稲垣さんはウイスキー造りの難しさを語る。その中に、きっとたくさんの面白さもある奥深い世界なのだろう。

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専門の職人による貯蔵樽の再生事業にも取り組んでいる

三郎丸蒸留所は2026年2月、世界的権威のあるコンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード2026」において、スコットランドを除くビジター体験施設の全世界部門で、最優秀賞に輝いた。樽から直接ウイスキーをくむハンドフィル体験ができる見学も開始し、今後も進化が楽しみな蒸留所だ。

春になると周辺の田に水が入り、散居村の景色はより美しさを増す。近隣では、今年で75回目を迎えるとなみチューリップフェアも開かれる。

6.レストラン内観.jpg
かまど炊きのごはんが人気のレストランを併設

5.ランチ_(炭火焼ローストビーフ重).jpg
「とやま和牛〈酒粕育ち〉炭火焼ローストビーフ重」(2500円~)

7.三種の試飲.jpg
樽から注いだウイスキーを試飲

この逸品 シングルモルト三郎丸Ⅶ THE CHARIOT

スコットランド北部ハイランドのスーパーヘビリーピーテッド麦芽を仕込んだ。フェノール値80ppmは蒸留所史上最高。厚みのあるピートスモークが際立ち、力強くもまろやかな口当たり。1万9800円。数量限定、在庫がなくなり次第販売終了。

9.この逸品.JPG

見学ツアー
10時50分~、13時20分~(所要1時間)/水曜休/5000円(ハンドフィル体験付きは3万円)/城端線油田駅からすぐ/砺波市三郎丸208/問い合わせ、予約は公式サイトで👉こちら

👟立ち寄りスポット

チューリップ四季彩館

チューリップは富山県の県花であり、砺波市はチューリップの球根の生産量が日本一。施設では一年を通じてチューリップを咲かせており、季節の花々とともに観賞できる。4月22日~5月5日に施設を含む周辺一帯で「2026となみチューリップフェア」が開催される。
■9時~17時30分/不定休/310円(企画展、特別展、となみチューリップフェア期間中は異なる)/城端線砺波駅から徒歩15分/砺波市中村100-1/TEL:0763-33-7716

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300品種350万本のチューリップが咲き誇る「となみチューリップフェア」

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チューリップ四季彩館の展示風景

文/出口由紀 写真/宮川 透


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年5月号)
(Web掲載:2026年4月6日

◎全国のクラフト蒸留所を訪れ、御朱印帳のように「印」を集める「Japanese Whisky Passport(ジャパニーズ・ウイスキー・パスポート)銅印帳」は👉こちらから


Writer

出口由紀 さん

美味しいものには目がないライター。その土地の空気の中で味わう新鮮な特産品や郷土料理は、旅ならではの醍醐味だと思っている。最近感動したのは、生でかじった北海道の白いトウモロコシと夏の日本海の岩ガキ。土地それぞれの言葉を聞くのも好きで、一期一会の出会いと会話を楽しみながら旅をする。

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