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【クラフト蒸留所を巡る旅】岡山蒸溜所

場所
> 岡山市
【クラフト蒸留所を巡る旅】岡山蒸溜所

岡山蒸溜所と酒工房 独歩館。蒸留所は1967年に岡山県玉野市から現在地へ移転。地下100メートルからくみ上げる旭川の伏流水が酒造りを支える

地ビールを蒸留した蔵がウイスキーにたどり着くまで

1915年から日本酒、焼酎、ビールなどを造り続けてきた岡山市の宮下酒造。近くを流れる清流・旭川の伏流水を仕込み水に、新しい酒に次々挑み、発酵や蒸留の知恵を重ね、技術を生かしてきた。

山陽線西川原(にしがわら)・就実(しゅうじつ)駅から歩いて3分。住宅街を抜けると、蒸留所とレストランとショップを備える「酒工房 独歩館」が現れる。ガラス張りの向こうにポットスチルが見え、蒸留の工程を見学できるという期待が膨らむ。

岡山蒸溜所を語る上で欠かせないのが、地ビールからビア・スピリッツへと続く開発の流れだ。95年、酒税法改正を機に中国地方では初の地ビールを発売。さらなる可能性を求めて2007年に焼酎造りの技術を応用し、ビールを蒸留して樫樽で熟成させたビア・スピリッツを生み出した。まろやかな甘みの奥に、麦の膨らみとホップの刺激があった。

技術を融合すればさらに新しい酒が生まれる。同年、アメリカでの出会いが決定打となる。ビールフェスティバルを視察した当時の社長、宮下附一竜(ぶいちろう)さんは、ブルワリーの隣にあったウイスキー蒸留器(ポットスチル)を目にした。「蒸留器があればウイスキーが造れる」。その気付きが次の一手を引き寄せた。「当時から挑戦しようという姿勢がありました。ビア・スピリッツで手応えをつかんでいたこともあり、ウイスキー造りに踏み出せたのだと思います」と営業部長の林克彦さんは振り返る。

2.岡山蒸溜所.jpg
ポットスチルで一度に仕込む量は約1600リットル。蒸留を経て約100リットルの原酒を取り出し、加水したうえで樽に詰めて熟成させる

11年にはウイスキー製造免許を取得。岡山県産の二条大麦と旭川の伏流水を原料に、低温・長期発酵には日本酒の技術を応用した。初めは焼酎用のステンレス製蒸留器を使い、15年にドイツ製ポットスチルを導入した。発酵させた麦汁を蒸留したウイスキーの原酒「ニューポット」は穀物を思わせる甘い香りが特徴で、昨年は国際的な品評会で部門最高賞を獲得した。

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麦芽は岡山県産と欧州の燻製(くんせい)麦芽をブレンド

3種の樽で熟成させ、混ぜ合わせた「シングルモルト岡山トリプルカスク」も高評価を受けている。形にならなかった試みもある。それでも手を止めずに重ねてきた時間と技術が今の「一杯」を支えている。

3.蒸留所内.jpg
銅には雑味のもとを取り除く働きがあり、澄んだ味わいに仕上がると言う

工場見学ではウイスキー、ビール、日本酒の製造工程や樽貯蔵庫までを順を追って巡ることができる。長い試行錯誤の結晶として生み出された酒だと思うと、その余韻まで味わい深い。蔵を訪ねてこそ出合える味と言えそうだ。

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ポットスチルを見ながら食事ができるレストラン「酒星之耀(しゅせいのかがやき)」

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レストランで味わえる「9つの旬彩プレートランチ」2530円。酒粕や酒麹を使用した料理も

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酒工房 独歩館内のショップ「酒之泉」。全体の約4割が新商品となるよう開発を進めており、何度訪れても新しい発見がある。パクチー、白桃、ブドウなどをブレンドしたクラフトジンもおすすめ

この逸品 シングルモルト岡山トリプルカスク

モルト原酒をブランデー樽、シェリー樽、ミズナラ樽で3年以上熟成し、混合。樽ごとに異なる色や香りが育まれ、その個性を重ねた奥行きのある味わいが魅力だ。「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2022」で金賞に輝いた。700ミリリットル1万9800円。

8.この逸品岡山04.jpg

見学ツアー
10時45分~、14時~/水曜(祝日の場合は翌日)休/無料(試飲可能のプレミアム酒蔵見学は14時~、ウイスキーコース2200円)/山陽線西川原・就実駅から徒歩3分/岡山市中区西川原184/TEL:086-272-5594

👟立ち寄りスポット

岡山後楽園

岡山藩主・池田綱政の命で造られた、江戸時代を代表する回遊式庭園。芝生や池、築山、茶室が配され、全長約640メートルの曲水(きょくすい)が景観を引き立てる。4月中旬からはツツジやボタン、5月はシャクヤクやサツキなどが園内を彩る。隣接する岡山城へは、「月見橋」を渡って徒歩でアクセスできる。
■7時30分~17時45分(10月1日~3月19日は8時~16時45分)/無休/500円/山陽新幹線岡山駅からバス約10分、後楽園前下車すぐ/岡山市北区後楽園1-5/TEL:086-272-1148

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4月下旬~5月上旬は夜間特別開園「春の幻想庭園」を開催予定(写真/岡山後楽園)

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4月から5月にかけてはツツジが見頃を迎える(写真/岡山後楽園)

文/前岡侑希


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年5月号)
(Web掲載:2026年4月8日

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Writer

前岡侑希 さん

1984年、広島市生まれ。タウン情報誌副編集長やサンフレッチェ広島の販促ディレクターを経て独立。自動車メーカー労組の取材で全国出張があり、温泉ソムリエのカメラマンと名湯を巡るうちに温泉の虜に。日本酒、一人列車旅にもドはまり中。何よりも愛しているのは猫。国立大学法学部夜間に通う大学生でもある。

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