【温泉は人生の句読点だ!】あなたのサードプレイス湯宿を!内原鉱泉 湯泉荘<茨城>
これが湯泉荘名物の龍紋石風呂。鉱泉とこの龍紋石効果があいまって、体の芯までジワジワ温まるんだなぁ

プロフィール
岩本薫(いわもとかおる)
1963年東京生まれ。温泉研究家、作家、エッセイスト。温泉研究家といってもひなびた温泉にしか興味がない偏愛志向。主な著書に『もう、ひなびた温泉しか愛せない』『つげ義春が夢見た、ひなびた温泉の甘美な世界』『ヘンな名湯』『もっとヘンな名湯』(以上、みらいパブリッシング)『ひなびた温泉パラダイス』(山と溪谷社)等。メディアにも多数出演。ひなびた温泉マニアのグループ「ひなびた温泉研究所」のショチョーでもある。
気が向いたときにヒョイっと泊まりに...
サードプレイス。今や懐かしいかもしれないこの言葉。覚えてますか? スターバックスコーヒーが日本でもブレイクしたころに、スタバのコンセプトとして、第3の場所を意味するこのサードプレイスをアピールして、トレンドになっていましたよねぇ? 第1の場所が自宅。第2の場所が職場。そしてスタバをあなたの第3の場所としてくつろいでください、みたいな感じで。
でもね、今のスタバって、はたしてサードプレイスなんすかね? 店舗によっては、ファストフードと変わらん客席の密集度。そーいう店舗が今、うじゃうじゃあるけど、それってどーなの?って。
ま、でも、今回はそーいうことじゃないんですよ。ワタクシはですねぇ、ここでひとつ、ありそうでなかった〝サードプレイス湯宿〞なるものをご提案したいんです。
つまり、第3の場所としての湯宿。
旅行で泊まりにいくっていうノリではなく、もっと気軽に、まるで近くのコンビニにでも行くように……。いや、それはさすがにちょっと言い過ぎかな。まぁ、フツーは旅館イコール旅行って感じだけど、旅行だなんてふうに気張らず、気が向いたときにヒョイっと泊まりにいける湯宿を見つけておくんです。
具体的な方法としてはまずGoogleマップなんかで、自宅から大体半径50〜100キロ以内ぐらいのエリアで「温泉」か「鉱泉」で検索してみる。そーすると、けっこういろいろと出てくるわけですよ。へー、こんなところにも湯宿があったんだって感じにね。で近いところからどんな宿なのかを見ていく(この作業がかなり楽しい!)。
で、気になる湯宿が見つかったら、さっそくヒョイっと泊まりにいってみて、1泊2日を過ごしてみる。ここ、ポイントなんだけど、〝旅行〞じゃないので観光する必要もない。ただ、ダラダラと湯宿で湯三昧(ゆざんまい)しながら、日常をちょっとだけ離れた時間を過ごす。ホント、ただただ、それだけでいいのである。
ヒョイっと泊まってココロをリセット
そんなわけでワタクシが見つけたサードプレイス湯宿は、茨城県水戸市にある内原鉱泉(うちはらこうせん)「湯泉荘(ゆせんそう)」。Googleマップでここを見つけたときは、実にコーフンしましたねぇ。水戸市とはいっても、水戸駅周辺のにぎやかなエリアではない。のどかな田園地帯に、ぽつんと佇(たたず)む一軒宿。昭和初期に建てられた木造2階建ての旅館がノスタルジックなオーラを放っている。広い庭には、池や小さな神社なんかもある。わーお!気軽にヒョイっと行けるところにこんな湯宿があったんだなぁ、と。
これはもー行くっきゃない。さっそく予約して、当日、スーパーカブにまたがってGo!

昔ながらの木造の日本旅館。敷居が高そう?いえいえアットホームな宿なんです
事前にネットでアレコレ見ていたので、実際到着して、あの風格がありながらもひなびた感じの木造の建物が、目の前にあることに感動せずにはいられなかった。
案内された部屋は2階で、窓からは庭が見渡せる。1階の浴室にも近く、いうことなし。さぁ〜て、我がサードプレイス湯宿を心ゆくまで楽しもう。
まずは風呂だ。といってもここは湧き水の沸かし湯なんだけど、これが〝ただもの〞ではない(※)。しかもここは「龍紋石風呂」といって、超音波で体をじんわり温める効果が期待できる龍紋石を浴槽に使用した風呂らしい。どれどれと期待しながら湯につかってみると、ちょっと熱めのクセのない湯で、なるほど、ジワジワと体が温まっていく。いいじゃん、いいじゃん、長湯できるぬる湯も好きだけど、体の芯まで温まる、こーいう熱い湯も好きなんだなぁ。うんうん、さすが、我がサードプレイス湯宿!
湯から上がってもなかなか汗がひかない。そんなほてった体に冷たいビールを投入!庭が眺められる窓際のテーブルでほろ酔いのまま文庫本を読む。
しばらくすると、宿のお兄さんが晩メシを部屋に運んでくれた。リーズナブルなプランにしたので家庭料理っぽい献立で、これがうまかった(そーいえば、看板に割烹<かっぽう>旅館って書いてあったなぁ。納得!)。で、なんていうか、こういう家庭料理っぽいほうがサードプレイスらしい。
※内原鉱泉は江戸期から湯治の湯として親しまれてきた歴史があるが、現代の温泉法に基づく公式な成分分析依頼をしていないため公的には「湧き水」扱いとなる。でもねぇ、法律ができるはるか前から人々を癒やしてきた評判の湯なのだからダテじゃない。それってやっぱ鉱泉でしょってワタクシは言いたいなぁ。

この家庭料理っぽい食事がおいしかった。こういうのがいいです、こういうのが
かくしてワタクシは我がサードプレイス湯宿にて、風呂、ほろ酔い読書、晩メシ、風呂、ビールを地酒に変えて本格飲み読書、酔っ払ってきたんで読書をやめて、どっぷり深酒、就寝、寝起きの朝風呂、チェックアウト……と過ごし、ふたたびスーパーカブにまたがって自宅へと帰っていったのであります。
家でもない、職場でもない、そして騒がしいカフェでもない。湯気の向こうに、自分だけの「もうひとつの居場所」をキープしておくということ。ココロがクタクタになったら、あの場所でリセットすればいい。そう思えるだけで、明日からの日常がちょっとだけイージーモードになりますよ。あなたもぜひ、サードプレイス湯宿を見つけてください。
文・写真/岩本 薫
♨今月のひなびた温泉
内原鉱泉 湯泉荘 (茨城)
◎料金:1泊2食8900円〜、日帰り入浴可(11時〜最終受付20時30分/無休/平日700円、土・日曜、祝日800円)
◎泉質:不明
◎アクセス:常磐線内原駅から徒歩13分/常磐道水戸ICから6キロ
◎住所:茨城県水戸市三湯町1105
◎TEL:029-259-2020
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2026年8月号)
(Web掲載:2026年8月14日)


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