はじめてのバルト三国「ひみつのラトビア④」 -郊外の楽しみ・スィグルダ&リーガトネ ピルツで生まれ変わる-
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ウェルネスリゾート「ズィエドレヤス」。広大な敷地にサウナと宿泊施設が点在する(写真/ズィエドレヤス)
2025年12月、ヨーロッパ北東部・バルト三国の中央に位置するラトビアを旅しました。東北6県とほぼ同じ大きさ、約6.5万平方キロの国土の約半分が森林で、ダウガワ川をはじめとする豊かな河川と、大小さまざまな湖が点在する自然あふれる国です。中世の歴史薫る街並みや、豊かな山海の幸を使ったガストロノミー、伝統の入浴法・ピルツ(サウナ)など、ラトビアにはまだまだ知られていない魅力がいっぱい。「知れば、きっと行きたくなる」そんなラトビアの〝ひみつ″をシリーズでお届けします。4回目は首都・リーガ郊外のスィグルダというまちで出会ったピルツ(サウナ)と、その近郊のまち・リーガトネのおすすめスポットをご紹介します。
日本のサウナとは別物だった
リーガから東へ、車で小一時間ほど。ラトビアを構成する四つの州の一つ、ヴィゼメ州のスィグルダは豊かな自然と美しい景観、そして高低差のある地形から“ヴィゼメのスイス”とも称される。ラトビア最古・最大の国立公園、ガウヤ川国立公園の中心地でもあるこのスィグルダで、ラトビア伝統の入浴法「ピルツ」を体験できると聞き、ウェルネスリゾート「ズィエドレヤス(Ziedlejas)」を訪ねた。

国立公園内にある広大な敷地には、ガラス張りの小さな小屋「グラスルーム」が点在。サウナに入った後、体を休めるための宿泊施設だ
ラトビア語でピルツとはサウナのこと。ラトビア人にとってのピルツは、体を清め、温めるだけのものではなく、精神のバランスを整えるものとして長く親しまれてきた。かつてはピルツで出産も行われたという、ある種神聖な場所でもあった。現在では週末になると、家族や友人とピルツで集まり、体と心を癒やすのだという。

「スモークピルツ」は薪を燃し、室内を燻(いぶ)して温めるラトビアの伝統的なサウナ。森の中にひっそりたたずむ

「ガラスピルツ」は大きなガラス窓のある建物で、開放的な雰囲気の中、サウナを楽しめる。温まったら目の前にある池にダイブ!

ウールピルツ内部。壁や天井はウールでびっしり覆われている
ウールピルツを体験
小川が流れ、畑が広がり、昔話に出てくる小さな村のような雰囲気のズィエドレヤスには、「スモークピルツ」、「ガラスピルツ」、「ウールピルツ」の3種のサウナ棟がある。私たちのグループ(女性5人)は「ウールピルツ」を体験することになった。実はサウナ(というか水風呂)が苦手な私。入り口近くにある水風呂を横目に恐る恐るガラスの扉を開けると、サウナの壁面は天井までふかふかの羊毛が詰め込まれている。「え?!苦しくない」。内部は日本の乾式サウナのような息苦しさはなく、60度くらいでしっとり潤っている感じだ。女性のサウナマスターが2人、笑顔で迎えてくれた。「日本のサウナとは全然違う。これなら大丈夫かも」とホッと胸をなでおろした。

サウナマスターがウィスクでパサパサとやさしく全身を刺激する(写真/ズィエドレヤス)

ウィスクも手作り。ウィスクとは白樺やオークなどの小枝を集めたサウナ道具

フカフカの泡で背中や腕、足の先までマッサージしてくれる(写真/ズィエドレヤス)
素っ裸になって木のベッドに寝転ぶ。薪(まき)で温められた空気に、じんわり体が温められていく。時折、サウナマスターがウィスクでパサパサと肌を刺激したり、大きな扇子のようなもので温風を送ってくる。ウィスクだろうか。良い香りがして、このまま寝てしまいそうな心地良さだ。ピルツの中では一人ずつ、たっぷりの泡やハチミツを使ったトリートメントもしてくれる。横になりながら順番を待つ。先にしてもらっている人を薄目でチラ見。気持ちよさそう!と待ち遠しくてたまらない。

「温まったらいつでもピルツから出ていい」と言われる緩さもまた心地良い。ひんやりとした空気の中、フルーツやパン、ドリンクを飲んで休憩、またピルツに入るを繰り返す
ピルツの癒やしパワーを実感
いよいよ私の番! 泡に包まれてもう夢心地。体はもちろん、心もほぐれていくというのはこんな感覚なのだろう。まさに「無」になった感覚。体が十分に温まったところで起こされ、私のもっとも苦手な水風呂へ、サウナマスターに手を引かれながら向かう。足先を入れた瞬間、「やっぱりダメだ!」と思ったが、サウナマスターは解放してくれない。「ヒッヒッフー」と呼吸の仕方を教えてくれる。そのタイミングに合わせてヒーヒー言いながら沈んでいくと、いつの間にか肩までつかっていた。「すごい。できた!」。
子どものように喜ぶ私を次に案内してくれたのがハンモック。毛布にぐるぐる巻きになってハンモックに揺られる。周りには誰もいない。見えるのは森と空だけ。気持ちがスーッと落ち着いていくのと同時に、毛布にくるまれた体がポカポカしてくる。まさに体の芯まで温まっているのだなと、ピルツの底力に感激した。気が付いたら4時間も経っていた。

ウールピルツに備え付けの水風呂(写真/ズィエドレヤス)
ピルツの威力をさらに思い知ったのは帰国後だ。いつも海外旅行から帰るとぐったりと疲れが出てしまうことが多かったが、ラトビアから帰国後は時差ぼけもなく、逆にパワーがみなぎってくる感じだった。きっとピルツで身も心もほぐれたおかげだと思っている。ラトビアは「元気になって帰国できる国」なんだと心底実感したのだった。
ウールピルツ 4人 540ユーロ(1人から可。人数により値段が異なる)。
ズィエドレヤスのホームページは👉こちら
近郊の立ち寄りスポット
ソ連の秘密の地下壕・バンカー
◎リーガトゥネ
スィグルダから東へ16キロほどのまち・リーガトネで、ぜひ訪ねたいのがバンカーだ。東西冷戦時代に造られたソ連の政治エリートのための地下核シェルターで、地下9メートルに2000平方メートルもの空間が広がる。核戦争が起こった場合、約250人が3か月暮らせるよう整備されていた。1991年のソ連からの独立後も破壊されることなく、ガイド付きで見学できるようになっている。

クレムリンへの直通連絡が可能な機器が並ぶ通信室
ガイドのオスカーさんは、ソ連の政治エリートになりきって、まるでソ連時代にタイムスリップしたかのような臨場感たっぷりの解説を繰り広げる。こういった施設を残し、皮肉たっぷりのユーモアを交えたガイドを提供するところに、ラトビア人の懐の深さを感じた。

ラトビア全図が掲げられた作戦室

空調は潜水艦と同じ仕組みを採用

指令室。極秘情報だった地図は印刷せず手書きだった

食堂には「パンを大切に。それは1000人もの人々による労働のたまものだ!」というスローガンが掲げられている
ガイドツアー1人15ユーロ。バンカーのホームページは👉こちら
パワール・マーヤ
◎リーガトネ
2023年にミシュランガイドが上陸し、年々その評価が高まっているラトビアのガストロノミー。バンカーから車で10分ほどのレストラン「パワール・マーヤ(Pavāru māja)」は、ミシュランの「グリーンスター」を獲得している人気店。グリーンスターとは、持続可能な食文化に積極的に取り組むレストランを評価するもので、ラトビアではここ1軒のみ。パワール・マーヤでは料理に使う食材はできる限り地元産にこだわり、ハチミツやワイン、お茶、ジュースまで自家製。生ごみを堆肥にして自家菜園に活用、食べ残しは家畜に与えるという徹底ぶりだ。

1901年築の産院をリノベーションした建物

店内はスタイリッシュな雰囲気

ランチコースの一例。左からアミューズ(大根とグミ科の果実・シーバックソーンのジュレ、鹿肉タルタルのタルトレット)、パイクパーチ(スズキに似た魚)とかぼちゃのソース、まるで鳥の巣!のような「血のソーセージのクロケット」にはゴボウそっくりの野菜・ブラックサルシファイのチップスを添えて、「野生鹿のチョップ プラムのピュレと黒ラッパ茸」、ドングリと菊芋のデザート
どれも見たことのない独創性あふれる料理で、素材が持つ力はもちろん、その組み合わせの妙味から、ひと口、ひと口が感動の連続だった。滋味あふれる「大地の恵みそのもの」というイメージが、その見た目と味わいからひしひしと伝わってきた
ランチコース【アミューズ2種、前菜2種、パン、揚げ物、メイン、デザート】は49.99ユーロ
パワール・マーヤのホームページは👉こちら
<旅のインフォメーション>
交通/成田からLOTポーランド航空で約14時間40分のポーランド・ワルシャワショパン空港で乗り換え、約1時間25分でリーガ。
時差/日本より7時間遅れ
ビザ/観光目的の場合、90日以内の滞在であればビザは不要。ただし、ラトビア出国時にパスポートの残存有効期限が3か月以上必要
通貨/ユーロ(€) 1ユーロ=184円(2026年7月31日現在)
気候/リーガの年間平均気温は夏季約23度(7月)、冬季約0度(1月)
保険/滞在期間中の治療費用を補償する海外旅行保険加入が義務付けられている。
東京(成田・羽田)からリーガまでの航空券&ホテルはこちらからご予約いただけます。
文・写真/中 文子
協力/ラトビア政府観光局👉公式サイトはこちら
LOTポーランド航空👉公式サイトはこちら
(Web掲載:2026年7月31日)


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