【極上の民宿】コラム 極上の湯と食を求めてたどり着いた温泉民宿3軒(月山もも)
湯野上(ゆのかみ)温泉の「民宿いなりや」で露天風呂付きの浴室を貸し切り利用する
“ひとり温泉旅”をブログにつづっている月山ももさんに、リピートしたいお気に入りの温泉民宿3軒を教えてもらいました。

つきやま・もも
山と温泉を愛する文筆家。「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ブログやnote「旅と日常」に、温泉宿への宿泊記、旅の食事や登山の記録をつづっている。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。
温泉宿に1人で泊まるのが好きだ
温泉宿に1人で泊まるのが好きだ。
ひとり旅のいいところは、誰にも気を使わず自分のペースで過ごせるところだと思っている。だから実を言うと、宿を選ぶ際は「アットホームな宿」という言葉には少し身構えてしまうのだ。宿の方や他の宿泊客との交流を楽しみにしている人も多いだろうけど、私はどちらかと言えば、温泉につかっておいしい食事をいただき、部屋で1人本を読んだりして過ごしたいのである。
だから「民宿に泊まりたい」と思って宿を探したことは実はないのだ。だけど「いい温泉に入れる」、そして「食事がおいしい」宿に、なるべくお安く泊まりたい。そう思いつつ全国の温泉宿を1人で巡るうちに、3軒のすばらしい温泉民宿に巡り会った。
福島県・湯野上温泉の「民宿いなりや」では、食事のボリュームと質の高さにまず、驚かされた。1個で3個ぶんありそうないなりずし、宿の名物である山盛りの天ぷら、手打ちそばなどいずれもボリュームたっぷりだが、すべてがおいしいのである。特に天ぷらは旬の地物野菜がからりと揚がっていて、「こんなに食べられない!」と思っていたのに、けっこうな量を平らげてしまった。
そして温泉もまたすばらしい。露天風呂付きの浴室が二つあり、空いているときに貸し切りで利用する方式なのでかけ流しの湯を1人のんびりと満喫できる。部屋はコンパクトながら必要な設備はしっかりと整っているし、共同のトイレや洗面所は新しくきれいだった。
湯野上温泉 民宿いなりや(福島)
■福島県下郷町湯野上沼袋乙853/TEL:0241-68-2328

名物の山盛りの天ぷら

いなり寿司もかなりの大きさ
長野県・上諏訪(かみすわ)温泉の「民宿すわ湖」は何度も泊まっているお気に入りの温泉民宿だ。「特急あずさ」が停まる上諏訪駅から徒歩5分という便の良さもあって、空室を見つけるとつい予約してしまう。
温泉は男女別の内湯に加え、空いているときには貸し切りで利用できる露天風呂があり、上諏訪温泉のきりっと熱い湯をかけ流しで楽しめる。
夕食のメインはたっぷりのすき焼きだ。旅館では1人用の小鍋を固形燃料で温めることが多いが、この宿ではガスコンロと鍋ですき焼きを楽しめるのもいい。
宿の方は必要以上に話しかけたり世話を焼いたりすることはないが、客室は清潔に整えられ、延長コードが用意されているなど細かな配慮も行き届いている。食事処では自分で豆を挽(ひ)いてコーヒーをドリップできるサービスもある。いい温泉につかった後に地酒かビールを飲みつつおいしい食事をいただいて、最後に1人静かにコーヒーを淹(い)れて飲む。至福の時間である。
上諏訪温泉 民宿すわ湖(長野)
■長野県諏訪市湖岸通り5-13-21/TEL:0266-58-4821

かけ流しの露天風呂は空いているときに貸し切り利用

1人でも大きな鍋でたっぷりのすき焼き

清潔に整えられた客室
鹿児島県・指宿(いぶすき)温泉の「民宿たかよし」も、忘れがたい温泉民宿だ。
浴室は二つあり、空いているときに貸し切りで利用。指宿温泉の濃厚な源泉を1人、心ゆくまで楽しんだ。
食事もまたすばらしい。黒豚の鍋、とんこつ(豚肉のみそ煮込み)、さつま揚げ、キビナゴなど、鹿児島県産食材を使用した郷土料理が次々と並ぶ。連泊すると食事の内容もがらりと変わるようで「いつか連泊して楽しみたい」と思っている宿である。
指宿温泉 民宿たかよし(鹿児島)
■鹿児島県指宿市湯の浜5-1-1/TEL:0993-22-5982

指宿温泉の濃厚な源泉を貸し切り利用できる

キビナゴやさつま揚げなど鹿児島の名物が並ぶ
今回紹介した3軒はいずれも2食付き1万円以下で1人で宿泊できる。温泉旅館に食事付きのプランで1人で泊まるとたいてい割高になってしまうものだが、かけ流しの温泉とたっぷりのおいしい食事まで楽しんで1万円以下とは、ありがたいことである。
いわゆる民宿には、客室にカギが付いていなかったり、浴衣(ゆかた)やバスタオルが用意されていなかったり、別料金だったりする宿も少なくない。だからいつも宿泊前には、カギの有無を確認し、念のため寝間着やタオルなど必要なものを持参している。
しかし今回紹介した3軒は、民宿でありながら旅館と変わらない快適さを備えており、それでいて宿泊料金は驚くほど良心的なのだ。「快適な宿で1人静かに過ごしたいから民宿は得意じゃない」と思っている方にも、ぜひ泊まってみてほしい。温泉も食事もすばらしく、気を使わずに、自分のペースで過ごせる。そんな温泉民宿も探せば見つかるのだ。
文・写真/月山もも
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2026年8月号)
(Web掲載:2026年9月12日)


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