楽し過ぎる「ミステリーツアー」。食事は?買い物は?おみやげは?
東京都内在住の成相雅美・芳子さん夫妻。金婚式の記念に参加した
どこへ行くか当日までわからない、というのも何か楽しげだとは思った。昼食では、食味が評判の○○産コシヒカリだというし、華やかな○○屋敷のひな飾りはどこのことだろう、とワクワクした。しかし今回、ミステリーツアー参加を思い立った最大の理由は「おみやげ」だったかもしれない。
本当に? 日帰りバスツアー「どんっ!いちご4パック一箱付!春待ちホッとミステリー」を知った時、少し信じ難かった。約8000円の参加費で、いちご4パックのみやげが付くというのだ。スーパーマーケットでも、いちご1パックは500円前後だから、みやげだけで2000円になる。残り6000円で、あんこう鍋と牛ステーキの昼食が付くとなればめちゃくちゃ、お得ではないか。
さっそく主催の読売旅行に問い合わせると、もの凄い反響で受け付け終了が続出しているという。幸い「1名ならば」の条件付きで、参加がかなった。
バスツアーでは、参加者を1カ所に集めて出発する場合もあるが、「あなたの街から旅に出る」をキャッチフレーズにする同社では数か所の出発地を設け、参加者をピックアップしていく。この日は東京都足立区の西新井をスタートして、北千住、上野、錦糸町とつないでいった。私は北千住から乗車したのだが、バスを待つ間に中高年の女性グループから「行き先は茨城でしょ」「いや栃木じゃないの」と目的地を予想する楽しげな声が聞こえてきた。
目的地を当てる“謎解き”も魅力
いちごのみやげに加えて、目的地を当てる“謎解き”の面白さもミステリーツアーの魅力なのだ。行程表には13項目の「いい旅ポイント」が書かれ、謎解きのヒントになる。昼食のあんこう鍋と牛ステーキ、温泉の足湯、絶景スポットから、私も茨城と予想していた。乗車後、添乗員の中村雅世さんに小声で行く先を聞くと「ミステリーツアーなので内緒です」と笑顔で返されてしまった。
錦糸町で全参加者45名が乗車。一路、バスは北東へ向かうと思いきや、首都高速を西へと走り中央道へ。気づくと車窓には雪化粧した富士山が……。中央道勝沼ICを降りたところで目的地は判明した。どうやら正解は山梨県のようだ。ここまで予想が外れると、むしろ気持ちいい。
この先は立ち寄りスポットを次々に巡る。まずは漬匠(つけしょう)昇谷を訪ね、国産野菜を8種類の山野草で作った秘伝ダレに漬ける甲州薬膳キムチ作りを見学。白菜、長芋、チャンジャなどのキムチを試食した後、オリジナルスパイス作りに挑戦した。一味唐辛子、すりごま、にんにく(粉末)など5種類のスパイスを小さなカップに入れていくのだが、バランスよく入れる人もいれば、唐辛子だけを詰める人もいて、おもしろい。
山梨県が誇る宝石研磨の技術や鉱石の特性を学べるストーンエッグ英雅堂を経て、ハーブ庭園旅日記へ。1万坪の敷地に約200種類のハーブが植栽され、世界の洋ランやシクラメンが咲く温室、温泉の足湯などがある。
足湯に浸かると、予想以上に熱くてびっくり。同じツアー参加者のご婦人が「そこは温泉の注ぎ口だから熱いわよ。こっちおいで」と笑いながら手招きしてくれた。時間が経つごとに参加者同士が打ち解け、会話も弾んでくる。これもバスツアーならではの良さだ。
最後の立ち寄りスポットは、甘草(かんぞう)屋敷。江戸期の名主・高野家の住居跡で、幕命で薬草の甘草を栽培していたことから甘草屋敷と呼ばれた。1720年築の主屋は甲州民家の特徴をよく伝え、正面中央の屋根には二段の突き上げが設けてある。「ひな飾りと桃の花まつり」が開催され、貴重な享保雛や御所人形などを見ることができた。
いよいよ待望の昼食は、武田信玄の菩提寺・恵林寺に隣接する信玄館で。一人前の小鍋で出されたあんこう鍋は、味噌仕立てのスープにあんこうと野菜のうま味が溶け込み、奥深い味がする。目の前で焼く牛ステーキは柔らかく、山梨県産コシヒカリのご飯が進む。
「いい思い出になりました」と笑顔
ツアーの最後に「娘からはどこに行くか分からないツアーは心配だから辞めてとも言われましたが、参加して正解でした」と話してくれたのは、東京都内在住の成相雅美・芳子夫妻。金婚式(結婚50年)の記念に参加されたそうで、「いい思い出になりました」と結んだ。お二人の笑顔が、このバスツアーの良さを物語っていた。
(出典:「旅行読売」2018年5月号)
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