「まったくちがう味わいの映画」(のん)と「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」舞台挨拶
舞台挨拶に立った片渕須直監督(右はし)、岩井七世(右から3人目)、のん(同4人目)、細谷佳正(同5人目)
片渕須直監督のアニメーション映画「この世界の片隅に」に新エピソードを加えた新作「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の公開記念舞台挨拶が12月21日、東京・テアトル新宿で開催された。片渕監督、主人公すずを演じたのんや細谷佳正、岩井七世ら共演者たちが登壇した。
「ずっとずっと応援して」(片渕監督)
2016年11月12日に封切られた前作「この世界の片隅に」について、片渕監督は、1133日ずっと上映を続けることができて、1134日目が昨日」と述べた。1133日間で前作の連続上映は終わり、昨日が新作の封切りだった。片渕監督は、「また1日目から再スタート」だとした上で、「ずっとずっと皆さんの前(のスクリーン)にすずさんが(上映され続けるように)」と観客席に語りかけ、「ずっとずっと応援していただけるとありがたい」と呼びかけた。
主人公すず役を演じたのんは「新しいシーンが付け足され」て、「まったく違う味わいの映画になった」と語った。また「(企画始動から)9年も一つの作品に力を注いで、まっすぐに作っていく」片渕監督の「執念」に敬意を示し、「作品に参加できたのがすごく誇らしくて、一生忘れない」と感慨を込めた。
戦時下に広島から呉の海軍文官・北條周作のもとに嫁入りした主人公・すず。250を超える新場面を追加した今作では、すずと遊郭で働く女性リンとの交流、すずの夫・周作とリンの「秘密」が明らかになる部分の描写が増え、登場人物たちの心の葛藤が浮き彫りになる。
周作役の細谷佳正は、「前作よりも周作さんが男性なんだと意識させられるような内容」だったと述べた。
すずの幼なじみ役の声優からの手紙に「レア」(のん)
また、この日は、すずの幼なじみ・水原哲役の小野大輔から手紙が届き、司会者が読み上げた。手紙には「(新作の)試写会もスケジュールが合わず、一般公開後の劇場に足を運びました。まさにテアトル新宿の客席でした」、「誰の心にも必ず響く作品なのだと実感しました」などの内容が披露されると、のんは「レア」と発言。人気声優の手紙が非常に貴重という趣旨だったが、場内はなごやかな笑いに包まれた。
のんが「細谷さんも(舞台挨拶登場が)かなりレアだと思うのですが」と言うと、細谷は「僕はレアじゃなくなりましたよ。夫婦ですから」と返し、さらに場内に笑いが巻き起こった。
前作「この世界の片隅に」は、2016年11月12日の公開後、SNSや口コミで人気が広がり、累計公開館数400館以上、累計観客動員210万人となった。今作「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は、公開初日の12月20日は42館でスタート、20年1月3日には80館以上に拡大する予定だ。
熱心なファンは「聖地巡礼」も兼ね、遠方の映画館でも鑑賞
前作の熱心なファンの中には、作品の舞台の地である呉、広島に「聖地巡礼」を兼ねて鑑賞に訪れたり、長期間上映を継続した茨城県土浦市の「土浦セントラルシネマズ」で鑑賞したりするケースも多かった。土浦は舞台の地ではないが、長期間上映されたうえに、ファンアートなどの展示がロビーで行われるなどして、ファンのなかには「聖地」とみなす人がいる。
舞台の地の一つ、呉市れんがどおり商店街にある「呉ポポロシアター」には、新作の初日20日から広島県外のファンが鑑賞に訪れていた。
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」
監督・脚本:片渕須直/配給:東京テアトル/原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
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好評発売中の旅行読売臨時増刊「昭和の鉄道旅 復活編」(定価1000円)では、片渕須直監督、「この世界の片隅に」原作者・こうの史代さんが、2019年8月に広島県呉市で行ったトークイベントの模様や、広島、呉での「聖地巡礼」アドバイスなどの特別企画を掲載している。