映画「男はつらいよ」の山田監督、おなじみの出演者たちが語る「柴又」「寅さん」(2)
座談会を終えた右から山田監督、倍賞さん、前田さん、佐藤さん。会場は観衆で埋まっている
特別座談会の司会者が「令和になっても寅次郎(寅さん)が必要なのはなんでだとお感じになりますか」と質問した。
すると、山田監督は、「50年前の日本、この国は、今よりも、日本人は幸せだったと思います。あの頃はもっと未来もあった。若者ももっと元気があった。一生懸命働いてカラーテレビを買いたいとか、車を買いたいとか。寅さんはその時代に生まれ、あの通り自由奔放なことをやってきた。みんなそのメチャクチャなことにみんな迷惑しながらも、彼をひとりの人間として、自分達の仲間として見ていた。今の時代は万事窮屈になっている。自由でノビノビできない」と言う。
そして「今僕たちはほんとうに幸せなのか、ということを、(50作目の)あの映画をみながら感じてほしいと思っています」とも話す。
「(寅さんは)いるんです。彼は死なないんです」(山田監督)
司会者が「90過ぎても、(寅さんは)どっかでフラフラしているんですよね」と問いかけると、山田監督は「(寅さんは)いるんです。彼は死なないんです」と言い切ると、会場から拍手がおきた。
柴又で11月2日から2日間にわたって開かれた「寅さんサミット」は、全国各地のロケ地の自治体関係者らが集まり、それぞれのご当地グルメとともに「寅さん」の世界を堪能できるイベントだ。
会場には、第41作「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」で唯一の海外ロケ地となったオーストリア・ウィーンからも出店があった。
第1作で、寅さんは、渡し舟「矢切の渡し」で柴又に戻ってくる。その渡し舟は千葉県松戸市からやって来る。そんな縁で出店していた「松戸」のブースでは、レモンやキウイの果実酒と並んで、「寅さん」ラベルの焼酎が販売されていた。ブース前には、寅さんそっくりの衣装を着たゆるキャラ「松戸さん」がいた。普段は違う衣装を着ているそうなので、サミットにあわせてコスプレをしていたらしい。
三重県菰野(こもの)町には、第3作「男はつらいよ フーテンの寅」で、寅さんが働いたという設定の「湯の山温泉」がある。町職員らが「寅さん」が「昭和45年に湯の山温泉で働いていたこと知っていますか」と書かれた旗を持ってPRしていた。
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「寅さん」の全国各地の旅の足跡などを追った数々の記事が、好評発売中の旅行読売臨時増刊『昭和の鉄道旅 復活編』(定価1000円)に掲載されている。