【旅する喫茶店】フロインドリーブ(神戸)
礼拝堂だった2階カフェ。ヘラさんご夫婦はここで結婚式を挙げたそう
大震災からよみがえった名店
春風にのってパンの焼ける香りが漂ってきた。三ノ宮駅からビルが林立する路地を歩くと、1924年創業の老舗ベーカリー「フロインドリーブ」がある。初代のドイツ人パン職人、ハインリッヒ・フロインドリーブさんは、NHKの連続テレビ小説「風見鶏」の主人公の結婚相手のモデルとしても知られている。
雰囲気のあるゴシック様式の建物は、1929年竣工の旧神戸ユニオン教会。米国人宣教師で建築家としても名高いW・M・ヴォーリズが設計し、現在は国の登録有形文化財に登録されている。しかし、「一時期は放置され、廃墟と化していたんです」と3代目オーナーのヘラ・フロインドリーブ・上原さんは語る。
1995年の阪神・淡路大震災が転機だった。店舗が被災して移転を余儀なくされ、「主人が家族の反対を押し切って近所のこの古い教会を買い取り、約2年かけて丹念に改装しました」とヘラさん。1階集会室はベーカリー、2階礼拝堂はカフェに生まれ変わり、今では老若男女問わず連日にぎわっている。
カフェのおすすめはサンドウィッチ約12種。レンガ窯で焼かれたパンは、小麦の豊かな滋味を感じられておいしい。名建築と老舗が融合した見事な姿に、震災からよみがえった神戸の誇りを実感しながら駅へ戻った。
文・写真/児島奈美
住所:兵庫県神戸市中央区生田町4-6-15
交通:東海道線三ノ宮駅・山陽新幹線新神戸駅から徒歩10分
TEL:078-231-6051
(出典 「旅行読売」2015年4月号)
(ウェブ掲載 2020年3月6日)