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【旅する喫茶店】喫茶エデン(神戸)

場所
> 神戸市
【旅する喫茶店】喫茶エデン(神戸)

釘を使わずに差し込みで作ったイスやテーブル、木彫りのカーテンレールなど随所に趣向が凝らされている

 

古い特注家具が並ぶ神戸の老舗

神戸駅から西へ徒歩10分、戦前から1960年頃にかけて栄えた新開地(しんかいち)エリアの古い喫茶店に寄った。今も洋食などの名店が点在する一角に「喫茶エデン」はある。戦後すぐの48年創業時のままの店内は、板張りの床に濃い飴色の柱や家具、美しいベルベッド張りのイスを配し、なんともシックな雰囲気。中央に並ぶヤシの木にも目を引かれる。

「先代の父が、船の内装を手がける『神戸船舶装備』に豪華客船をイメージして特注したそうです。父はベストに蝶ネクタイ、ジーンズ姿でお客さまを迎えていました」と2代目店主の堺井太郎さん。店を継いだ後に起きた1995年の阪神・淡路大震災では、店内は足の踏み場もない惨状だったという。「船用の家具や内装は堅牢(けんろう)で、壊れず残りました。家具もそうですが、今では神戸に現存する喫茶店では最も古い店の一つと言われています」

食事
食べ応えのあるハーフミッ クスサンドとホットコーヒー
マッチ
旧約聖書のアダムとイブをイメージした歴代マッチ箱

先代が愛用した抽出器具「アーン」で淹(い)れるコーヒーは、コクがありながらクリアな味わいで、後味も香りもすばらしい。注文ごとにパンを切り、卵焼きを作るサンドイッチは、常連から「太郎さん」と慕われる店主の人柄同様に優しい味がした。

下町の気さくさも心地良く、一人でも気軽に立ち寄れる。港町神戸の歴史を感じる店内で、至福のひと時を過ごした。

文・写真/児島奈美

写真
ハイカラと有名だった初代の堺井林(しげる)さん(右)と当時のホールスタッフ(左)
外観
店の外観。「エデン」の書体やアーチ状の日よけ、ヤシの木などレトロなたたずまい

喫茶エデン

住所:兵庫県神戸市兵庫区湊町4-2-13

交通:阪急・阪神神戸高速線新開地駅から徒歩2分

TEL:078-575-2951

(出典:「旅行読売」2022年5月号)

(WEB掲載:2022年5月12日)


Writer

児島奈美 さん

神戸生まれ。学生時代にバイクで北海道、九州、信州を巡って旅に目覚め、約40か国渡航。1か月のキャンプ旅でも太って帰ってくる食いしん坊で、現在は、旅・グルメ・人物インタビューを中心に、ガイドブックや雑誌、Webなどの制作に携わる。「旅行読売」ではルポがメイン。鉄子や歴女の道も着々と歩む。

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